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決勝レース②



 前を行くスカーレットブルーを追って、岩山地帯に突入するが……これはかなり怖い。本来であれば岩山と岩山の間なんて広いものだが、それは真っ直ぐに飛べる場合ならだ。

 フライングボードはそもそも結構大きい。3人で乗る設計なので必然ではあるが、横幅も広い。そして真っ直ぐに飛ばずに蛇行したり、変な軌道をとる関係上かなり狭く感じる。


「……葵ちゃん、魔力量はどう?」

「本来の予定より消費していますが、元々少し余裕を持って配分を考えてたのでまだ大丈夫です」

「快人先輩は操作、大丈夫ですか?」

「かなり気を遣うというか、思ったより狭く感じる気がする……でも、急変したりしない限りは大丈夫だと思う」


 当初の予定は高度を上げてチェックポイント通過前に下降する予定だったので、速度はそこまで出さないつもりだった。しかし、スカーレットブルーの絶妙のアタックにより速度を上げるしかなくなった。

 岩山地帯は低空を飛ぶと結構入り組んでいる感じで、スカーレットブルーのフライングボードは時々視界の先の方にチラリと見える程度だ。

 だが、まだ致命的に離されているわけでは無い。ギリギリ勝負が決まるのは避けた感じだ。しかし、気は抜けない。

 俺たちと同様に速度を上げて突っ込んだチームのうち2チームほどが、岩山に当たって脱落しているので、同じような失敗をしないように注意しよう。


「本当に幸いなのは、いまのところ割と素直にフライングボードが動いてくれてるってことかな?」

「確かに、フラフラとはしてますけど、急激に変化したりはしてないですね。せめて岩山地帯を抜けるまでは、安定しててほしいです」

「快人先輩! 葵先輩! チェックポイントが見えましたよ!」


 いまは低空を維持しているので高度調整はあまり必要なく、陽菜ちゃんは前方を見るのに集中してもらっていた。

 陽菜ちゃんの言葉通り前方にはチェックポイントが見えてきたが……うわぁ、チェックポイントの左右が岩山になっていて、間を抜ける感じだ。

 つまりほぼチェックポイントを外すイコール衝突みたいな配置である。ここまで以上に集中して左右の動きを調整して、しっかりと潜り抜けた。


「よしっ、なんとか行けた……高度はどうしようか?」

「チェックポイントは通過しましたし、上げた方が安全ですね。陽菜ちゃん……」

「駄目です!」

「「え?」」


 チェックポイントさえ抜けてしまえば、高度を上げて岩山から離れてしまうのが安全なはずだ。実際前を行くスカーレットブルーや、他のチームも高度を上げているような感じだった。

 次のチェックポイントの森林地帯までは安全重視の高めの高度がいいと思ったが、陽菜ちゃんがそれを強く否定する。


「なんかよく分かりませんけど……『強い風が吹く気がするんです』」

「風? あんまり風が強い感じはしないけど……」

「いや、でも、そういう直感って大事だと思うし、ここは陽菜ちゃんを信じて低空を維持しよう」


 陽菜ちゃんもあまり自信はないような感じではあったが、野生の勘というかそういうのは結構馬鹿にできないものだ。

 フライングボードは大きな板という形状であるため、風の影響はかなり大きいだろうし、もうすぐ岩山地帯も抜けるのでこのまま低空でも大丈夫ではある。


 そう思っていると、直後に強い風の音が聞こえ、前を飛んでいたスカーレットブルーや、高度を上げたチームが大きく風に煽られるのが見えた。

 さすがにここまで狭い岩山地帯を抜けてきたチームだけあって、風に煽られてもしっかりと立て直してはいるが、かなり飛びにくそうであり速度も落ちている。

 対して俺たちは、岩山が風防ぐ壁のような役割を果たし、殆ど影響を受けることなく飛行でき、結果として魔力を消費せずスカーレットブルーとの差がかなり縮まった。


「凄い、陽菜ちゃんの言った通りになったわね」

「えへへ、なんかよく分からないですけど、役に立てましたね」

「陽菜ちゃんのおかげで、かなりいい感じだね。距離も縮めたし、まだ風が吹いてて他のチームは飛び辛そうだから、このまま前に出れるかも……」

「……そう簡単にはいかんよ」

「「「ッ!?」」」


 これはかなり有利な状況で、このままトップに立って距離を稼げれば優勝が見えてくると思った直後、俺たちのフライングボードを横から追い抜いていくボードがあった。その上に載っているのは、黒いローブのチーム……ブラックマスカット。


「見事な状況判断だった、初参加でこれとは……やはり侮れないな。君たちの動きが気になってな、高度を上げずにいて正解だった」


 さすが強豪と呼ばれるブラックマスカット。俺たちの動きを見て、なにか意図があると考えて他が高度を上げる中で低空を維持していたみたいだ。

 そして、俺たちの気が緩んだ隙に一気に加速して抜き去る。この辺りはやはり、経験の差を感じる。


 ただ、悪いことばかりじゃない。ここまででそれなりに予定以上のスピードを出しているので、ここでブラックマスカットに前に出られるのは、俺たちにとってもペース配分を参考にできるという利点もある。

 まだ森林地帯とゴール前という2箇所の攻防が残っているので、ここは焦らず後ろについて、隙を見て追い抜きを試みることにしよう……うん、なかなか熱い展開である。




シリアス先輩「スカーレットブルーも脱落したわけでは無いけど、大きなロス。そしてここで飛び出してきたブラックマスカット……本当にいい展開で、久々に満足している私が居る。そして、陽菜が風に反応したのは天空の祝福の影響かな? 快人が風に気付かなかったのは、創造神の祝福がフライングボード中は影響しないようになってるから……ただし、運命神の祝福の影響はあってボードの調整は上手くできている感じかな?」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] うーん、もしフェイトの祝福が働いてるとなるとちょっと萎えるな。
[良い点] シリアス先輩が生き生きとしているので多分この次はフェイトさんあたりとの砂糖だろうなと確信
[良い点] 強豪感がでてるぞブラック! 結末までわくわくが止まらん [一言] ギャグシリアス先輩のが正解だろうなぁ・・・
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