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フライングボード⑩



 予選レースが終わり、決勝レースまで1時間ほど準備のために時間が空くことになった。その際に決勝進出者には決勝のコース表が配られたので、俺たち三人はそのコースを見ながら作戦会議を行っていた。

 コースは予選と同じ池からスタートして山の方に向かい、岩山地帯を抜けながら、街の周りをぐるっと大きく回って戻ってくるようなコースである。

 いくつか必ず通過しなければならないチェックポイントはあるが、それ以外は割と自由にコースを選べるようになっている。もっとも、チェックポイントを通過しつつ優勝を目指そうとすると自ずとコースは絞られてくるが……。


「パッと見た限りでは、やっぱり岩山地帯が危険そうだよな」

「そうですね。チェックポイントが高さの上限が指定されているので、高高度で岩山を避けて通過することができないようになってますね」

「葵先輩、これ途中まで上空に居てチェックポイント直前で降下とかは?」

「一つの策としてはありかもしれないけど、上空からパッと見てすぐに分かるのか、降下しつつ通過できるような地形になっているのかとか、不安は残るわね」

「……かといって、低空で飛べばそれだけ岩山にぶつかる危険も高くなるか……」


 どちらもリスクはそれなりにあるし、現地の状況が今の時点はよく分からないのでどちらとは決めにくい。あとは、岩山地帯だと風も強そうな気がする。

 今日は結構風が吹いているし、強い横風とか来ると、ただでさえコントロールの難しいフライングボードが大きくバランスを崩してしまうだろう。


「ただ、考えすぎても駄目だし、その辺りはいくつかパターンを考えておいて状況に合わせてかな? 岩山を抜けたあとは、森林地帯……とはいえ、チェックポイントは高い位置だから森に入る必要は無いよな」

「ここはむしろ、方向感覚に注意かもしれません。かなり大きな森ですし、方向が少し違うとチェックポイントを見つけられずに迷う可能性もありますね」


 チェックポイントは空中に浮かぶ四つの魔水晶であり、その魔水晶に囲まれた範囲を通過すればOKということだ。魔水晶はいちおう見やすいように淡く光るらしいが、強い光ではないみたいなので見つかりにくい可能性はある。

 葵ちゃんの言葉に俺が頷くと、陽菜ちゃんも真剣な表情で考えながら呟く。


「……でも、スピードを出すならこのエリアですよね。ここを越えると、ゴールまでのルートはほぼ固定ですし、ここで他より前に出ておきたいですよね」

「逆に言うと抜きやすいのもここだから、他も勝負をかけてくる可能性は高いと思う」


 陽菜ちゃんの言う通り森の上空という広い空間を使える場所でスピードを出しておきたいというのはある。ただ、他のチームも同じように考えてくるだろうし、駆け引きとしてはあえてそこを外すのもありだ。

 これに関してもある程度状況に合わせてとなるかもしれない。


「……たぶん、一番の勝負所はゴール直前のココですね」


 そんな中で、葵ちゃんがコース表の一部を指さす。そこはゴール直前の最後のチェックポイントの場所であり、そこを越えるとゴールまではほぼ一直線であり、コースは完全に固定される。


「フライングボードの構造上、追い抜くというのはかなり広いスペースが必要ですから、ここで一番にチェックポイントを通れば、ほぼ勝負は決まります。そこから先で追い抜くにはかなり無茶な飛び方をしなければなりませんし……」

「なるほど、けど、終盤も終盤だから、そこまで魔水晶の魔力が残っているかってのも重要になりそうな気がするな」

「ですね。レース展開次第では、勝負所ででたくても勝負に出れない可能性もある。なかなか奥の深い競技ですね」


 なんだかんだで、初めは陽菜ちゃんに強引に押し切られる形だったが、結構いまは皆熱意を持って話し合ってる気がする。

 いや、実際結構面白いんだ。どのチームもある程度条件が対等であり、強豪と呼ばれるイエローパイプが予選敗退したりと、アリスの言う通り初参加でも勝てる可能性がある競技になっている。

 かといって、運のみで勝負が決まるというわけでは無く、ちゃんと戦略を考えたり咄嗟の状況に対応したりする必要もあるので、葵ちゃんの言う通り奥が深い。ハマる人が居るのも納得できる。


「じゃあ、とりあえずの方針としては、岩山地帯は最初は上昇して、降下しながらチェックポイントを狙えそうならそのまま。難しいなら降下して岩山地帯を抜ける。上昇分の時間はリスク回避の必要経費として割り切る。次の森林地帯で可能ならスピードをだして前に出つつ、最後の勝負所へ必要なだけの魔力は温存しておくってことでいいかな?」

「はい」

「頑張りましょう!」


 大まかな方針は決まったので、いよいよあとは挑むだけである。時間もいい感じだったのでそろそろ向かおうかと思ったタイミングで、陽菜ちゃんが笑顔で手を出してきた。


「先輩たち、アレやりましょう! 手を重ねてオーってやつ!」

「……陽菜ちゃんが好きなやつね」

「あはは、まぁ、気合は入るか……」


 陽菜ちゃんの要望を突っ撥ねる理由も無かったので、俺と葵ちゃんは苦笑しながら手を前に出して、三人で手を重ねる。

 ふたりがチラリとこちらを見てきたので、年長者として俺が音頭を取ることにした。


「よしっ、頑張っていくぞ!」

「「おー!!」」


 う~ん、なんか青春って感じで、本当にこれはこれで楽しい。




シリアス先輩「いいじゃないか、こういう爽やかな感じも好きだよ。シリアスに決まった形なんてない。それぞれが胸にシリアスを抱いて、シリアスに挑戦するなら……これもまたシリアスさ」

???「シリアスって言いたいだけでしょ、貴女」

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― 新着の感想 ―
[一言] シリアスパイセンそういえばシリアスの化身だった…最近砂糖化が多くて忘れてましたわ…
[一言] 更新お疲れ様です!連続で読みました! ブラックマスカットさんの見た目が怪しい格好だけど良い人で格好の理由も納得出来るものだったw 最後まで油断出来ないものでしたw そして決勝戦までもう少しで…
[良い点] いいなあ〜青春だな〜 シリアスかは分からないけど(笑)
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