フライングボード①
ラサルさんの付き添いも終わり家に帰って来た。時刻的には夕方なので、夕食までベルとリンの世話でもしようかなぁと裏庭に移動すると、葵ちゃんと陽菜ちゃんの姿があった。
なにやら陽菜ちゃんが葵ちゃんに何かを語っているようで、葵ちゃんの方はなんとも言えない微妙な表情を浮かべていた。
「……ふたりともどうしたの?」
「あっ、快人さん……実は、陽菜ちゃんが」
「快人先輩! 私たち3人でこれに出ましょう!!」
「う、うん?」
声をかけるとどこか興奮した様子の陽菜ちゃんが手に持っていたチラシを見せてきた。そのチラシにはかなり派手な文字で『世界最高峰のエキサイティングスポーツ! フライングボード大会開催!!』とカラフルな文字で書かれていた。
なんか文字がやたらカラフルだったり、チラシ自体も目がチカチカするような派手さで、胡散臭さが凄い。
「……なにこれ? フライングボード?」
「なんか、陽菜ちゃんが変なところで貰って来たらしくて……」
「変なところじゃないですよ。ジョギングしてた時に、たまたま露店を出してた変な恰好の人から貰ったチラシです」
それはつまるところ、変な出所ではないだろうか? というか変な恰好の人と断言するような相手から貰ったという時点で、怪しさ爆発である。
「3人一組の競技らしいですし、初心者でも十分優勝を狙えるみたいですよ!」
「……葵ちゃん、どう思う?」
「聞いたことない競技なのに変に賞金が高かったり、怪しさが凄いですよね。陽菜ちゃんは皆で青春したい症候群を発症してるみたいです」
陽菜ちゃんそういうの体育祭的なノリとか好きそうだしなぁ。そう思いながらチラシを見てみると、優勝賞金は白金貨1枚、準優勝は金貨5枚、3位でも金貨2枚……優勝1000万、準優勝500万、3位200万と考えると、スポーツの大会としては破格レベルの賞金である。
確かにこれは、なんと言うか怪しさが凄い……。
「とりあえず、リリアさんたちに聞いてみない? そんなに賞金が出るなら、俺たちが知らないだけで結構有名な大会かもしれないし」
「そうですね。この世界にはWANAGEとか私たちの常識とは違うスポーツもありますしね」
とりあえず、リリアさんに聞いてみるということで話は纏まったが……う~ん、やっぱりチラシから感じる胡散臭さが凄い。
リリアさんがいまは時間的に余裕があったみたいで、尋ねるとすぐに時間を作ってくれた。リリアさんにことの経緯を説明してチラシを渡すと、リリアさんは困ったような表情を浮かべて後方に控えていたルナさんにチラシを見せる。
「……ルナ、知ってますか?」
「……う、う~ん、昔どこかでチラッと耳に挟んだことがあるようなぁ……開催地はハイドラ王国……あの国であれば、変わった競技があっても不思議ではないですが……」
「ただ、この地名……かなり辺境だったはずです。こんな場所で、この賞金規模の大会?」
「なんですかね、このチラシの胡散臭さと相まって変な感じですね」
どうも雲行きが怪しいというか、リリアさんやルナさんですらよく分からないというレベルのマイナースポーツのようだった。
これマジで変な詐欺とかではないのだろうか? 葵ちゃんも困った顔をしているし、陽菜ちゃんもさすがに不安そうな感じである。
「……アリス、知ってるか?」
リリアさんやルナさんでも分からないとなると、答えが得られそうなのはアリスしかいない。俺が後方に向かって声をかけると、姿を現したアリスがリリアさんからチラシを受け取りながら口を開く。
「いちおう詐欺とかではないです。このフライングボードって競技は実在しますね。ドマイナーとまでは言いませんが、かなりマイナーな競技です。ただ、カルト的な人気があるといいますか、好きな人は人生賭けるレベルで好きなんですよね。なので変に大きなスポンサー付いてたりするんすよ……う~ん、カイトさんたちの世界でいうと、ちょっと違うかもしれませんが鳥人間コンテスト的な知名度ですかね?」
「ああ、なんか凄く納得できた気がする。好きな人は物凄く好きだよな」
つまり、聞いたことはあっても実際に見たことは無い人も多いが、もの凄く熱意を持って臨んでいる人も多いって感じの競技か……とりあえず詐欺とかではないのはよかった。
けどやっぱり変な競技っぽい感じがするが……陽菜ちゃんは明るい顔になっていて、内容次第ではマジで俺と葵ちゃんと陽菜ちゃんの3人で出場するような流れになりそうな感じだった。
シリアス先輩「WANAGEの再来か?」




