三人での遊園地デート⑪
トリックハウスを回り終えたとも、再びクロとアリスと遊園地を楽しんだ。いくつかのアトラクションを回り、十分すぎるほどに堪能した。
「いや~遊園地って楽しいね。ずいぶん遊んじゃったよ」
「確かに、結構長い時間遊んでたな。お腹が空いたし、なにか食べたいところだな」
「そうだね。フードコーナーもあったし、なにか食べよっか!」
「……いや、おふたりとも……肝心なこと忘れてませんか?」
「「……あっ」」
呆れたようなアリスの言葉を聞いて、クロと顔を見合わせでハッとする。そういえば、そもそもの話遊園地は時間つぶしの一環であったことを思い出した。
そもそもの本題はすき焼きであり、そのためにあちこち回って材料を買い集めていたのだ。
「……そういえばすき焼き作るんだった」
「か、完全に忘れてたね」
俺だけでなくクロも忘れていたみたいだ。たしかに遊園地に夢中になってしまっていた感じではある。まぁ、特にトリックハウスが衝撃的で、なおかつ割と長かったので忘れてしまっていた部分もある。
「ま、まぁ、気を取り直して戻ってすき焼きにするか……けど、どこで作ろう?」
「シャルティアの店でいいんじゃないかな? 鍋もありそうだし」
「ああ、確かに、アリスの工房にならすき焼きに使える鍋もありそうな気がするし、他の人もいないからのんびり食事するにもよさそうだ」
「じゃ、決まりだね!」
「……おかしいっすね。いま、家主に確認が無かったんすけど?」
そんなわけで、すき焼きはアリスの雑貨屋で行うことにして、遊園地をしまったあとで転移魔法で移動することになった。
「あっ、でもその前に最後に観覧車に乗ろうよ」
「締めには丁度よさそうっすね。サイズ的に三人でも乗れますし」
クロの提案にアリスも賛同し、遊園地の締めくくりとして観覧車に乗ることになった。観覧車の場所に移動して、乗り込む。
ゆっくりと上がっていく観覧車の中で、景色を眺める。こうして改めて見るとかなり大きな遊園地である。これが手提げかばんの中に入ってしまうのだから驚きである。その辺りは流石シロさんといったところだ。
「けど楽しかったね~。トリックハウスの上級モードも面白かったし」
「……上級モード? 切り替えようかと考えはしましたが、結局切り替えてないですよ?」
クロが告げた言葉を聞いて、アリスがなにやら不思議そうな表情を浮かべた。あれ? てっきりアリスが切り替えたと思っていたんだが、この反応はふざけている感じじゃなくてマジっぽいぞ?
「……あっ、そっか、そういえば一度『私が入場したあと』に切り替わる様に設定してましたね」
「意図してたわけじゃないんだな」
「ってことは、クロさんとカイトさんは上級モードを……あ、あれまだ調整中だったんすけど……というか、あんな過激なコースを完走したんすか……ひぇっ」
お前が作ったんじゃないのかというツッコミをグッと呑み込む。よくよく思い返してみれば、そもそも当初アリスはトリックハウスには来るつもりが無かった様子だった。
そして先ほど語っていた条件的に、アリスが一度俺と一緒にトリックハウスに行った後で、上級モードに切り替わる設定だったと。
さらにどうやら上級コースは調整中だったらしい。まぁ、アリスに最後の部屋のやつがやれるとも思わないので、納得できる内容ではある。
「……まぁ、確かに最後のはちょっと過激だったね。結構恥ずかしかったし」
「えぇ、アレとか完全にギャグで入れてたんすけど、マジでやったんすね……クロさん過激」
「シャルティア、降りたらデコピン(極)」
「……遊園地収納してからにしてください。消し飛ぶので……」
確か六王祭で放って、地面を融解させて海を削ったのがデコピン(強)だったっけ? (極)ってそれより上ったことかな? さて、果たしてアリスはすき焼き完成までに復活できるのか……そんなことを考えつつ、苦笑と共に景色に目を戻した。
???「ふぅ」
マキナ「あ、おかえり~すき焼き食べる?」
???「なんで本編より先にすき焼き完成させてんすか……まぁ、いただきます。まぁまぁですね……それで、シリアス先輩は……おぉ、砂糖になってますね? うん? あれ? なんか、シリアス先輩……欠けてません?」
マキナ「すき焼きに使ったからね」
???「ぶっ!?」




