三人での遊園地デート⑩
上級モードのトリックハウスも順調に進んでいき、通常モードと同じであれば次が最後の部屋だろう。ただ、ここで疑問なのは次の部屋の課題がなんであるかという点だ。
たしかにここまで上級モードというだけあって肉体的な接触は増えていた。ただそれでもやはり、シロさんの時には及ばないという印象だ。そして、ここまで直接的に「キスをしろ」的な感じの課題は無かった。
ポッ〇ーゲームなど間接的に指示してくる者はあったが、それでもその程度とも言える。
通常モードですら、最後の課題にはキスを要求してきたのでそれ以上のものが用意されているのかと思っていたが、ここまではそういう感じではなかった。
ただそれでも、通常モードよりは確実になにかしら過激にはなっていた。となると、最後の課題に関してはどうなるのだろうか? キスより過激となると限られてくるし、そんなものをカップル向けとは言え遊園地のアトラクションに設定するのは駄目だろう。
となると、通常モードと同じキスなのだろうか? だが、それはそれで上級モードと謳うわりには拍子抜けと言えるかもしれない。
果たしてどうなるのやらとそう思いながら辿り着いた最後の部屋には、ランダムボックスらしき箱が置いてあった。そして、書かれていた課題は……。
『中に入っているものを二人一緒に食べること。ただし、割って分けたり、噛み砕いたりすることは禁止。必ず一緒に食べること』
なんだこれ? どういう課題だ? 文面を見る限り、まるでポッ〇ーゲームの様に感じてしまうが、まさかここに来て再びポッ〇ーゲームとはならないだろう。
「……うん? またポッ〇ーゲームってやつなのかな?」
「いや、流石に違うんじゃないかな? でも食べ物だとしたら似たような感じに……」
クロも同じようなことを考えたみたいで首を傾げていたが、とりあえず中身を見てみようということになったランダムボックスを開けてみた。
すると中から出てきたのは、綺麗に包装された飴玉がひとつ……。
「……飴、だね?」
「……飴、だな」
出てきたのは飴玉……念押しするように二回書かれた一緒に食べるという分、割ったり噛み砕いたりするのを禁止……おいおい、それってつまり、そういうことなのか? キスをしながら全部舐めきれってこと……か?
最後の最後にとんでもなく過激なのぶち込んできたな!? だって、そこまで大きな飴玉ではないとはいえ、舐めきるには数分は余裕でかかる。
「……ねぇ、カイトくん。これってあれだよね? そういう風にしながら舐めきれってことだよね?」
「あ、ああ、間違いなくそうだと思う」
「凄いこと考えるね、シャルティア……」
さすがのクロもこのストレートな過激さには動揺しているみたいだった。いや、俺も実際、あのアリスがよくもまぁこんな課題を書いたものだと思った。これ、絶対アイツは無理だろ?
「……けど、課題だしね」
「そ、そうだな」
気恥ずかしそうに頬を染めているクロを見て、俺も変に緊張するのを感じながら飴玉を見る。なんなら、普通にキスするより遥かに恥ずかしく感じる。
しかし、クロの言う通り課題なのでこれをクリアしないとゴールはない。顔を見合わせて頷き合い、近くに用意されていたベンチに並んで座る。
さすがに飴を舐めきるまでは長いので、俺がクロに合わせてしゃがむのでは姿勢がきつくなりそうなのでありがたい。
そのまま、少し沈黙したあとでどちらからでもなく顔を近づけ、飴玉を半分ずつ口に含む様にキスをする。
「んっ……ちゅ……ぺろ」
しかし、そのまま中央に飴を配置して左右から舐めていくというのはあまりにも効率が悪く、課題の狙いと思われる通り、互いに舌を伸ばしてディープキスをするように舌を絡めて、飴を転がしていく。
甘い飴の味と、温かく柔らかい舌の感触、これでもかというほど密着して深くキスをしている状態に頭がクラクラとしてくるような感じだった。
「んっ…‥ふぅっ……」
なんというか、飴玉を転がしつつ効率よく舐めることに集中すると、普通にキスする以上に舌の動きに神経を張り巡らせるためか、クロの舌の動きもやけに鮮明に感じる。
そして、当然顔も近いというか密着しているので、微かに零れる熱い吐息もハッキリと聞こえてくる。
本当にのぼせてしまいそうなほどに濃厚なキスを交わしつつ飴を舐めるが、噛み砕かずに舐めきるという制約がある以上なかなか飴は無くならず、本当に長く濃厚なキスをすることになり、終わった後は互いに顔が真っ赤になっていたのも、ある意味必然と言えるだろう。
そして繰り返しになるが……これ、絶対アリスには無理だろ。
シリアス先輩(砂糖像)「……」
マキナ「……もうちょっと、全体から少しずつ削った方がよかったかな? なんか、変な形に削っちゃったかも? まぁ、いいか、後で直せばいいし、すき焼き食べよう」
シリアス先輩(砂糖像)「……(この神、躊躇とか、そういう感情ないのか?)」




