三人での遊園地デート⑦
トリックハウスの課題で見ることになった恋愛映画は、王道の青春ラブストーリーという感じで、既視感はあるものの普通に面白く見ることができた。
クロはどんな感じだろうと視線を向けてみると、かなり真面目な顔で食い入るように見ており、甘い雰囲気ではなく魔法具商会の名誉会長の顔だった。
まぁ、クロにしてみれば映像魔法具の開発を一気に進められるチャンスなわけだし、食い付くのは当然だろう。なんなら、今日のデートが終わったらすぐに映像魔法具が完成してもおかしくはない。
「ん~面白かったね。映像も綺麗で見ごたえがあったよ」
「クロはかなり真剣に見てたな」
「映画もそうだけど、異世界の恋愛ってのも興味あったし、いろいろ勉強になったね。まぁ、当たり前だけど、異世界だからって特別こっちと違った恋愛をしているわけじゃないんだよね」
「まぁ、その辺りはな……よっぽど考え方が違ったりしない限り、ある程度に通う部分もあるだろう」
魔法と科学のような違いならともかく、人の感情に関わるものは異世界だからといって大きな差があるわけでもない。まぁ、だからこそ難しい部分もあるのかもしれないが……。
「さて、次はなんだろうね? 楽しみだな~」
「今日はクロが一番楽しんでる感じがするな」
「ボクにとっては、本当に知らないものが多いし、新鮮な気分だね。ボクもかなり長く生きてるし、こうして新しいことを知れる機会があるのは嬉しいものだよ」
たしかに考えてみればクロは余裕で10万歳を越えているわけだし、この世界に関して言えばほぼ知り尽くしているレベルだろう。だけど、異世界となるとそうもいかない。
もちろんノインさんや過去の勇者役からある程度話などは聞いているだろうが、それでも聞くのと実際に見るのでは大きく違うし、そもそも同じ日本の知識であってもノインさんと俺ではかなり違ってくるだろう。
ノインさんは話などから察するに俺よりざっと100年以上前に生まれた人だし、一世紀も前となればノインさんにとって現代の日本はまさに未知の世界と言えるレベルだろう。
「ところでカイトくん。ニジゲンって世界にはどうやって行くの?」
「二次元? どうやって行くとは?」
「前にシロから聞いたことがあるんだよ。異世界にはニジゲンっていう別の世界があって、そこはコーカンドとかみたいに感情を数値化したりもできる場所なんでしょ?」
「……う、う~ん……なんて説明するべきか」
クロの感覚としては二次元はこちらの世界で言う、魔界と人界のような関係だと思っている様子だった。前々から口にしていた好感度に関しても、シロさんが出所だろうとは思っていたが、二次元に関する話か……。
「二次元っていうのは、専門的は話は上手く説明できる気がしないから除外するとして……要するに本の物語の世界とかのことだから、実在する世界のことじゃない」
「え? そうなの!? じゃ、じゃあ、コーカンドってのは?」
「ゲームって分かるよな? クロもいくつか遊んだことがあると思うけど……」
「う、うん。カイトくんがシロから貰った箱で遊べるやつだよね?」
誕生日にシロさんからゲームができる道具を貰って、クロともいくつかのゲームで遊んだことはある。ただ、パーティゲームっぽい物やアクションが中心であり、恋愛ゲーム等はプレイしたことがない。
まぁ、その手のゲームは基本ひとり用だし一緒にプレイするにはそもそも向かないのだが……。
「そのゲームにはいろいろな種類があるんだけど、物語の中の疑似恋愛を楽しめる恋愛ゲームってジャンルがあって、そういうのでよく使われるのが好感度だな。ゲーム内の人たちに見えてるようなものじゃなくて、あくまでプレイヤーがゲームを進めていくうえで参考にできる数値、みたいな感じかな?」
「な、なるほど……じゃあ、コーカンドが溜まるとプレゼントが貰えるってのは?」
「中にはそういう種類もあって、一定まで好感度を貯めるとゲームを有利に進められるアイテムが手に入ったりするって感じだと思う」
「はぇ~そうなんだ。う~ん、やっぱり、実際に知ってる人から聞くのだと違うね!」
あれ? しかし、なんで俺はいままでクロに対して好感度について詳しく説明しなかったんだろうか? もしかしたらこれに関しても、エデンさんとシロさんの契約による制限がかかってたのかもしれない。
現在は緩和されたから話すことができるけど、それまでは説明するっていう発想が出てこない感じだったのかもしれない。まぁ、単純にそういう話の流れにならなかっただけという可能性もあるが……。
「ちなみに、カイトくんがアオイちゃんと一緒に遊んでたっていうゲームはなんて種類なの?」
「葵ちゃんと遊んでたのはまたちょっと特殊で、オンラインゲームって種類のゲームだな……コレも説明すると細かくなるんだけど……」
「ふむふむ」
いろいろと知りたそうなクロに対し、次の部屋に移動する傍らゲームについて説明することとなった。俺自体が結構ゲーム好きなので、一度話し出すと盛り上がりかなりいろいろと説明することになったが、クロは終始楽しそうに聞いてくれていた。
また今度、いろいろ教えたゲームを一緒にプレイしてみるのも楽しいかもしれない。
シリアス先輩「まさか、ここに来てクロの間違った知識が修正されるとは思わなんだ……うん?」
マキナ「牛肉と豆腐は食べやすい大きさに切って、ネギは斜め切りに、えのきやシイタケは石づきを取って……春菊は……」
シリアス先輩「ガチですき焼きの準備してやがるコイツ!?」




