三人での遊園地デート③
第二の部屋の課題であるパフェに関して、食べるだけなら量は大したことは無い。それこそアリスなら一瞬で食べ終わってもおかしくないサイズではある。
ただ、あくまで交互に互いに食べさせるという形で食す必要があるので、流石にすぐとはいかないだろう。
「ほら、アリス。あ~ん」
「あ、ああ、あ~ん」
「いや、お前の方からは別として、俺が食べさせたことは何度もあっただろうが……」
「何度経験しようと、恥ずかしいもんは恥ずかしいんすよ!!」
「そ、そっか……」
前にも俺の手が腱鞘炎になりそうなレベルでたくさん食べさせたのだが、慣れとかそういうのはないみたいだ。そして俺が食べさせたのなら、次はアリスがこちらに食べさせる番である。
アリスはパフェと俺とを交互に何度も見て、たっぷり1分ほど間を開けてからスプーンを手に取って一口分掬って、手を添えつつ差し出してきた。
「‥‥…あ、あ~ん」
「滅茶苦茶手が震えてる……あ~ん。うん、パフェってあんま食べる機会無いけど、たまに食べると美味しいな」
「なんで、そんなに余裕そうなんすか!!」
「い、いや、なんでと言われても……」
さすがに恋人同士であり、これまでデートなんかも何度もしているのだからある程度は慣れるのが当然だ。アリスがまったく慣れて無いだけである。
しかし、それにしてもアリスの手が滅茶苦茶震えるので、対面で食べるのはなかなか大変だ。
「なぁ、アリス。これって席は必ず向かい合った状態じゃないといけないってルールはあるのか?」
「え? 別にないっすけど?」
「なるほど、じゃあ……」
アリスに確認をしてから俺は立ち上がって椅子を持ち上げ、アリスの隣に椅子を置いてそこに座った。
「な、なな、なんすか!? きゅ、急に……」
「いや、こっちの方が食べさせやすいし食べやすいし……というわけで、ほら」
「い、いや、その、効率を求める理由は分かりますが……ただ、その、ちょ~っと距離が近いのではないかと思う次第でして……」
「本当にいまさら何言ってるんだか……あっ、こら、逃げるな」
「あわわわ、肩を抱くのは反則じゃないですか!? ルール違反ですよ!!」
「なんのルールだよ……」
ワタワタとするアリスに呆れつつ、逃げないように肩を手で押さえつつパフェを食べさせる。まぁ、アリスがその気になれば簡単に振りほどけるだろうし、口ではどうこう言ってても嫌ではないのだろうが……。
パフェを無事に完食して次の部屋に移動する。アリスはもうすでにかなり羞恥心にダメージを受けているみたいで、いまにも顔から湯気が出そうではあるが……シロさんと行った時の部屋数から考えるに、まだ半分以上残っているはずだ。
そして辿り着いた三つ目の部屋、そこの扉に書かれていたのは……。
『隣接する部屋にあるプラネタリウムのペアシートで、最低10分観賞すること』
プラネタリウムときたか、これはまたなんともコテコテなカップルっぽいイベントではある。ペアシートというと、たぶんあの大きなソファーのような形状のシートだろう。
個人的なイメージでは丸っぽい形をしたふたり用ソファーって印象だ。そういえば六王祭でも似たような……ああいや、アレはイルミネーションだったな。
「なるほど、次はプラネタリウムか……」
「な、なんすか、文句があるんすか?」
「いや、ペアシートって初めてなんだけど、なんか寝転がれるサイズのやつだっけ?」
「ええ、そうですよ。用意したペアシートは、比較的中央に向けてくぼんだデザインになっているので、ふたりで並んで寝ころぶと自然と体が密着するというタイプですね」
「……ふ~ん」
「なんすか、その『あっ、こいつまた自分で用意しておいて恥ずかしがりそう』みたいな目は? 舐めないでくださいよ! すでに割と勢いで用意したことを後悔してます!!」
「駄目じゃねぇか……」
堂々と宣言するアリスに苦笑しつつ、隣の部屋に移動すると結構本格的なプラネタリウムになっており、中央に丸型のペアシートがあった。
なるほどアリスの言う通り、一緒に寝転ぶと結構密着しそうなサイズである。
「……自分で用意しといてアレですけど、やっぱちょっと小さい気が……結構密着しちゃいそうなのでサイズの変更を……」
「しなくていいから、さっさと横になるぞ」
「まま、待ってください!? ま、まだ心の準備がですね……あと40分……いや、90分ぐらい考えてから……」
「長すぎる。ほらっ、行くぞ」
「あわわわわわ……」
10分プラネタリウムを見るために90分の心の準備を待つ気にもならなかったので、アリスの手を引いてやや強引にシートに寝ころぶ。
手を引きながら寝ころんだせいか、アリスがすっぽり腕の中に納まるというか、軽く抱きしめるような形で寝ころんでしまった。
「はわわ、あ、ああ、あの、かか、カイトさん……ここ、これはちょっと、えっちすぎるのでは……」
「いや、そんなことは無いと思うけど……じゃあもう少し離れるか?」
「うぐっ……い、いや、それはその……私はいま、なんか体に力が入らなくてカイトさんの手を振りほどけないので無理です」
「……ふふ、そっか、じゃ、このままだな」
「あぅ」
恥ずかしがりまくって素直じゃないものの、離れたくもないみたいで、アリスは真っ赤な顔を隠すように俺の胸に顔をくっつけてきた。
それじゃあプラネタリウムが見えないだろうと思いつつも、まぁ、いいかと苦笑しつつアリスの体を少し強めに抱きしめた。
シリアス先輩「なにやってんだよ! 早くすき焼きにもどれよ! 間に合わなくなっても知らないぞ!!(自分が砂糖化する意味で)」
マキナ「私はね。溶き卵にちょっとだけポン酢いれる派なんだ」
シリアス先輩「聞いてねぇよ!!」




