三人での遊園地デート②
アリスが改修したトリックハウスは、つまるところアリスの要望が反映された場所である。
「……な、なんで、私からなんすかね?」
「クロが気を使ってくれたんだろ? つまるところ、アリスがやりたいことが詰め込まれているわけだし」
「誤解しないでくださいよ! たしかに、私の要望も僅かに……多少……ほんの少しは反映されていますが、あくまでベースはシャローヴァナル様の作ったものです。ちょっと変更しただけですよ」
「ふむ。まぁ、その辺は行ってみればわかることだけど……」
今回のトリックハウスは、クロとアリスそれぞれと順番に変わることになったが、最初はアリスからである。ちなみにこれはクロの提案なので、間違いなく経緯を聞いてクロが気を使ってくれたんだろう。
そしてアリスの発言は少し気になる。基本はあくまでシロさんが製作したものということは、ある程度は要望を反映しつつも、シロさんが考えた……うん?
「……あれ? 俺の気のせいじゃなければ、トリックハウスのお題とか考えたの、お前じゃなかったっけ?」
「………………」
「あの時シロさんは明らかに、知らない感じで楽しんでたけど?」
「……ま、まぁ、確かに、そうですが……アレはあくまでカイトさんとシャローヴァナル様ように作ったわけで、多少接触が多くてもご愛敬とか、そういうノリで作りましたし……その時とは状況が違うというかなんというか……」
サラッとあの時は悪ふざけも含まれていたみたいなことも言ってるが、ある意味ではその悪ふざけがまるごと返ってきているわけだ。
それによくよく思い返してみれば、シロさんと行った時も割とコテコテのカップルっぽいイベントが多かった。考えてみればアリスらしいとも言える気がする。
そんなことを考えつつ歩いているとさっそく最初の部屋に辿り着き、大きな扉の前に大きな文字でお題が書かれていた。
『彼氏が彼女をお姫様抱っこすれば開きます。なお、お姫様抱っこは次の部屋まで継続すること』
ふむ、コレは覚えがある。シロさんと行った時はふたつめの部屋にあったやつだったかな? 順番が変わって一番初めに持って来てるわけか……なるほど、内容は同じで順番が変わっているというパターンか。
「……なるほど」
「な、なんすか!? その微笑まし気な顔は!! 『あっ、コイツお姫さまっ抱っこして欲しかったんだな』みたいな察した感じの顔は! ……そうっすけど!? もっとずっと前からしてほしいって思ってましたけど! 悪いんすか!!」
滅茶苦茶恥ずかしがっているのか、顔を真っ赤にして逆切れ気味に叫ぶアリスはなんとも可愛らしく、思わず笑ってしまった。
ついでに、聞いてもないのに前々からやって欲しかったみたいなことも暴露しているあたり、清々しい自爆っぷりである。
「悪くは無いけど、それなら別にもっと早く言ってくれればいつでもやったのにって思ってな」
「舐めないでくださいよ。私が恋愛関連でどれだけヘタレだと思ってるんすか!」
「いや、だから、そういうのって自信満々に宣言することじゃないと思うが……まぁ、いいか。じゃあ、お姫様抱っこするぞ」
「ひ、一思いにやってください」
思いっきり身構えているアリスに苦笑しつつ、アリスをお姫様抱っこで担ぎ上げる。小柄な体型も相まって非常に軽く、かなり簡単に持ち上げることができた。
アリスは分かりやすいほど照れているみたいで、顔を逸らしたまま一切こっちを向かない。
「……ふふ」
「な、なんで笑うんすか……え? 私なんか変ですか?」
「いや、見るからにガチガチでなんか面白くて……実際に抱っこされた感想はどうですか、お姫様?」
「……む、むぅ……いや、まぁ……嬉しいっすけど……」
本人が言う通り恋愛関連にはとことんヘタレなアリスは、ずっと顔が真っ赤の状態ではあるが、とりあえず喜んではくれているみたいである。
その様子に再び笑みを浮かべつつ、開いた扉を進んで次の部屋に向かって歩き出した。しかし、まぁ、アリスが改修したということは、おそらく過激な類のお題は排除されているのだろう。
俺じゃなくてアリスの方が耐えられそうにないし、そうなるとどんなお題があるのだろうか? アリスはこれでかなりロマンチストというか、コテコテの感じに憧れがあるのでいかにもカップルっぽい感じのものである可能性が高いが……。
そして辿り着いたふたつめの部屋には、扉の前にテーブルがひとつと向かい合う形の椅子がふたつ……そしてテーブルの上にランダムボックスっぽいものが置いてあった。
『中にあるパフェを完食すること。ただし、互いに交互に食べさせ合うこと』
なるほど、つまりこれはカップル定番の交互に「あーん」をして、食べさせ合うというものである。あーん自体は、以前にもアリスにやったことはあるがパフェでは無かった。
たしかに定番のシチュエーションだし、憧れていたのかもしれない。
「……ふーん、なるほど」
「……本当に、なんすかこの羞恥プレイ」
なお例によってアリスは恥ずかしくてたまらないのか、両手で顔を覆っていた。
シリアス先輩「や、やめろ、砂糖化する……」
マキナ「すき焼きの割り下に砂糖って必要だしね」
シリアス先輩「え? これ、材料集めの一環?」




