三人での遊園地デート①
時間が無くて少し短めです。
クロとアリスとの遊園地デートは、かなり楽しく回っていた。クロが異世界の遊具と言っていいものたちに興味津々で、アレもコレもとはしゃいでいて楽しそうだ。
俺とアリスは遊園地についてはある程度知っているので、基本的にはクロの行きたい場所に移動してアトラクションを楽しんでいる形だ。
「……けど、アリス。これ、時間大丈夫か? クロ、まだまだ遊ぶ気っぽいけど」
「ああ、この空間は時間の流れズラしてるので外の時間的な意味なら大丈夫です。カイトさんがいい感じにお腹空いたら、すき焼きすればいいっすしね。なんならここで食べてもいいです。レストランエリアの厨房使えばいいですし」
「遊園地ですき焼きってのも、なんか妙ではあるけどな……」
「まっ、それはそうっすね」
そんな会話をしつつ園内を進んでいたのだが、途中でなにやらアリスが嫌そうなというか、不安そうな表情を浮かべ始めた。
なんだろうと首を傾げていると、クロがパンフレットを持ちながら笑顔で告げる。
「次はこの先のトリックハウスってのに行ってみよう!」
「……あ、やっぱり……どうか、どうか……素直にファミリー用で納得してください……」
クロの言葉を聞いて、小さく呟いたアリスの言葉を聞き、ようやくなぜ不安そうな表情を浮かべていたのかを察することができた。
この先にあるトリックハウス……シロさんの時と同じであれば、脱出ゲームのような建物でファミリー用、カップル用、謎の先輩用というみっつのルートが存在する建物だった。
まぁ、謎解きとは名ばかりでカップル用のは、お姫様抱っこしたりカップルっぽいゲームしたりという内容だった覚えがある。
「クロさん、聞いてください。このトリックハウスには三つのルートが存在します。まぁ、ひとつは先輩を痛めつける用なので、実質ふたつのルートですね」
「ふむふむ」
だから、アリスは先輩とやらになんの恨みがあるんだ? ま、まぁ、それは置いといて、どうやらアリスはクロを説得しようとしているらしいが、なんとなく俺の直感が告げている。たぶん無理だろうと……。
「ファミリー用とカップル用です」
「じゃあ、ボクたちはカップル用だね?」
「いえ、そこに問題があるんです」
「問題?」
「カップル用はふたり用でして、そのルートを選ぶと少なくともひとりは終わるまで外で待っておく必要があるわけです。そこそこ長いですし、待ち時間も必然的に長くなるわけです。対してファミリー用は三人でも……」
なるほど、人数制限を利用して説得にかかったか……しかし、なんだろうこの感じ、アリスがクロを説得しようとしているのは、単純に恥ずかしいからという理由だけではない気がする。
そんなアリスに対して、クロはキョトンとした表情を浮かべたあとで口を開く。
「順番に行けばいいんじゃないの?」
「……それは、まぁ、そうなんすけど……そうなるとカイトさんは二回行くことになるわけですし……」
「俺は別に構わないけど?」
「ぐっ……えっと、アレです。時間とか遅くなっちゃいますし」
「この空間は時間ズラしてるから大丈夫だよ」
「……そうっすね」
つい先ほど俺と交わした会話の内容をそのままクロに返され、アリスはどこか諦めたような表情で天を仰いだ。本当になんでこんなに頑なにファミリー用に誘導しようとしてたんだろうか? そもそも、元々はアリスとしても俺と一緒に行くつもりで改良を……うん?
「なぁ、アリス」
「あっ、嫌な予感がします。な、なんすか?」
「このトリックハウスって、シロさんの時から改良してるの?」
「…………してますけど」
「カップル用も?」
「………………してますね」
分かったぞ、コイツがやたらとファミリー用に誘導したがってた理由が! アリスはトリックハウスのカップル用ルートを改良した。そして、それは俺と一緒に行く想定で作ったはずだ。
つまるところ、このカップル用ルートは『アリスが俺とやりたいカップル的な行為』を基準に改良されている可能性が高い。だから、やたら恥ずかしがってたんだなコイツ……。
「な、なんすか!? その微笑ましげな目は!! だって改修するとしたら、当然改修者の趣向は反映されるもんじゃないっすか!!」
顔を真っ赤にして叫ぶアリスだが、もちろんただただ可愛らしく微笑ましいだけだった。
シリアス先輩「諦めんなよ!! 前のイルネスとの晩酌の時もそうだったけど、ここまで来たなら最後まで貫けよタイトル!! あと、設定上、快人が空腹になるまで大丈夫って感じで、時間制限を撤廃してるのが嫌な予感過ぎるんだけど……」




