魅惑のすき焼き④
クロとアリスと一緒に転移魔法を用いて集めたおかげで、無事にすき焼きの材料は集まったし、鍋も用意できた。
あとは食べるだけではあるが、流石にまだ時間が早すぎる。材料が集まってしまえば調理にそこまでの時間はかからない。いや、拘ったりするならかかるだろうが、俺の料理の腕前では細かな拘りは無理なので、そこまで時間はかかることは無い……と、アリスが言っていたので、残りの時間はクロとアリスとデートを楽しむことになった。
そして、どこでデートという話になるのだが……クロが作り出した亜空間である。なんで亜空間と言われれば、それはアリスからの提案だった。
「おぉぉぉ、凄いね! これが遊園地ってやつなんだね。ここまでの規模の遊戯施設となると、こっちでもなかなか見ないね」
「まぁ、魔法具で再現するにはこのデカさと数はコストがかかり過ぎますからね。採算性で考えると赤字の可能性も高いので、なかなか作ろうとする人もいないっすよね」
「なるほど……それで、コレ、シロから貰ったの?」
「ええ、まぁ、その後でいろいろ改造して普通の人間でも問題ないレベルに調整した感じですね。ちょうど、試してみたいと思ってたので……」
そう、クロの亜空間の中でアリスが取り出したのは、以前アリスがシロさんから貰った遊園地である。シロさんが作り出した時点での遊園地は、基準がリリアさんとかいう魔のアトラクションが多数あったが、その辺はアリスが調整したらしい。
そして、いろいろ改造したという言葉通りアトラクションも結構変わってたりする。
「……ところでアリス、あの着ぐるみ集団は?」
「スタッフ兼マスコットですね。やっぱりテーマパークといえばマスコットでしょう」
「もうちょっと、可愛いデザインすればいいのに……」
「おかしいっすね? 遠回しに、あのマスコットは可愛くないって言われてる気分です」
そう言ってるんだよ。どれも絶妙に不気味というか、なんかやる気のないデザインなのはなんでなんだろうか? 一部キモカワと言えなくもないかもしれないが……腹立つデザインの方が多い気がする。
「へぇ、いろいろあるんだね。う~ん、どれがいいかな? 迷うね!」
「クロは楽しそうだな」
「クロさんは遊園地初めてっすからね」
「アリスはやっぱり行ったことあるのか?」
「昔親友と行って、その親友を絶叫マシンに放り込みまくりましたね」
「親友さんが可哀そう……」
親友というとたまに話題に出るイリスさん以外にもうひとりいたという親友だろう。なんか、話を聞く限りわりとアリスに振り回されてる感じがあるので、同情してしまう。
ここでも放り込みまくったと言ってるので、明らかに絶叫マシンを嫌がった親友さんを乗せたんだと思う。
「でまぁ、せっかくですしクロさんが回りたい順でいいかと思うんすけど……」
「ああ、俺も異論は無いよ」
「じゃ、そういうわけでクロさん、最初はどこ行きますか?」
「迷ったけど……やっぱりこの一番大きいジェットコースターってやつかな」
「ほぅ、お目が高い。それはアリスちゃんが改造して、この遊園地内でも最大規模に拡張した自信作です。まぁ、クロさんにしてみれば遅すぎるかもしれませんけどね」
というか、アリスにとっても遅いのだろうしたぶん本来のジェットコースターとしての楽しみ方を出来るのは俺だけなのではないだろうか? クロたち的には、園内を優雅に観覧できる乗り物みたいな感覚だろうし……。
「よしっ、じゃあそうと決まれば出発だね! カイトくん、手を繋いでいこう!」
「うん? ああ、まぁ、デートだしな」
「おやおや、カイトさんは美少女ふたり、両手に花状態ですね」
「それはまぁ、本当にそう思う」
「……」
「いや、だから、自分から降っといて自爆して恥ずかしがるなよ……」
クロとアリスとそれぞれ手を繋いで歩き出すと、ニヤニヤとからかうような笑みを浮かべてアリスが話しかけてきたが、例によって自分から降っときながら返されると気恥ずかしいのか少し頬を赤くして目を逸らしていた。
シリアス先輩「おい、すき焼き作れよ……おい……何でデートしてんだよ……すき焼き作れよぉぉぉ!」




