謎の手紙⑩
キャッチボールでしばらくロゼさんと遊んだあと、草原の一角に座って休憩する。動きは少ないが、それなりの時間やっていたので多少の疲れはある。
マジックボックスからスポーツドリンクを取り出しつつ、ロゼさんに声をかける。
「ロゼさんも、なにか飲みますか?」
(お水もあるかな?)
「ありますよ。はい」
(わーい)
前にリリウッドさんへのお礼で買ったお高い水……あの後、実際どんな味なのだろうかと興味が湧いて数本追加で購入した。
ちなみに飲んでみたのだが、俺には普通の水にしか感じられなかった。分かる人には分かるのかもしれないが、残念ながら俺には水の味の違いはわからなかった。
「ロゼさんは水が好きなんですか?」
(うん。美味しいお水、好きだよ。いろいろ飲めるけど、やっぱりお水が一番美味しいね)
「そういえば、スライムは基本的に水だけを飲むって聞いた覚えが……」
(なんでも食べれることは食べれるんだけどね。ロゼは凄いスライムだから違うけど、普通のスライムは固形物とかを食べると消化に凄く時間がかかるし疲れちゃうんだよ。食べて元気になるより逆に疲れちゃうから、水しか飲まないんだよ。ロゼは凄いスライムだから違うけどね。えっへん!)
「あはは、なるほど、ロゼさんは凄いんですね」
俺の膝の上に乗り、丸い体を少しそるように動かす。所謂ドヤ顔みたいな感じだろうけど、ロゼさんがやると非常に可愛らしい。
まぁ、言葉に嘘はなく実際ロゼさんは凄いどころか凄すぎるスライムなんだろう。通常スライムは知性も低く、魔物に分類されるが、ロゼさんは爵位級高位魔族の認定を受けているので魔族だ。
それだけでも、ロゼさんが高い知能と強大な力を持っていることを理解できる。実際、伯爵級最上位レベルなわけだし、世界的にも上から数えたほうが早い実力者だ。
「実際、こうして凄いダンジョンの管理を任されてるぐらいですから、ロゼさんは本当に凄いですよね」
(えへへ、カイトくん、一杯褒めてくれるから好き~。うん、ロゼはしっかり六王ダンジョンを管理してるよ……でもね、でもね。そもそも、挑戦者が少ないんだよね)
「あ~やっぱりレベルが高すぎるからですかね?」
(うん。伯爵級最上位クラスでも一階も突破できてないし、そのぐらいのレベルの実力者だと一度闘うと、次は勝算があるぐらいに成長しないと再挑戦はしないんだよね……いや、ごく一部、アグニとかニーズベルトとか、入場制限が解除されるたびに確定で来る人もいるんだけどね)
たしかにその辺は何度負けようと挑んできそうだが、仮に戦王五将+フレアさんが確定で再挑戦してくるとしても、数が少ない。あと、オズマさん辺りはあまり挑戦する気は無さそうなイメージだ。
いや、オズマさんも戦王五将らしく戦闘が好きという面もあるみたいなのだが、たまに一緒に飲んだりして話を聞く限り、オズマさんは対人戦こそ好んでいるが、ゴーレムのような自動で動く類の相手との戦闘はあまり好きではないみたいだったので、あまり六王ダンジョンには熱を入れそうにない。
「いっそ、少しレベルを下げたダンジョンを追加で作るのもいいかもしれませんね。ロゼさん、メイドゴーレムとかいっぱい作ってましたし、ダンジョンを作れるだけの力はあるわけです」
(それ、いいね。楽しそう)
「六王ダンジョンを最上級として、初級、中級、上級とか、そんな感じで作ると面白いかもしれませんね。いや、完全に素人考えで技術的に可能かどうかは分かりませんが……」
(大丈夫だよ。禁忌の地のこの辺りはロゼが任されてる土地だから、ある程度自由に作り変えられるし、新しいダンジョンも作れるよ~)
「じゃあ、暇なときに作ってみたりするのもいいかもしれませんね」
(うん! ロゼ、新しいダンジョン作ってみるよ~。どんなのがいいかな、カイトくんも一緒に考えて~)
「そうですね。コンセプト的には六王ダンジョンと同じで、ボスを順に倒していく形でいいんじゃないですかね? それなら、作るゴーレムの数も少なくて済みますし、難易度の調整もしやすいと思います」
六王ダンジョンに似た感じで、難易度別のダンジョンを作るというのはなかなかいい考えだと思う。上級とかを爵位級向けに調整するなら、クロやアリスの力も必要だろうが……。
まぁ、とはいえ現時点ではこんなダンジョンがあったらいいな~程度の話であり、細かい技術の問題は後回しにして、ロゼさんといろいろ想像しながら考えてみよう。
(仕方ありませんね。快人さんの為に特別製のダンジョンボスを……)
話聞いてました? 六王ダンジョンよりレベルを落としたものを作るんですよ? 六王ダンジョン以上の魔境を作る話はしてないですからね!!
マキナ「あっ、私も余ってる全能鉄球たくさんあるし、愛しい我が子にあげようかな?」
シリアス先輩・???「「絶対やめろ」」




