謎の手紙⑥
地下一階の次は、当たり前だが地下二階である。そこは地下一階とは違って過酷な環境という感じではなく、広い荒野という感じの場所だった。
見渡す限りで障害物のようなものもなく、ひび割れた大地だけがひたすら続いている感じである。
「ここは、地下一階とは一転してなにも無い場所ですね。ここに配置されているゴーレムは?」
(ここは、マグナウェル様のゴーレムを配置してるんだよ。マグナウェル様のゴーレムは、本物には遠く及ばないけど凄くおっきいから、広い場所じゃないとね)
「なるほど、けど見える範囲にはいませんね」
(それじゃ、ゴーレムを呼ぶね)
マグナウェルさんを元にしたゴーレムとあれば巨大であることは分かるのだが、見える範囲にそんな巨大な影は無い。
そう思って尋ねるとロゼさんがゴーレムを呼ぶと告げる。すると地面が地震のように小刻みに揺れ始め、俺たちからかなり離れた場所の地面が爆発……いや、地中から巨大なゴーレムが出てきた。
マグナウェルさんには及ばないとはいえ、推定の全長は1000mはありそうな超巨大なサイズであり、その姿は地上戦を重視したような重厚な体と、正面からの攻撃に強そうな堅牢で大きな頭に鋭い角……見た目は、完全にトリケラトプスだった。
「これはまた、凄いですね」
(このゴーレムはね。『叫ぶ大地』っていう名前で、スピードはそこまで早くないけど、攻撃の範囲や重さが凄くて、地面を操る能力もあって、とにかく攻撃範囲が広いんだよ)
「本体の巨体もあって、回避は難しそうですが……耐えるにしても、あの質量からの攻撃は重そうですね」
(伯爵級最上位クラスの精霊でも、一撃耐えられるのは数人ぐらいだと思うよ)
広範囲かつ超質量の攻撃……まさに重戦車というべきか、とにかくパワフルな戦いをしそうなイメージだ。さらに大地も自在に操るとあっては、それそこ攻撃を凌ぐのは困難だろう。
相性次第では、このゴーレムが地下一階にいる時はそれだけで、対抗策が一切なく詰む挑戦者もいるかもしれない。
「そういえば、ロゼさんは六王ゴーレムを全て操れるんでしたっけ?」
(そうだよ~。ロゼ以外にも、それぞれ本体の六王様の言うことも聞くようになってるけど、全部のゴーレムを操作できるのはロゼだけだよ。でもでも、このダンジョン以外だと、特殊な結界魔法を使わないと使えないから難しいね)
「結界魔法さえ使えば、外でも運用できるってことですか?」
(そうなんだけど、魔力の濃度とか、空間の広さとか、いろいろな条件が噛み合わないと使えないから、とってもとっても難しいね)
「なるほど……ちなみに、六王ゴーレム無しの状態のロゼさんって、どれぐらい強いんですか?」
(ロゼはね、ロゼはね。アルティメットスライムなんだよ~。ロゼは六王様やお姉ちゃんたちの魔力をいっぱい貰って育ったから、伯爵級高位魔族なんだよ。戦うと、う~ん……ゼクスお兄ちゃんと同じぐらいかな~? フュンフお姉ちゃんとかには、敵わないよ)
それはつまり、伯爵級最上位クラスの力と言っていいのでは? いや、相性とかもあるので単にゼクスさんに対して強いだけで、伯爵級レベルなのかもしれないが、それでも十分すぎるぐらい強いと思う。
「ロゼさんは強いんですね」
(えへへ、うん。ロゼは強い子、カイトくんが危なくなっても、守ってあげるからね!)
「あはは、それは頼りになりますね」
可愛らしいロゼさんに和みつつ、そのまま次の地下三階へと移動した。地下三階はこれはまた先ほどまでとは景色が一変しており、一面の大森林といった感じの場所だった。
となると、この階層に居るゴーレムはおそらく……。
「森ということは、ここに居るのはリリウッドさんを模したゴーレムですか?」
(大正解! ここはリリウッド様を元にしたゴーレム『歌う森林』が居るよ。いま呼ぶね~)
ロゼさんがそう言うとほどなくして周囲の木々がひとりでに動きはじめ、地面が大きく盛り上がったかと思うと、巨大な大樹が生えてきた。
大樹から巨大な枝がいくつも折り重なって巨大な腕のようになっており、パッと見た感じ大樹のモンスターといった雰囲気だ。
「これはまた凄い迫力ですね。さっきの叫ぶ大地には劣りますが、100mは越えてそうな巨体ですし……」
(この歌う森林はね。すっごく強固な防御力を持っていて、常に強力な反射魔法で全身を覆ってるから、大抵の攻撃は反射されちゃうんだよ)
「なるほど、その辺も本体のリリウッドさんに近い感じなんですね」
(うん。それに、周囲に生えている木々も歌う森林の一部だから、森全体が攻撃をしてくるよ)
う~ん、これもまたすさまじい。この大森林全てが敵となると、手数も凄まじいだろうし、その上で常時攻撃反射、それを抜けても強力な防御力に……おそらくリリウッドさんをモデルとしているなら、回復能力も凄いはずなので、倒すのは本当に大変そうだ。
さて、メギドさん、マグナウェルさん、リリウッドさんモチーフのゴーレムが来て、アリスとクロは階層が固定となると、次はアイシスさんのゴーレムかな? どんな感じなんだろうか……さすがに死の魔力をゴーレムで再現するのは無理だと思うけど……。
ドクターM「つまり愛しい我が子の趣向としては……そこに対する現状の法則だと……要約すると愛しい我が子が可愛すぎるってことで……」
シリアス先輩(混乱中)「……(ワガコカワイイ……ワガコカワイイ……ワガコカワイイ……はっ!?)」
 




