謎の手紙①
それはある日唐突に俺の下に届けられた。手紙の整理をしてくれているアニマが、なんとも困った表情で持って来たのが印象深かった。
その手紙には差出人が一切書かれておらず、手紙の内容も正直、意味不明と言っていいものだった。
『ワタシハアナタヲシッテイマス。ナゼナラ、ワタシハアナタヲシルモトタチト、ハナシヲシタカラデス。ワタシハ、アナタニメグリアウコトヲキボウシマス。アナタハバショヲシリマセン。デスガワタシノバショハヒロクシラレテイマス。ワタシハアナタガ、ワタシのバショニ、アシヲムケルノヲネガッテイマス』
自動的にこの世界の文字が読めるはずの俺が認識できた内容がこんな感じであり、アニマ曰く文法なども滅茶苦茶で、まともに手紙を書いたことがある者の文では無かったとのことだ。
さらに謎なのか、この世界にも郵便局のようなものがあり通常手紙はそこを経由してくる際に判を押されており、どこの郵便局を経由して届いたのかが分かるようになっている。
だが、この手紙にはその判も一切存在しないので、どうやってウチに届いたかも不明といえた。
内容は……私は貴方を知っています。なぜなら、私は貴方を知る元……これはおそらく元ではなく者かな? 私は貴方を知る者たちと、話をしたからです。私は、貴方に巡り合うことを希望します。貴方は場所を知りません。ですが私の場所は広く知られています。私は貴方が、私の場所に、足を向けるのを願っています。
……内容を考えてみると、俺のことを知り合いか誰かから聞いた人が、俺に会いたいと言っている感じであり、自分の居る場所に来てくれることを願っていると締めくくられていた。
だが、その割には場所のヒントのようなものは一切無い。
「……へぇ、コレは……なるほど、頑張って書いたんでしょうね」
「うん? アリス、これが誰からか分かるのか?」
「そりゃ分かりますよ……う~ん、答えを教えてもいいんですが、それはそれで面白みに欠ける気がします」
「面白さは求めてないんだけど……」
「まぁまぁ、せっかくですし、謎解きの形にしましょう。王立図書館でこの本を探して、最後のページを見てみてください」
いたずらっぽく笑ったアリスがメモに数冊の本のタイトルを書いて俺に手渡してきた。この反応を見る限り、手紙の主に悪意などがあるわけでは無く、少なくとも危険な話とかではない様子だった。
しかし、王立図書館にわざわざ行かせる理由はなんだろう? 図書館や本に関わりのある人物なのだろうか?
首を傾げつつも、まぁ、たまにはこういうのもいいかとそう思いながら俺は外に出る準備をした。
王立図書館はシンフォニア王国首都内で、学校などが多くあるエリアに存在する。魔法学校に講義を聞きに行っていた葵ちゃんなんかはよく足を運んでいたみたいだが、俺は行くのは初めてだ。
地図を見ながら辿り着いたそこは、それこそ城かと思うような巨大な建物だった。外観の大きさに圧倒されつつ受付で手続きをして中に入ると、それはもうまさに本の森とでも言うべき壮観な光景だった。
司書さんにアリスのメモを見せ、それぞれの本がどこの棚にあるかを教えてもらって移動して、各本を集めていく。
そして、集まった本を持って空いている席に座って最後のページを確認した。すると、そこにはメモらしきものが挟まっていた。
『ヒント1:テンペストドラゴンの生息地は?』
『ヒント2:四方ではない』
『ヒント3:空ではなく地』
『ヒント4:森ではなく荒野』
『ヒント5:上ではなく下』
『ヒント6:左右ではなく後ろ』
『ヒント7:赤でも白でもない』
『ヒント8:扉を開くカギは従者が持つ』
『ヒント9:従者の居る場所と差出人の場所は別』
『ヒント10:甘いものを持っていくと喜びますよ』
どうやら、図書館に関係する相手というわけでは無く、単にアリスが雰囲気作りで先回りしてメモを仕込んだだけみたいだった。
しかしなんだこれ? どういう意味……うん? そういえば、メモが挟まっていた本……ヒント1が挟まっていたのは『古代竜の生態』というタイトル。ああ、なるほど、それぞれのメモのヒントの答えは、それぞれのメモが入っていた本に書かれているというわけか……本当に謎解きみたいになってきたな。
【シリアス先輩解凍中】
???「これ、自然解凍でいいんすかね……まぁ、おいときゃそのうち復活するでしょう」
 




