ジークと過ごす一夜③
ジークさんとのんびり果汁酒を楽しみながら雑談を続ける。最初こそ互いに緊張で意識してしまったが、少し経てば緊張もほぐれて穏やかに会話を楽しむことができた。
やはりメインは、今日行った触れ合いイベントの話であり、どの魔物がよかったなどといった話だ。
「やっぱり人気の魔物は、人気になるだけの可愛さがありましたね」
「はい。どの子も可愛くて、本当に幸せでした」
「資金的にも余裕がありますし、本当に二匹目のペットもいいんじゃないですか?」
「そうなんですよね。六王祭の時とは違って、カイトさんに頼らなくても主だった魔物は買えますし、非常に魅力的ではありますね」
たしかに、現在のジークさんは財力もあるのでプチデビのようにコネが無いと手に入らない類の魔物でなければ、問題なく購入することができるだろう。
さすがにベルとかレベルになると厳しそうだが……まぁ、ベルは20億余裕で越えてるし、特殊個体であることを加味すれば購入時の倍以上の価格になってもおかしくないレベルなので、特殊ではあるが……。
「仮に二匹目を飼うとしたら、どんな魔物にするんですか?」
「……それです。そこに一番悩みます。飼いたい魔物が多すぎて、絞るのが難しいですね……ただ、セラが居るので性格的には大人しめの方がいいですね。セラがかなり大人しい子なので」
「確かに、セラは物静かで上品なイメージがありますね。あとちょっとマイペースな感じですかね」
「わりとのんびり屋なところもありますね。最近はベルちゃんの背中の上で昼寝しているのが好きみたいですし……」
セラはほぼ鳴くことは無く非常に落ち着いており、ジークさんの言う通りかなりのんびりマイペースな感じである。
「でも、リンと仲がいいですし、明るい性格の子でも大丈夫なのでは?」
同じ竜種のリンが元気いっぱいの性格なので、割と対照的な感じではあるが、二匹の中はかなりよく普段も姉妹みたいに一緒に行動していることが多いので、性格の相性はいいのだろう。
「確かにリンちゃんと仲が凄くいいですが、アレは性格の相性以上に……たぶんセラとしては、リンちゃんを姉のように思ってるからだと思いますね。同じ竜種で年もリンちゃんの方が上ですし」
「なるほど……」
「まぁ、仮に飼うとしたら竜種以外がいいですね。リリは残念がるかもしれませんが、ここで竜種を飼ったりすると、ベルちゃんが仲間外れみたいで可哀そうですし」
「ああ、確かに……ベルに合わせるなら、魔獣種がいいかもしれませんが……ベルはプライドが高いので、近い種族だとどうなるか分かりませんね」
「ガッチリと上下関係を叩き込みそうな感じではありますね」
ベルはかなりプライドが高く、懐いている相手と懐いていない相手で対応がまったく違うし、そもそも懐いている相手自体が少ない。
俺が言い聞かせておけばちゃんと言うことを聞くが、そうでなければ懐いてない相手のことは基本的に無視である。
ルナさんにはよく唸っているが、アレはなんだかんだで欠片も懐いてない相手と比較すれば好感度は高いのだと思う。ただ、俺を揶揄ったりするので悪者認定している感じだ。
なので、ジークさんの言う通り同じ魔獣型の魔物を飼ったりすると、ガッツリ上下を叩き込む可能性は十分にある。
「そうなると、竜種や魔獣種以外が良さそうですね」
「いっそスライムみたいな特殊種もいいかもしれませんね。スライムも実はけっこう種類が多い魔物なんですよ。まぁ、さすがに竜種ほどではないですが、環境によっていろんなスライムが確認されているので、一部の学会ではスライム種という分類を作るべきとも議論されているみたいです」
「へぇ、どの種類も人懐っこいんですか?」
「基本的にどの種類も大人しく人に危害を加えたりしませんが、一部毒を持っていたりする種類もいるみたいなので、スライム側に攻撃の意図が無くても不用意に触れた人が被害にあうというものはありますね」
スライムもいろいろ居るのか……メタリックなのとかも居たりして? 面白そうだし、機会があればいろんなスライムを見てみたいものである。
そのまま俺たちはどんな魔物だと、現在のペットたちとの相性がいいかなどを話しつつ雑談を続けていき、それなりに時間が経過したところで、果汁酒の瓶が空になった。
一本をふたりで飲んだので、ジークさんもほとんど酔っている感じはなく、俺も例によって全く酔っていない。ただ、一区切りのタイミングとしては丁度よさそうだ。
「区切るには丁度いいですかね?」
「そうですね。あまり飲み過ぎてもアレですし、ここまでにしましょう」
「ジークさん、お風呂先にどうぞ」
「ありがとうございます。それでは……」
俺の言葉に頷いたジークさんは、風呂場の方に移動しようとして……途中で足を止めた。着替えやタオルを忘れたというわけでは無い。そういったものはマジックボックスに入っているだろうし、このランクの宿なら脱衣所にタオルとかが置いてないわけもない。
そう考えていると、ジークさんはこちらを振り返り、おずおずと小さな声で告げた。
「……あの……せっかくですし……一緒に入りませんか?」
シリアス先輩「やべぇ、やべぇよ……明らかにヤバい展開になってきた。こ、こんなことろに居られるか! 私は部屋に戻……」
???「まぁまぁ、落ち着いて、ここからが本番じゃないですか……」
シリアス先輩「HA☆NA☆SE!」




