触れ合いイベント⑦
いちど触れ合いイベントの会場からでて街に向かう。夜の部は別チケットらしいので、ついでに夜の部のチケットも購入しておいた。
なんでも夜の7時から8時まで一旦会場を閉鎖して、昼の部から夜の部に切り替わるらしいので、8時を目安に戻ってくるつもりだ。
食事はなにを食べようかと、クロのまるごと食べ歩きガイドで調べてみる。というか、相変わらずこの食べ歩きガイドは非常に便利である。
ちなみにたびたびクロが更新したバージョンと取り換えてくれるので、最近できたばかりの店とかも普通に載っている充実具合だ。
「ジークさん、なにか食べたいものはありますか?」
「う~ん、せっかくですしこの辺りで有名な料理がいいですね」
「ああ、確かに特産的な料理がいいですね……」
パラパラとページをめくりながら探していると、あるページが目に留まった。クロの評価は星8でかなり高めであり、備考欄には他の街にはなかなかない珍しい料理と書かれていた。
内容を見ると……お好み焼きっぽい感じだ。珍しい異世界の料理と書かれていて、この世界に留まった過去の勇者役が開いた店で、いまは400年の歴史があるとのことだ。
「ジークさん、この店はどうですか? 俺の居た世界のお好み焼きって料理に似たものを食べられるらしいんですが」
「初めて聞く料理ですね。興味があるので、そこにしましょう」
「はい」
お好み焼きに決まり、食べ歩きガイドを見て店の場所に居てみると……なんか想像とは違ってかなり高級店っぽい佇まいだった。
中に入って確認してみると、予約無しでも大丈夫でありすぐに案内してくれた。完全個室の部屋になっており、広めの部屋の中央に鉄板の付いたテーブルがある。
「なんか、思ったより高級な感じですね」
「カイトさんの居た世界では違ったんですか?」
「どちらかというと庶民的な食べ物なんですが……」
「異世界料理は珍しいですからね。この世界では、材料とかの関係もあって高価になりやすいというのもありますね。コメなども比較的高めですし」
「なるほど」
その辺りはある程度仕方ない部分があるか……香織さんも米の仕入れ値は高いとか、手に入りにくい食材があるとか言っていたし、俺にとっては安価なイメージの料理でも高いことはあり得て然るべきだろう。
席に座って少しすると店員が注文を聞きに来てくれた。自分たちで焼くパターンと、焼いたものを持って来てくれるパターンを選べるみたいだったので……焼いて持って来てもらうことにした。
いや……綺麗にひっくりかえせる自信がないし、そもそも俺の知ってるお好み焼きと同じ手順で作るとも限らないので……。
「そういえば、食事を食べたあとも8時までは時間がありますよね」
「食べ終わったら近場で買い物でもしますか?」
「あ、いいですね。時間を潰すには丁度よさそうです。ジークさんは、なにか買いたいものとかはありますか?」
「そう、ですね……服とかですかね。夜は少し冷え込むので上着を持って来ているんですが、どうせなら新しく可能も有りかと」
俺はシロさんの祝福があるので問題ないのだが、確かにアルクレシア帝国は気温が低めの土地柄だ。ジークさんはノースリーブの服装なので、寒そうではある。
「というか、そもそもジークさん寒くないんですか? 季節的には、結構寒めだと思いますけど……」
「ああ、魔力で保護しているので薄着でもあまり寒くは無いですよ」
「あっ、そうなんですね」
「騎士団員の必修魔法のひとつですね。気温の変化でパフォーマンスが低下するのは問題ですし……まぁ、調整できる温度に限界はありますし、肌寒さは感じますが……カイトさんは、シャローヴァナル様の祝福の影響ですよね?」
「ええ、死の大地とかでもまったく問題ない感じですね」
死の大地は氷と雪に閉ざされた場所なので、寒さは相当のはずだがまったく問題ない。熱さに関してもシロさん曰く溶岩で泳ぐことも余裕らしい。この効果だけでも十分すぎるほど凄まじい祝福である。
「さすがシャローヴァナル様の祝福ですね。そういえば、カイトさん。話は変わる……というか、戻るのですが、好きな服とかってありますか?」
「自分で着る場合の話ですかね? だとすると、やっぱりこのパーカー付きの上着ですかね。正直他はともかく、これは着てないと落ち着かない気がします」
ズボンやシャツはいろいろ変えるのだが、このパーカー付きの上着だけは同じものを複数買っていて愛用している。一種のトレードマークのようなものとでもいうべきか、どうもこれじゃないとしっくりこない。
「気持ちは分かります。私もマフラーを巻いてないと落ち着かないので……」
「ちなみに、ジークさんは好きな服とかありますか?」
「そうですね……やはり森で動きやすい服とか、ですかね」
「あっ、やっぱりそこは重要なんですね」
そういえば、六王祭に行く服を買いに行った店でもそんなことを言っていた気がすると、どこか懐かしくて笑みがこぼれた。
そのまま料理が届くまでの時間、ジークさんとの他愛のない会話を楽しんだ。
シリアス先輩「この話の後ろに着く数字は、過去を考えるに最大⑫……少なくともあと五話以内に、夜の☆触れ合い☆イベントが始まってしまうのか……怖い」
???「なんすかその☆……古い上に寒くないですか?」
シリアス先輩「おっと、これ以上精神にダメージを与えるのはやめろよ、泣くぞ?」




