触れ合いイベント⑤
プチデビの列は結構時間がかかったが、プチデビ自体の数もそれなりに用意はしているのは、1時間ほどで順番が回ってきた。
ちなみに触れ合いの時間は15分とのことで、ジークさんと共に指定された番号の柵に移動すると、ファニーラビットの時と同じように一匹のプチデビが居た。
モコモコとした毛に覆われた全体的に丸いシルエット……イメージとしては毛玉に近い気がする。その丸っこい体に、小さな日本の巻き角、大きくつぶらな瞳に悪魔っぽい尻尾……なるほど、これは可愛い。
「デビ?」
「か、かわぃぃ……」
デビって鳴いた。プチデビの名前の由来は、もしかしたら尻尾ではなく鳴き声からかもしれない。ともかく、人気に見合うだけの可愛さのプチデビに、ジークさんは目をキラキラと輝かせながら手を伸ばす。
「デビデビ!」
「おっ、ジークさんの手に乗りましたね。かなり人懐っこい感じですね」
「プチデビは、人に懐きやすく甘えたがりな性格が多いので、ペットとして人気が高いんですよ。はぁ、可愛い」
かなり人懐っこい性格みたいで、伸ばしたジークさんの手の上に嬉しそうに跳ねて飛び乗るプチデビは非常に愛らしかった。
俺も手を伸ばして触ってみると、手触りはフワッフワで、まるで雲……いや、綿菓子を触っているような感触だった。
「デビッ!」
触られたのが嬉しかったのか、細長い尻尾を伸ばして嬉しそうに俺の手に巻き付けてくる。なんというか、仕草がいちいち可愛らしいというか……そりゃ、こんだけ人気になるわけだと納得した。
「これは、人気なのも頷けますね」
「はい。それに、しっかり手入れされているみたいで、毛艶もいいですね」
「あっ、それは分かります。コレだけの手触りは、かなり小まめに手入れしてないと難しいですよね。癖の強い巻き毛ですし、これだけ綺麗に整えているのはブリーダーの腕がいいんでしょうね」
俺もベルの毛並みには気を使っているし、かなりの自信を持っているからこそ分かる。このプチデビの毛艶は、かなり小まめな手入れをしていなければ出せないものだ。
大型のベルと小型のプチデビでは使うブラシなども変わってくるだろうが……シャンプーとかどんなの使ってるのか聞いてみたいものだ。
俺もベルにはかなりいいものを使っているのだが、欲を言えばもう少し毛に柔らかさを出したい。艶や手触りは十分なのだが……なんなら、特注で何種類か新しく専用のシャンプーを作った方がいいかもしれない。今度アリスに相談してみることにしよう。
「カイトさんも、持ってみますか?」
「それではせっかくなので……あ、見た目よりかなり軽いですね。毛が多いからかな? それにやっぱり手触りがいいですね。大事に育ててもらってるんだな~」
「デビデビ」
俺が声をかけると意味を理解しているのかどうかまではわからないが、プチデビは上機嫌で体を揺らす。う~ん、やっぱりかなり可愛いな。こう、なんというか……手に乗せられるサイズの魔物には、他の魔物にはない可愛らしさがあるように思える。
少しの間手に乗せたプチデビを可愛がったあとで、ジークさんに戻す。ジークさんはかなり可愛がっており、ニコニコと楽しそうだ。
「……ジークさん、プチデビを飼ってみてもいいんじゃないですか?」
「魅力的ですが、まず手に入れるのが難しいですからね」
「あ~貴重って言ってましたしね」
「ええ、手に入れるにはかなりのコネが……コネが……えと」
「……あの、俺だけの考えかもしれないんですが……俺がどこかに頼んだら……なんとかなりそうな気がするんですが」
「奇遇ですね。私もそう思ったところです」
確かに普通に手に入れるのは難しいのかもしれないが……うん、たぶんなんとかなると思う。それこそ、クリスさん辺りに頼めば、一匹譲ってくれたりしそうな気もするレベルである。
「……まぁ、もし飼いたくなったら言ってください。知り合いに相談してみるので」
「物凄く魅力的なので……熟考します」
俺としてはジークさんのためなら喜んで協力するつもりなのだが、ジークさん自身は悩み気味である。たぶん俺に迷惑をかけるとか、そんな風に考えているのだと思う。
ただ、チラチラとプチデビに視線が動いていたり、魅力的と口にしていたりするので、もしかすると実際に頼まれる日も近いかもしれない。
まぁ、ジークさんのことだから、他にも飼いたい魔物はいっぱいいて、仮に飼うとしてもどれを飼うかというので悩んでいる可能性もあるが……なんにせよ、大抵のものはどうにかなると思うので、機会があれば協力しよう。
そんなことを考えつつ、俺はジークさんと共に、しばしプチデビとの触れ合いを楽しんだ。
シリアス先輩「なんとかなるだろうね。というか、神域に居る奴に一言言ったら、新しく創造してくれそうですらあるという」




