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触れ合いイベント③



 中型の魔物がいるエリアに着き、少し周囲を見渡しながら歩くと話に出ていたファニーラビットを見つけることができた。

 というか、ファニーラビットはやはり人気みたいで人がそれなりに集まっており、スペースもいい場所を確保している感じだったので、ある種中型エリアの目玉みたいな魔物なのかもしれない。


「結構人がいますね」

「やはりファニーラビットは人気ですからね。人が触っても嫌がったりしないんですよ」

「というか、ぐで~っとしてて、なんか可愛いですね」

「はい。獲物を追う時の俊足とは打って変わって、通常時はあんまり動き回りませんで寝転がってることの多い魔物ですからね」


 ますますフェイトさんみたいなウサギである。しかし確かに、人気があるのも頷けるというか……モフモフの毛の大きなウサギが、だらけた様子で寝転がっているのはなんとも可愛らしい。

 あちこちで寝転がっているファニーラビットを見て和みつつ、触れ合い用のチケットを購入する。どうやら柵内で番号が振られたエリアが分かれているみたいで、俺とジークさんは8番のエリアだった。

 基本的に飼育員が各エリアに最低一匹はファニーラビットがいるように調整しているが、仮にファニーラビットがエリア外に移動してもエリアからは出ないようにと注意を受けて柵の中に入った。

 たぶんファニーラビットが人気なので、好き勝手に移動するのを許してしまうのも問題ということで、エリア分けして混み方を調整しているのだろう。


「カイトさん! さっそくそこに、ファニーラビットがいますよ!」

「あ、じゃあそこに――早いっ!?」


 ジークさんの声を聞いて視線を動かした時には、もうすでにジークさんはファニーラビットの元へ移動していた。そのスピードに苦笑しつつ、俺もファニーラビットに近付く。

 芝生の地面に伏せるファニーラビットはのんびりした様子で、ジークさんが撫でても嫌がったりはせずになすがまま、全てを許すような様子である。

 俺もジークさんの隣にしゃがみ、ファニーラビットにそっと手を伸ばす。ジークさんが胴体を撫でているので俺は頭を角に気を付けつつ撫でる。

 体毛もかなりフカフカとしており、体温が高めなのか温かい。角は結構鋭いが、怪我防止のためかカバーが付けられており危険性はなさそうだ。


「可愛いですね」

「はい! 感動です。これは人気なのも頷けます……手触りもよくて、仕草も愛らしいですし、最高ですね」

「あはは、楽しそうですね。ジークさんが楽しそうで俺も嬉し……うん?」

「おや?」


 楽し気なジークさんの様子に和みつつ、頭を撫でていた手を止めると、ファニーラビットが俺の手に頭を擦り付けるようにしてきた。

 まるで、「もっと撫でろ」と主張しているみたいな感じだったので、再び頭を撫でると、ファニーラビットは目を細めてダラけた姿勢に戻る。


「珍しいですね。ファニーラビットが甘えるような仕草をするなんて……そういえば、リンちゃんの時や以前に旅行に行った時もそうでしたが、カイトさんは動物や魔物に懐かれやすいんでしたね」

「そういえば、シロさんの祝福の影響でって話を聞きましたね」

「私としては凄く羨ましい能力ですね。それにしても、ファニーラビットは可愛いですね」

「のんびりした感じがいいですね。けど走ると凄く早いんですよね。俺もモンスターレースで見ましたが、ぶっちぎりで勝ってましたし」

「獲物を追う時の俊足は有名ですね。まぁ、ここに居るファニーラビットは飼育されている子たちばかりなので、走ることはほぼあり得ないですが……走ってる姿は貴重なので、私は見たことがありませんが」


 たしかに獲物を狩るときにしか本気で走らないと来れば、餌を貰える環境であれば走ることはほぼ無いかもしれない。

 そう考えると、あの時モンスターレースで走ったのは極めて珍しい事態で、かなりの倍率が付いたのも納得である。


「確かに、機敏に動くのもカッコいいですよね。俺もまた走ってるところを見てみたいものです……って、あれ?」


 俺がそう呟いた直後、撫でられていたファニーラビットがのそりと起き上がった。そしてチラリと俺を見たあとで、弾かれるように走り出した。

 そして大きな柵の中を凄まじい速度で一周ぐるっと回って俺たちの前に戻ってきて、再び寝転がった。


「……もしかして、俺たちの話を聞いて走ってくれたんでしょうか?」

「魔物はある程度人の言葉を理解しているみたいなので、あり得ない話ではないですね。普通は、それでも走ってくれたりはしないんですが……」

「なるほど……走るところを見せてくれて、ありがとうな」


 ファニーラビットに声をかけて再び頭を撫でると、ファニーラビットは心地よさそうに目を細めた。ファニーラビットの気遣いのおかげで、いいものが見れてよかった。


「……あの、すみません。もしかして、有名なブリーダーの方ですか?」

「違います」


 まぁ、直後にエリア担当の飼育員の方にそんな風に声をかけられたのには、若干戸惑ったが……。





シリアス先輩「既に成体より強い特殊個体のベヒモスの子供、特殊進化しつつある白竜の子供……いや、これ世間的に知られてないだけで、十分異常なレベルのブリーダーなのでは?」

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です!連続で読みました! ジークさんのイキイキしてる様子が可愛いです! 動物好きにとっては堪らないな そして快人さん他の魔物に対して発揮してブリーダーと間違えられるけど今飼ってる…
[一言] ベルちゃんやリンちゃんが一緒にいると「私に構う時間が減るから、ペット3号はいらない」オーラで威嚇しそうw
[一言] あげてる餌が異常ってだけの普通のペット好きの気のいいあんちゃんですw
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