触れ合いイベント②
アルクレシア帝国での魔物との触れ合いイベント、場所は首都ではなく別の街であり、その街は首都と並び称されるほどにモンスターレースが盛んな都市で、いくつもの有名なレースの舞台にもなる場所とのことだ。
まぁ、今回はモンスターレースを見に来たのではなく魔物との触れ合いイベントだ。そのイベントが行われるのは普段はモンスターレース場として使われている施設であり、大型種などのモンスターがレースできる広さの会場はイベントを行うにも十分な広さがある。
「結構賑わってますね」
「それなりに有名なイベントなんですよ。魔物を飼いたいと思う人の中には、まずこのイベントに来て実際に魔物に触れてみるというような人もいるぐらいですね。本当に楽しみです!」
「あはは、ジークさんは動物好きですからね」
「はい! 六王祭も素晴らしかったですが、今回はペットとして人気のある魔物がメインなので楽しみです。ファニーラビットとかもみたいですね」
「ファニーラビットっていうと、獲物を狩る時にだけ本気で走るウサギ型の魔物でしたっけ?」
楽し気にジークさんが口にした魔物には聞き覚えがあった。アリスと行ったモンスターレースで、俺が賭けたウサギ型の魔物で、100年に一度の本気とかフェイトさんみたいだと思った魔物だったはず。
そういえば、ベルを連れ帰った時もジークさんが「ファニーラビットとかも飼いたい」とか口にしていた気がする。
「ファニーラビットはかなり人気の魔物ですね。見た目が大型のウサギというのも要因ですが、のんびりとした性格が多くて大人しいので、室内で飼うのにも適している魔物です」
「ふむふむ」
たしかに言われてみれば、ファニーラビットは角がある以外はほぼウサギという見た目で、大きさは1mぐらい。獲物を狩る以外の時には本気で走らないのんびり屋な性格で、ジークさんの口ぶりだと人懐っこさもあるのだろう。
そう考えると、人気があるのも必然といえる。
「他にもペットとして代表的な魔物は居るんですか?」
「いろいろ居ますが、人気なのは室内で飼える小型種。あるいは逆に騎乗できる大型種ですね。馬型の魔物なんかも、普通の馬と同じように飼育したり乗馬したりできる上、普通の馬より強靭で足も速いので、特に騎士や冒険者に人気ですね」
「その辺はモンスターレースとかでも強そうですね。ベルもいちおう大型種ってことになるんですかね?」
「ベルちゃんもそうですね。ベヒモスは分類は大型種ですが、サイズ的には100mを越えることもあるので、超大型種でもいい気がしますが……」
ジークさんからいろいろと説明を受けつつ、列に並んで入場チケットを購入してモンスターレース場に入る。相当の広さのレース場の中には、あちこちに仮設の柵や建物があり、パッと見ただけでもかなりの種類の魔物が見えた。
見たところ、種類ごとにある程度分けられているような感じだ。楽しみ方としては、動物園のように見るだけなら入場チケットのみでOKだが、触れ合うにはそれぞれのエリアで専用のチケットを購入する必要がある。自由に誰でも触れてしまうと、魔物たちにもストレスだろうし触れ合える人数は制限されているのだろう。
となると、触れ合いチケットにも枚数制限がありそうなので、触れ合いたい魔物のところには早めに行く必要がある。
「ふわぁ、さすが大規模なイベントだけありますね! いろいろな魔物が居ますし、私でも見たことが無いような珍しい種類も……カイトさん! さっそく見て回りましょう、どこからがいいですかね?」
「あはは、楽しそうですね。えっと、まずはジークさんが見たい魔物のところに行きましょう。触れ合いチケットに制限もあるでしょうし……いちおうパンフレットを見る限り、サイズごとにエリアが分かれているみたいですが……」
「な、悩みますね……小型種も捨てがたいですし、大型種も……でもここは、動物型の多い中型種のエリアに行きましょう」
かなりはしゃいでいる様子のジークさんを微笑ましく思いつつ、最初はジークさんの行きたい場所に行くことにした。
ジークさんが選んだのは中型種のエリア……。
「中型種って、5m以上10m未満でしたっけ?」
「ああ、いえ、それは竜種の分類ですね。一般の魔物は1m未満を小型種、1m以上5m未満を中型種、5m以上を大型種と呼びます。超大型種に関しては竜種と同じで100m以上ですが……竜種はそもそも全体的にサイズが大きいので、他とは違う分類なんですよ」
「へぇ、そうなんですね」
なるほど、言われてみれば魔物の中にはスライムのような手のひらサイズのものも居るわけだし、竜種とは違って当然かもしれない。
少なくとも俺が過去に見た竜種で1m以下の大きさだったのは居ない。まだ子供のリンや、卵から生まれたばかりのセラでも1m以上はある。
「最初はジークさんが言っていたファニーラビットを探してみますか?」
「いいですね! ファニーラビットは可愛いですし、気もフカフカ……とのことなので、触ってみたいですね。シンフォニア王国近辺にはあまり生息していない魔物なので、触ったことは無いんですよ」
そう言って嬉しそうに笑いながら俺の手を引くジークさんを見て、俺も思わず笑みを溢しながら一緒に移動を開始した。なんとなく、今日は楽しく過ごせそうだと、そんな予感を覚えながら……。
シリアス先輩「すぅ……デート感強まってきたな、私は新年だし実家に帰る」
???「ここが実家っすよ」
シリアス先輩「………………扉の前から退け」
???「この扉を通りたければ、私を倒してからにするんすね」
シリアス先輩「無理ゲーやめろ……」




