至高と幻の決戦⑥
あけましておめでとうございます。今年も作品ともどもよろしくお願いします。
突然の特別審査員も終わり、観客席に戻ってきた。これから表彰式ということで、優勝したベアトリーチェさんを含め、ベスト8までに入った選手にも副賞が出るとのことで、ルナさんも会場に向かった。
「これで、表彰式をして終わりなんか?」
「ああ、いえ、これから打ち上げがありますよ」
「打ち上げ?」
「ベスト8に残った上位のメイドたちが、料理や菓子類を作って、それを自由に食べることができるんですよ。上位陣の実力のお披露目的な要素が強いですね」
「ほーん、それは結構楽しそうやな」
なるほど、そんなイベントが残っているのか……ルナさんもベスト8メンバーなので、料理や菓子を作る側。これは俺やリリアさんも、打ち上げが終わるまでは帰れないな。
まぁ、俺はさっき審査の席で料理を2人前食べたばかりでお腹は一杯だ。打ち上げではお菓子を少し食べるだけにすることにしよう。
「カイトさん、お疲れさまでした」
「あはは、最後になんか変なことになりましたけど……とりあえずはこれで、メイドオリンピアもひと段落ですね。最後はアレでしたけど、結構楽しめましたね」
「ええ、競技としてはかなり考えられていましたし、見ていて楽しくはありました……まぁ、正直に言って、再び来るのは遠慮したいところですが……」
「分かります。場違い感が酷いんですよね」
実際メイドオリンピアはなんだかんだで楽しかった。最後に特別審査員をさせられたのはアレだったが、それ以外はなんだかんだツッコミを入れつつも楽しめた。
ただ、やはり周りは全部メイドだらけという空間かつ、謎のメイド論が頻繁に展開されてついていけない場面も多かったので、再び来るのは遠慮したいところではある。
「…‥でも、ルナさんベスト8ですよね? 次も予選免除ですよね?」
「……次は、断ります」
「う~ん。失礼な言い方ですけど、正直リリアさんが断り切れる未来が見えないんですが……」
「奇遇ですね。私もなんだかんだで丸め込まれる気がします……その場合は、カイトさんも巻き込むので覚悟しておいてくださいね」
「えぇぇぇ……」
「ふふふ」
いたずらっぽく笑うリリアさん。リリアさんのいまの言葉は冗談だろうが、実際のところどうだろうか? 次のメイドオリンピア……ルナさんの応援に参加しなかった場合、今回依頼されたように特別審査員を頼まれてしまう可能性が高い。
俺が毅然とした態度で断れればいいのだが……どうも、頼み込まれてしまうと弱いというか、俺もなんだかんだで流されてしまいそうな気はする。
そうなると、むしろ応援として参加した方が安全なのではないかとすら思えてくる。
「茜さんも打ち上げに参加するんですか? 俺たちはルナさんと一緒に帰るので、必然的に最後までいることになりそうですけど……」
「ん~ウチとしては帰ってもええんやけど、フラウは参加したいやろうし、ただ飯食えるんやから少しはおろうかな。ただ最後まではおらんと、途中で抜けて帰るつもりや」
「え~最後までいないんですか、会長。熱いメイド議論とかに参加しましょうよ」
「そんなもんにウチを巻き込んだら、お前置いて帰るからな」
「置いて行かれた場合の転送費用は経費には?」
「含まれるわけないやろうが!」
「……残念」
フラウさんは転移魔法は使えないみたいで、茜さんの転移魔法で戻ることになる関係上、どうしても茜さんが帰るタイミングで帰ることになりそうだ。
ただ残るという選択肢はないようだ。その気持ちは分かる。かなりの観客数だし、転送ゲートは絶対に込み合って時間がかかる。特に魔界から人界への転移は、かなり転移魔法が得意か高価な転移魔法具が必要になる。
俺とリリアさん、ルナさんは俺の転移魔法具で帰るので問題ない。なんなら、リリアさんも六王祭の記念品で当時の最新式転移魔法具を貰っているので、それを使って帰ることも可能だ。
「そういえば、幻のメイドはいつの間にか消えておりましたね。謎の多い存在でした」
アリスはエキシビジョンマッチが終わるとすぐに姿を消した。まぁ、いまも俺の背後にはいるのだが、メイドたちにとっては謎めいた存在という印象なのだろう。
……まぁ、とりあえずはメイドオリンピアの締めくくりとして、打ち上げを楽しむとするかな。
シリアス先輩「とりあえずこれでメイドオリンピア編は終わりかな?」
???「そうっすね。シリアスが続きましたし、次は甘い話ですかね?」
シリアス先輩「……やめてくれない? 甘い話のことじゃなくて、このメイド大戦をシリアスにカウントすること……」




