メイドオリンピア本戦⑩
今回は執筆の時間が無くて少しだけ短めです。
メイドオリンピアの決勝戦である紅茶勝負において、紅茶の天使とやらは見えないもののとりあえずベアトリーチェさんが凄いことをしているというのは、会場の雰囲気や対戦相手であるアレキサンドラさんの表情を見れば伝わってきた。
そうなってくると、ある意味では当然の帰結と言えるかもしれないが……。
『決まりました。審査員五人満場一致……第231回メイドオリンピアの優勝者は、ベアトリーチェ選手に決定しました!』
そう、ベアトリーチェさんが勝利し、今回のメイドオリンピアの覇者となった。
『決勝戦の戦いを振り返って、いかがでしたか、アイン会長?』
『そうですね。やはり、ベアトリーチェが見せた可能性が大きく印象に残りましたね。会場に居る他のメイドたちも、改めて理解したことでしょう。スーパーメイドとは決してゴールではなく、まだまだ道の半ばであると……果てなきメイド道に終わりはなく、常に躍進していければなりません。ですが、メイドとして完成してくるほどに、いまの己を変えるべく大きく踏み出すという行為が行い難くなるものです。今回ベアトリーチェが踏み出した一歩は、彼女だけではなくメイド界にとっても大きな一歩となることでしょう』
ま、まぁ、要約するとスーパーメイドとしてメイド界でもトップクラスの位置に居たからこそ、スーパーメイドたちも成長が停滞気味だった。
以前イルネスさんに求めていたように、アインさん的には停滞気味のメイド界に新しい風が欲しいと考えており、今回のベアトリーチェさんの行動は、その新たな風になり得るものだったと……たぶんそんな感じである。
なんか、今日一日でメイドに対する理解が深まってしまった自分が、すごく嫌だ。
なんとも表現し辛い感情が胸に渦巻く中、会場ではベアトリーチェさんにアレキサンドラさんが近づき、握手を求めるように手を出しだしていた。
「……ベアトリーチェさん、見事でした。貴女の姿を見て、私もいつの間にか忘れてしまっていたもっと上に、更に上にという、若かりし頃の熱い向上心を思い出すことができました。今回は素直に敗北を認めますが、次は逆の結果になると、そう思っておいてください」
「ふっ、ええ、切磋琢磨できる好敵手が居るというのは幸せなことです。無論私も負けるつもりはありません。4年後までに更なる成長をしてみせますよ」
熱い戦いを繰り広げたライバル同士の会話と言っていい光景であり、感動的な雰囲気なんだと思う。実際、フラウさんやルナさんも目を潤ませているので……まぁ、それにしても俺とリリアさんと茜さんとの温度差は酷いが……。
まぁ、ともあれこれでメイドオリンピアも終了かとそう思っていると、続けてアレキサンドラさんがベアトリーチェさんに告げた。
「……メイドリックオーラの量は大丈夫ですか? この後に控えている戦いは、万全であっても厳しいものですよ」
「問題ありません。少し休めば全快します。せっかく挑戦権を得たのですから、無様は見せませんよ」
「ふふ、それでは楽しみにしています。ご武運を……」
そう言ってアレキサンドラさんはベアトリーチェさんから離れ、その直後に実況が高らかに告げる。
『それでは、ただいまより30分の休憩とさせていただきます。そして30分後に、恒例のエキシビジョンマッチ……優勝者による、メイド界の頂点……アイン会長への挑戦を行います!!』
なんと、どうやらこれで終わりではないみたいで、優勝したベアトリーチェさんはアインさんに挑戦する権利を得たらしい。
メイド界の絶対王者ともいえるアインさんに、今回大きく成長した優勝者が挑む……なるほど、これは盛り上がる展開だ。
……まぁ、それでも……メイド関連で正直、アインさんに勝てる未来が思い浮かばないのだが……。
【ベアトリーチェ】 メイド力120000⇒135000
ネピュラとの出会いと決勝戦での挑戦により、躍進してメイド力を上げた。あくまで決勝戦での上昇した結果の数値であり、今回壁を破ったので今後も大きく成長すると思われる。
【アイン】 メイド力530000(平常時)
メイド界における絶対的な頂点。メイド力は53万と言われているが、それはあくまで臨戦状態ですらない平常時の話であり、全力ではない。メイドとして常に本気ではあるが、その強大すぎる力故に全力を出したことはアリスとの戦いぐらいである。全力の際のメイド力は億を超えるのではないかとも噂される絶対強者。




