メイドオリンピア本戦⑤
メイドオリンピアの本戦トーナメントは進行していく。間もなく2回戦のフラウさんは当然だが、2回戦を終えているルナさんもすぐに準々決勝が始まるため会場に向かったので、観客席では俺とリリアさんと茜さんの三人で観戦していた。
「……リリアさんと茜さんも、ポテトよかったらどうぞ」
「ありがとうございます。こういう販売もしているんですね」
「なんや、野球観戦みたいやな」
茜さんの言う通り野球やサッカーのように、観客席を回っている移動販売のようなものがあり、先ほどフライドポテトと飲み物を購入した。
マジックボックスがあるので、フライドポテトとかも出来たてを提供してもらえるのはありがたい。
そう思っていると、ポテトを上品に食べながらリリアさんがなんとも言えない表情で呟いた。
「……しかし、なんというか……もちろん、メイドとかに関することではわからないことも多いのですが……観戦する分には……面白いんですよね」
「あっ、それ俺も思いました。そうなんですよね……結構面白いんですよ」
リリアさんの言う通り、正直なんだかんだでメイドオリンピアは観戦している分には楽しいのだ。対戦内容もいろいろと趣向を凝らしているし、実況や解説が存在するので状況も分かりやすい。
メイド関連で不明な単語とかは存在するものの……TVの料理対決とかを見ている感じで、1対1で技量などを競い合うというのは結構見ごたえがあるのだ。
「いや、実際面白いと思うわ。一個前のテーブルのセッティング勝負もよう考えられてたな。席に座る客の情報を見て適したセッティングをするってやつ」
「ああ、確かに面白かったですね。3つの種族が同時にテーブルにつく設定で、結構個性が出てましたね」
茜さんの言葉通り、勝負方法もいろいろと面白く、茜さんの言うセッティング勝負に関しても身長差が数mある種族が同じテーブルで食事という課題だったので、どうバランスを取るかなどで個性がでており完成形も両者でかなり違っていた。
それを審査員が審査して得点の高い方が勝利だったが、アインさんが細かく解説とかを入れてくれたので分かりやすくて面白かった。
「まぁ、ウチとしてはリリアさんが気さくな方で、肩ひじ張らんで観戦できてるってのも大きいわ」
リリアさんは基本的に公爵という立場の割に穏やかで話しやすい。元騎士団員ということもあって、庶民と感覚がズレているというような場面も少なく、いまも普通にフライドポテトをシェアしつつ観戦しているので、かなり親しみやすい方だ。茜さんも最初こそ緊張していたが、いまとなってはすっかり打ち解けているみたいだった。
「……そういえば、話は変わりますけど、もうすぐフラウさんの対戦ですね」
「ん~けど、勝ち目あるんやろか? もちろんウチとしてはフラウを応援しとるけど、相手はスーパーメイドなんやろ?」
「スタミナが凄いとかって話ですね」
「対戦方法によっては可能性があるかもしれませんが、何度も優勝経験がある方みたいなので、様々な分野にも精通しているでしょうし……厳しい戦いになりそうですね」
まもなく2回戦の最終試合となり、そこでフラウさんが体のスーパーメイドと戦うことになる。ただ茜さんやリリアさんもそうだが、俺の予想としても厳しい戦いになりそうな気がした。
2回戦に置いてここまでスーパーメイドたちの戦いは三度あり、カミリアさんは実質不戦勝だったが、他のふたりも圧倒的な強さで勝利しており、まだまだ余裕がある印象だった。
以前にアインさんがイルネスさんと初めて会った際に、いまは少しマンネリ気味なのでメイド界に新しい風……五人目のスーパーメイドが生まれて欲しいというようなことを口にしていた覚えがある。
そこから察するに、スーパーメイドたちはそれこそスーパーメイド同士の戦い以外では、ほぼ相手にならないレベルで強く、優勝争いは四人に絞られているような感じではないかと思う。
実際ベアトリーチェさんとアレキサンドラさんの戦いは、まさに圧勝と言っていい形だった。
「まぁ、とりあえず、深くは考えずフラウさんを応援しますか」
「そうですね。可能性が低くても、勝つ可能性がゼロではないでしょうしね」
「せやな……あっ、快人、もうひとつくれ」
最初はどうなることかと思ったが、俺たちはなんだかんだでメイドオリンピアを楽しんでいた。
シリアス先輩「ま、まぁ、確かに……メイドという概念が異常であるという点を除けば、見ていて楽しい可能性も……」




