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メイドの挑戦⑥



 メイドたちの祭典メイドオリンピアを、何の因果かリリアさんと共に観戦することになった俺は、参加者であるルナさんと共に魔界の南部にある開催地へとやってきていた。

 たどり着いてみると立派な競技場があり、周囲には出店なんかもでているちょっとしたお祭り状態であり、毎回場所が違うと言いつつこの規模で開催できるのは素直に凄いとそう思った。

 ただ、なんか店の系列が変である。普通のお祭りの出店とは、こう、雰囲気がまったく……。


「あっ、見て、このヘッドセット新作じゃない?」

「いいデザインね。私もそろそろワンランク上のヘッドセットが欲しいと思ってたのよ」

「いっそ、ブランドに手を出しちゃう?」

「さすがに、ブランド物のヘッドセットを身につけるほどメイド力に自信がないし……」


 とある出店の前で会話していたふたりの女性のやり取りが聞こえてきたが、なんというか……そう、右を見ても左を見てもメイドばかりである。

 買い物しているのもメイドなら、出店しているのもメイド……どこを見てもエプロンドレスの人ばかりで、俺とリリアさんの格好が異様に浮いているという状態になってしまっている。


「……リリアさん、とんでもないところに来ちゃいましたね」

「ええ……なんですか、この空間。異世界にでも迷い込んだみたいです」

「おふたりとも、あちらが有名なメイド焼きの屋台なので、休憩時間などに買うのをお勧めします」


 全方位メイドという圧に、完全に気圧されながら俺とリリアさんが歩いていると、ひとりテンションが高いルナさんがアレコレ出店の紹介をしてくれるが、正直頭に入ってこない。

 メイド焼きだとか、オーダーメイドのエプロンドレス出張販売所とか、ともかくどの店もメイド用の店ばかりで、リリアさんの言う通り異世界に迷い込んだかのような感覚である。


「それにしても、ジークにアオイ様にヒナ様は残念でしたね。まぁ、里帰りと仕事では仕方ないですが……」

「……カイトさん、ジークの里帰りって取って付けたように言ってませんでした?」

「葵ちゃんと陽菜ちゃんも、後から冒険者の仕事を思いだしたみたいなこと言ってましたね」


 そう、つまるところジークさんと葵ちゃんと陽菜ちゃんの三人は、上手く逃げたのである。俺やリリアさんの時とは違って、後から誘われたので断りやすかったのだろう。


「……本音を言えば俺も逃げたかったですが、リリアさんをひとりで行かせるわけにも行きませんしたし……」

「カイトさん……ありがとうございます。諦めて、もう、こういう世界だと思っていきましょう」

「はい」


 リリアさんと小声で話し合って、意気揚々と前を歩くルナさんについていく。しっかし、本当に右を見ても左を見てもメイドばかりで場違い感が凄い。

 なんかこう、メイド以外が居たらすぐに分かりそうなぐらいで……。


「「……あっ」」


 少し離れた場所に知り合いを見つけたのと同時に、向こうもこちらに気付いたのか地獄で仏を見たような顔で駆け寄ってきた。


「よ、よかった! まともな奴がおった。快人、お前ホンマにええところに……やっぱモテる男はちゃうな! ホンマに、不安で不安でしかたなかったんや……知り合いがおって、めっちゃ救われたわ」

「茜さん、偶然ですね……なんだって、こんな魔境に……」

「来とうなかったよ! フラウに無理やり連れてこられたんや、ほんでアイツはアイツで限定品がどうとか言って、買い物に行ってまうし……この空間にポツンと取り残された恐怖が分かるか?」

「……それはまた、ご愁傷さまです」


 遭遇したのは、まさかの茜さんだった。そういえば、フラウさんもメイド界にどっぷり浸かった人間だった。


「おん? 快人この人は? またどっかの凄い大物か?」

「ああ、いえ、特にそんな大物とかでは……」

「あっ、そうなんや……まぁ、そうよな。そんな六王様とかばっかりしか知り合いがおらんわけでもないやろうしな」


 俺の言葉にどこかホッとしたような表情を浮かべた茜さんに、リリアさんが一歩近づいて挨拶をする。


「初めまして、私はリリア・アルベルトと申します」

「……アルベルト?」

「はい。アルベルト公爵家の当主を務めております」

「あ、あ~そうですか……ウチは三雲商会の会長で、三雲茜って言います。お会いできて光栄です……ほんで、快人、ちょっとこい……」


 リリアさんに挨拶を返したあとで、茜さんがグイっと俺の服をひっぱり俺を少ししゃがませると、俺の胸に鋭いツッコミを入れてきた。


「大物やないかっ!?」


 ……言われてみればたしかに、リリアさんは公爵家の当主……貴族としても王族を除けば最高位であり、大物であるのは間違いない。

 つい、こう、大物感がないのでうっかりしていた……。


「……なぜ、お嬢様もキョトンとした顔をしているのですか?」

「いえ、そう言われてみれば、私って結構大物ですよね? 偉いですよね?」

「そうですね。公爵ですしね」

「……カイトさんの知り合いと会って、私の方が立場が上という機会が少なすぎて、自分でも忘れてました」


 言われてみれば、俺を通じてリリアさんが知り合った相手で、ガチでリリアさんの方が立場が上となると……アハトやエヴァぐらいじゃないだろうか? その時でさえノインさんが居たし……。




シリアス先輩「まぁ、快人はおろか本人すらそう言えばそうだったみたいな反応で、いままでのリリアの苦労が伺える」

???「いちおう、実際に比べてみれば権力とかはリリアさんの方が強そうな相手も居ましたが、なんとなく格上ばかりと会ってるイメージですね」

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― 新着の感想 ―
[良い点] シンフォニア王国でも一、二位を争うというか、下手したら一位というか、人界でトップの実力者というか・・・あ、あれぇ?
[一言] 更新お疲れ様です!全方位メイドさんというのが凄いな 1人で入るのが勇気いるなw リリアさんも偉い方の筈だけど快人さんにお会いする方々が格上すぎるから自分でも忘れていた汗) 次も楽しみに待…
[気になる点] ふっと、思い出したのですがメギドさんは、様々な力を極めて戦いを楽しみますが、メイド力は、極めないのですか?そして出場しないのですか? もしや、もう既に出場経験有り!?
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