メイドの挑戦②
ルナさんに案内されてたどり着いた部屋にはリリアさんともうひとり、茶色の髪を結い上げヘッドセットで綺麗に止めたメイド服の女性が居た。
なんと言うか全体的にキチッとした雰囲気であり、見るからにメイド長という雰囲気で仕事のできる女性という感じが凄い。
「初めまして、ミヤマカイト様。王城にてメイド長を任されております。ベアトリーチェと申します」
「宮間快人です。よろしくお願いします」
お辞儀の角度もすごく綺麗であり、やはりメイドとしての技量は相当高そうではあるが……疑問なのは、アインさんやルナさんもそうだが、この世界のメイドは基本的にいつもメイド服なのだろうか? まぁ、ルナさんに関しては、完全なプライベートでは私服を着ているが……。
「えっと、ネピュラに会いたいとお伺いしましたが?」
「ええ、可能であればお願いしたいと思います。あのイルネス先生が賞賛するほどのメイドとなれば、ぜひ一度お会いしてみたいのです」
「……いや、ネピュラはメイドじゃないですよ?」
「大丈夫です。実際の職業がどうであれ、メイドとしてのスピリットを宿していればすべてメイドです」
……なに言ってんだこの人? ヤバいな、アインさんと同類っぽいぞ。あとたぶん、メイドとしてのスピリットとやらも無いと思うんだけどなぁ。
可愛いネピュラを、一部を除いてバケモノ揃いのメイドと一緒にしないで欲しいという気持ちが強い。
「先ほど久し振りにイルネス先生にお会いして驚きました。ただでさえ凄まじかったイルネス先生のメイド力が更に大きく上がっていました。その大きさは私程度のメイドでは推し量ることはできませんでしたが、明らかに王城に居た時よりもメイドとしての格が上がっていました」
「……な、なるほど?」
「その要因が、そのネピュラ様ではないかと思いまして、是非一度お会いしたいと考えたわけです。そして、是非、イルネス先生が賞賛するほどのメイドとしての能力を確認させていただきたいと思います」
若干気圧されつつ視線をリリアさんの方に向けると、リリアさんは同情したような様子で首を横に振った。たぶん説得は無理とか、そんな感じのジェスチャーだろう。というか、だから、ネピュラはメイドじゃないんだけど……。
ちなみにルナさんは、なんか意味深に頷いていた。まぁ、あの方もメイド界に属する人なので、納得できる理由だったんだろう。
メイド界と関係ない俺としては、何を言ってるんだこの人? 以外の感想は出てこないが……。
「う、う~ん、気持ちは分かりましたが、ネピュラが嫌がるかもしれませんので本人に確認をしてみてからで……」
「畏まりました。無理を言っているのは承知しておりますので、こちらで待たせていただきます」
「はい。じゃあ、ちょっとネピュラに確認してきますね」
俺個人としては、あんまりネピュラに会わせたくないという気持ちもあるのだが、それを俺がかってに決めるわけにもいかない。
まずはネピュラ本人にしっかり確認を取ってみなければ……そう考えて、一度リリアさんの部屋から出て、庭の世界樹の下に移動してネピュラに声をかける。
「ネピュラ、ちっといいかな?」
「はい? どうしました、主様?」
「実は、ネピュラにお客さんが来てるんだけど……」
「妾にですか?」
俺が呼ぶとすぐに姿を現してくれて、不思議そうに首を傾げているネピュラにことの経緯を説明していく。特にメイド云々に関しては、注意も含めてしっかり伝えた。
俺の話を聞き終えたネピュラは、納得した様子で頷いて口を開く。
「……なるほど、お話は分かりました。かまいませんよ」
「えっと、いいの?」
「はい! 妾は絶対者です。訪ねてきた相手を追い返すような真似はしません」
「……な、なるほど」
ネピュラは優しくて懐の広い子なので、突然の来訪かつメイドとしての能力を確かめたいとか意味不明な理由であっても、快く受け入れてしまった。
なんとも複雑な気持ちではあるが、本人が会うと言っている以上、文句も言えない。
「分かった。けど、やっぱり心配だし、俺も同席するから」
「はい。では、一緒に参りましょう、主様」
ネピュラはしっかりしているし大丈夫だとは思うけど、心配なので俺も同席はすることにした。ベアトリーチェさんの性格はまだよくわからないが、仮にアインさんみたいに熱くなって暴走することがあるのなら注意しなければならない。
まぁ……とはいえ、アインさんでも暴走は稀だ。少なくともエデンさんと比べれば天と地ほどの差があるので、基本的には大丈夫だと思う。
心配なのは、アインさんがアリスに持ちかけていたように、メイド対決みたいな話に発展しないかという部分だ。
まぁ、いざ対決することになっても、ネピュラが負けるとは思えないけど……。
シリアス先輩「というか、絶対者相手じゃ勝ち目ねぇだろ」
???「その手の勝負して、わた……アリスちゃんやアインさんでも果たして勝てるかどうかってレベルですしね」




