星空のキャンプ⑨
あまり時間が無くて、少し今回は短めです。申し訳ない。
のんびりと星空の下でスープを飲んで休憩したあとは、草の生えていない場所で花火を行うことになった。といっても、派手な打ち上げ花火とかではなく手持ち花火である。
この日に備えていくつか買ってきておいたし、水の入ったバケツもちゃんと用意している。
「確か、アイシスさんは線香花火が好きでしたよね?」
「……うん……これ……好き」
「俺もこういう時は派手な花火より、線香花火が綺麗で好きですね」
以前六王祭の前日にクロたちと一緒に花火をした覚えがある。その時に、アイシスさんは線香花火が好きだと言っていた。
たしかに、なんだろう線香花火を持っているアイシスさんは凄く絵になるというか、今日は浴衣じゃなくて普通の服装ではあるがそれでも凄く幻想的で綺麗だと感じた。
「……そういえば……花火は……異世界から伝わった」
「あっ、やっぱそうなんですね。この世界特有の名前じゃなくて、俺たちの居た世界と同じ名前だったので、もしかしたらと思ってましたが……」
まぁ、勇者役から伝わった名前に後から変更したという例も多いので、名前だけで一概に伝わったものとは判断できない。
食材なんかの名前は勇者役から伝わった名前に変更しているものが多い。主に、異世界から招待する勇者役が食材などで混乱したり不安に感じたりしないように、出来るだけそうしているらしい。
ただ一部リプルなどに関しては、リプルタウンという有名な街の名前になっていたりなど、変えると問題があるものはそのままの名前だったりするらしい。
「……うん……850年ぐらい前の勇者役が……花火を作る家業だったみたいで……そこから一気にひろまった」
「へぇ、けどそうなると……むしろ俺の世界よりも歴史が古いぐらいかもしれませんし、なんだかおもしろいですね」
花火の始まりがいつ頃かは知らないが、850年前となると相当の歴史がある。この世界と地球では時間の流れが違うので、こういった地球から伝わったにもかかわらず、歴史の深さが逆転しているというのも面白いものだ。
そんなことを考えながら、アイシスさんとのんびりと花火を楽しんだ。
花火が終わった後は、これ以上特にやることも無かったので眠ることになった。テントは結構広く、簡易ベッドもちゃんとふたつある。
最初はテント自体も別々にしようと思っていたのだが、アイシスさんの希望もあって同じテントに泊まることになった。
「……ねぇ……カイト」
「はい?」
「……一緒のベッドで寝ても……いい?」
そ、そうくるかぁ……いや、正直考えていなかったわけでは無い。前にアイシスさんの城に泊まった時も、六王祭の時もなんだかんだで一緒に寝ることになった。
だから、今回もそうなるのではないかという気持ちは多少あったので……実は、交換用のダブルサイズの簡易ベッドも用意してきていたりする。
それでも一瞬戸惑ってしまったが……最終的に、アイシスさんの願いを俺が断ることも出来るわけもない。なので、少し考えたあとで苦笑しつつ頷く。
「……実は、そう来るかと思って大き目のベッドも買ってきてたんです。交換しますね」
「……そうなんだ……さすが……カイト」
「まぁ、それでも少し小さめかもしれませんけどね」
「……大丈夫……カイトと一緒で……嬉しい」
そう言ってにっこりと笑うアイシスさんに俺も笑い返したあとで、いまある簡易ベッドをしまってダブルサイズのベッドを用意した。
シリアス先輩「あああああ、やめてぇぇぇ、お願い! 逃げさせて!! 次はヤバいから、絶対ヤバいから!!」
???「いきなり蘇ったと思ったらなに騒いでるんすか、ははは」
シリアス先輩「はははじゃねぇよ! 離せ、なんでそんな軽く手を置いてるだけでピクリとも動けないんだ!? どんな力してんのお前!?」




