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万花の園⑩



 絵も描き終わり、アトリエから地上の家に戻って、再びロズミエルさんが淹れてくれたローズティーを飲みながら雑談をしていると、ふとあることを思い出した。


「そういえば、ロズミエルさんはハーモニックシンフォニーではミュージカルをしてましたよね?」

「うん」

「歌もすごく上手かったですし、やっぱり音楽も得意なんですか?」

「得意かどうかは分からないけど、精霊にとって歌は自然との調和だからね。精霊は大体歌うことが好きだよ」


 そういえばそんな話を聞いたことがある。実際ハーモニックシンフォニーという大規模な音楽祭を行うぐらい、精霊族にとって音楽は関わりが深いものなのだろう。

 リリウッドさんも抜群に歌が上手いし、他の七姫の方々も皆すごかった。


「楽器とかも演奏したりするんですか?」

「私は楽器はそんなに、バイオリンを少しできるぐらいかな」

「へぇ……ロズミエルさんも、日ごろ歌ったりとかするんですか?」

「うん。花畑とかで、よく歌ってるね」


 それはまたなんとも絵になりそうだ。万花の園の花畑の中で歌を……あれ?


「結構びっしりとした花畑ですけど、歌える場所もあるんですか?」

「うん。結構広いから、開けてる場所もあるよ。よかったら行ってみる?」

「そうですね。まだ万花の園の花畑は、入り口からここまでしか見てませんし、興味がありますね。ここって結構広いんですか?」

「小さな町ぐらいはあると思う」


 じゃあ、相当広いな。村じゃなくて町と言ってるあたりから考えて、本当にここまで見てきた花畑はごくごく一部なのだろう。

 たぶんここにある花の数は万ではとても足りないほどだろう。種類が万ってことかもしれない。


 椅子から立ち上がってロズミエルさんと共に家の外に出ながら話しかける。


「けど、そんなに広いと管理も大変じゃないですか?」

「そんなことないよ。魔法使えばすぐだし、精霊である私には花の状態とかがよく分かるから、それぞれどんなふうに世話をしてあげればいいか、必要としているものはなにかもわかるからね」

「なるほど」

「水やりとかも、この空間は私がコントロールできるから、指定の場所に雨を降らしたり、一部だけ温度を調整したりとかもできるからね」


 言われてみれば、ロズミエルさんは六王幹部であり、魔界でもトップクラスの実力者だ。大抵のことは出来てしまっても不思議ではない。

 そういえばアリスも、伯爵級最上位レベルになると俺や人間とかの基準で言えば全能みたいに感じられるレベルって言ってた気がする。


「そういえば、前にカイトくんに貰った神域の花を植えてる場所もあるから、そこにもいってみる?」

「あっ、いいですね。是非見てみたいです」

「……あと、その……カイトくんさえ迷惑じゃなければなんだけど、また神域の花畑について話を聞かせてもらえたら嬉しいなぁ。白神祭の時は、ゆっくりと聞けなかったからね」

「もちろんいいですよ。あの後で、もう少しいろいろ注意して見てみたんですよ。それに新しい花も最近増えたみたいです」

「え? そうなの、聞きたいな」


 白神祭の際にも相当質問されたが、それでもロズミエルさん的にはまだ足りてなかったみたいで、神域の花畑の話をせがんできた。

 もちろん断る理由などないし、あの時にロズミエルさんにいろいろ聞かれたおかげで、その後にシロさんの下へ行った際にいろいろ前より注目して見てみたので、以前よりは答えられる範囲も広がったと思う。


 俺の話を聞いて楽し気に相槌を打つロズミエルさんを微笑ましく思いつつ、俺は神域の花畑についての話を覚えている限り行った。

 そのまま会話しながら歩いていると、少し先に花畑の中に円形になった芝生のエリアが見えてきた。


「あっ、カイトくん。あそこが私がよく歌ってる場所だよ」

「おぉ、凄いですね。本当に花畑のど真ん中って感じで、どの方向を見ても綺麗な花畑で圧倒されますね」

「ここからの景色は、私もちょっと自慢かな……」


 せっかくなので少しここで景色を見ていこうということになり、マジックボックスからレジャーシートを取り出して敷いてから座る。

 そして、ロズミエルさんと花畑を見ながら会話を再開したのだが……なんか、距離が近い。


「……そうなんだ。そんな花が、やっぱり神域の花畑は不思議だね。エリアがあるって言ってたけど、どんな風になってるのかな?」

「えっと、そうですね。俺がシロさんに転移してもらってすぐの場所には……」


 隣にロズミエルさんが座っているのだが、肩が触れ合うほど近い。というか先ほどまでも思っていたが、ロズミエルさんはちょいちょい距離が近すぎることがある。

 どうしてだろうと思って、ふと思い至った。そうか、ロズミエルさんは普段極度の人見知りで、話せる相手にも近づいて耳元で喋らないといけないほど声も小さくなっているわけだ。

 だから気を許した相手と話す際に、その時の癖で近くで話そうとするんじゃないだろうか?


 なるほど、謎は解けた……解けたけど……やっぱ顔も近い!? とびっきりの美人かつ、今日は笑顔も多いロズミエルさんの顔がコレだけ近いと、どうにもこちらとしては……結構ドキドキてしまうものである。




シリアス先輩「完全にデートだろ!!」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 人見知りあるあるかな。 所でロズミエルさんの姿見がめっちゃ気になる [一言] デートだ!これ!
[良い点] こんなにグイグイ話しているのに他の人だったら凄いボソボソと喋るんだよね…ギャップが凄すぎるよ もうこのデートの仕方はほとんど恋人関係じゃん()
[一言] そして唇が頬に。
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