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万花の園⑨



 ロズミエルさんに教わりつつしばらく描き続け、ひとまず一枚の絵が完成した。もちろん普通に絵画とか拘って描けば、一日やそこらで完成することなど無いのだろうが……。

 そして完成した絵を見てみると、これがなかなかどうして悪くない。いや、もちろん滅茶苦茶上手いというわけでは無いのだが、思っていた以上に上手く描けた気がする。


 これは俺に秘められた絵の才能が……というわけでは無く、時折的確にアドバイスしつつ、場合によって手を取って絵を修正してくれたロズミエルさんのおかげである。

 あとはアレかな、背中を意識し過ぎないように絵に必死に集中しようとしたのが、結果として集中力を高めることになったのかもしれない。


「……ど、どうでしょう?」


 ただまぁ、素人の俺がいい出来と思っているのと、目の肥えたロズミエルさんとでは感じ方は違うかもしれない。ロズミエルさんは素人絵を批判するような方ではない……だけど、えっと、感応魔法は切っておこう。お世辞とかって分かると、こう、辛いものがあるし……。


「うん。凄く綺麗に描けてると思うよ。初めてでこんなに描けるのは、凄いことだよ」

「ははは、けど、ロズミエルさんがいろいろ手を貸してくれたおかげです」

「ううん。もちろん途中でアドバイスしたり、描き方の上で手を貸したりってのはあったけど……この絵の表現は、カイトくん自身の感性によるものだよ。例えばここの花のところ、少し薄めの色合いを使ったのは凄くいいと思う。おかげで雰囲気が柔らかくなったからね」


 ロズミエルさんは明るい笑顔でそうって褒めてくれる。その笑顔に裏表はなく、感応魔法を使わなくてもお世辞ではなく本心で褒めてくれているというのが伝わってきて、なんだか少しくすぐったい気持ちだった。


「風景画って、特にその時の描き手の心情が現れやすいと思うんだ。たとえば、この辺とか筆のタッチが少し強くなってるのは、緊張とか焦りって印象があるね。やっぱり初めてキャンバスで描くから、最初の方は体が強張ってたのか、緊張した感じのタッチが多いね」

「……確かにおっかなびっくり感はありましたね」

「初めは仕方ないよね。例えばこの辺りは緊張で少し小さく描いちゃってるけど、もっと大きく描いてもよかったかもしれないね」

「なるほど……」

「でも、色遣いは凄くいいね。カイトくんは色彩のセンスがあると思うよ」


 まぁ、その辺りに関しては本心で言えば、背中に胸が当たっていた感触を忘れようと力を入れていたので、強張っていたんじゃないかと思う。

 だがもちろん緊張とかもあったし、慌てていた部分もあったので、心境的には正解である。そしてロズミエルさんは教え方が上手いというか、褒めて伸ばしてくれるタイプな印象だ。

 時折アドバイスを交えつつも、基本的には明るい笑顔で褒めてくれるので、描いている途中も絵を描くことを楽しく感じられた。

 極度の人見知りとかが無ければ、指導に向いていると思う……本当に、極度の人見知りが無ければ……。


「中盤に描いたこの辺は、緊張も取れてきてのびのび描けてるね。ここのなだらかな坂になってる部分の描き方は凄くいいね。カイトくんの魅力が詰まってるって思うんだ」

「俺の魅力、ですか?」

「うん。タッチや色合いを見れば、カイトくんが優しい性格だってのが凄くよく分かるよ。この辺りの柔らかい描き方は、すごく好きだよ」

「あ、ありがとうございます」


 テンションが上がっているのか、ロズミエルさんの笑顔が眩しさを感じるぐらいであり、真っ直ぐ見つめられると照れてしまう。

 そのままロズミエルさんはひとしきり俺の絵を褒めてくれたあとで、ふと思いついたよう口を開いた。


「……あっ、もしカイトくんさえよかったら、この絵も飾っていいかな?」

「え? 俺の絵をですか?」

「うん。別に私の家は美術館とかってわけでもなくて、気に入ったものを飾ってるだけだから……見に来る人も少ないしね。駄目かな?」

「あ、はい。ロズミエルさんが問題ないのであれば、俺は大丈夫ですが……」


 たくさんの名画と共に飾られるのは場違いのような気もするが、ロズミエルさんは嬉しそうだし、実際ロズミエルさんの家に来れる人は数えるほどらしいので、人の目に触れることも少ないだろう。

 それならば、まぁ、問題ないかな。前の模型みたいに失敗作ってわけでもなく、自画自賛ながら割とよく描けた絵だし……。


「ありがとう! カイトくん!」

「い、いえ、元々ロズミエルさんのキャンバスや絵の具を使ったわけですし……えっと……その、ロズミエルさん……ちょっと顔が近いかと」

「あわわわ、ごご、ごめん!?」


 嬉しそうに俺の手を握ってお礼を言っていたロズミエルさんだったが、興奮していたのか顔がかなり近かった、ロズミエルさんはそれはもう美人なので、アレだけ顔を近づけられると滅茶苦茶ドキドキする。

 まぁ、ロズミエルさんもワザではなく、俺が指摘すると顔を真っ赤にして大慌てといった様子で謝罪してきて、それを見て思わす苦笑してしまった。


 なんというか、年上に対して失礼な感想かもしれないが……いちいち反応が可愛らしい方だと、そんな風に感じた。




シリアス先輩「……終わりだな? キリがいいよな? これ以上イベントないよね!!」

???「……なんでそんなごっついフラグ建てるんですか? 完全に終わらない流れじゃないっすか……」

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です!連続で読みました!ロズミエルさんと快人さんが一緒に居ながら快人さんが絵を描く内容が良かった!段々甘い雰囲気になってきて楽しかったです! 次も楽しみに待ってます!
[一言] 『ガンロックドラゴンが上手に描けてるね』に、ならないだと、、
[良い点] これはもう一種の恋人関係といってもいいのでは… お家デートじゃん!
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