万花の園①
メギドさんの一件で心具に目覚めて、日に一回使用して練度を上げるように努めている。まぁ、コレは気長に少しずつ成長していこう。
そんなことを考えつつ、俺は目の前にある大き目の魔力窯を見つめる。これはイルネスさんとネピュラが購入した魔力窯で、先日届いて設置されたものだ。
結構デザインはお洒落で、裏庭にあっても違和感はない。煙とかも出ないし、ふたり的にも性能には満足しているみたいだ。
「お待たせいたしましたぁ」
「ありがとうございます……これが、ネピュラとイルネスさんが作ったティーカップなんですね?」
「はい! 第一号です!」
席に座る俺の前にイルネスさんが紅茶の入ったカップを置いてくれる。このカップはネピュラとイルネスさんが作ったものであり、第一号を使わせてもらえることになった。
しかし、さすがというべきか、店で買ったと言われても分かるほどに見事な出来で……紅茶を注いだら、縁に花のような模様が……うん?
「あれ? 模様が出てきた?」
「はい! 温度に反応して模様が浮かび上がるようになっています。プライベートで使うものなので、遊び心として入れてみました」
「へぇ、面白いな……」
そういえばそういう温度に反応するコップとかあった気がする。しかし、このティーカップの模様は凄いな。物凄く色鮮やかで美しいし、最初は白一色のティーカップが紅茶を注ぐと豪華に彩られるという仕掛けも面白い。
実際に紅茶を飲んでみると持ちやすいし、飲みやすい。機能性も十分に考えられている感じだ。
「ちなみに、最初から模様があるタイプも作ってます」
「まだ~3種類ほどですがぁ、いろいろ試してみてますねぇ。焼き物が奥が深くてぇ、面白いですねぇ」
「ですね。もう少し慣れてきたら、術式を刻んで保温したりとか機能を付け加えるのも面白そうです」
「このサイズのカップにぃ、術式を込められるサイズの魔水晶を入れられますかねぇ?」
「超小型の魔水晶を複数組み合わせて、連動することで初めて術式が発動する形にすれば可能だと思いますよ。たとえば、こんな感じで~」
「これはぁ……なるほどぉ、素晴らしい発想ですねぇ」
ネピュラが提案して紙になにかを書き込んでおり、イルネスさんは感心したように頷いている。ネピュラの発想力は、イルネスさんも絶賛していたし、また画期的な方法を考えたのかもしれない。
「分割術式ではなく~術式自体を分割してしまう方法ですかぁ? これがぁ、成立するならぁ、魔法具制作に革命が起きますねぇ」
「ある程度検証は必要ですが、出来ると思いますよ」
「これを成立させるにはぁ、焼き物の材質自体がぁ、魔力を通しやすいものである必要があるのではぁ?」
「魔水晶を粉末状にして練り込む形で行けると思います。術式を込めるのではなく魔力の伝導率を高める目的ですね」
「なるほどぉ、それならば~確かにぃ……試してみますかぁ?」
「はい! やってみましょう!!」
どうやら話は纏まったみたいで、さっそく試してみようという流れになったようだった。本当にこのふたりは仲が良いなぁと、微笑ましく思いながら細かく作るものを話し合うふたりを、紅茶を飲みつつ眺めていると……ハミングバーが飛んできた。
誰からだろうと思って確認すると、ロズミエルさんからであり……内容は以前カミリアさんから聞いた。俺をロズミエルさんの家がある万花の園に招待したいという内容と日程の相談だった。
事前に話は聞いていたし、俺もロズミエルさんの家には遊びに行ってみたいと思っていたので、空いてる日を確認して返事を送る。
そこでふとあることを思い付いて、話し合いを行っているイルネスさんとネピュラに声をかけた。
「……もし可能であればいいんですが、近々ロズミエルさんの家に遊びに行く予定なので、ふたりが作ったティーカップを持って行ってもいいですかね?」
「ロズミエルさんといいますと、以前家に来た花好きの精霊の方ですね?」
「うん、そうだよ」
「それでしたらぁ、好みに合わせて~新しく作るのがいいかもしれませんねぇ」
「賛成です! 薔薇の精霊の方みたいでしたし、薔薇をモチーフにしたものを作りましょう!」
単なる思い付きでの発言だったのだが、思った以上にふたりは乗り気になってくれて、ロズミエルさん専用のカップを作ろうという話にまで発展していた。
あ~でも、確かにロズミエルさんは紅茶も好きな感じだったし、家に招いてもらうわけだから手土産としても持っていけたらいいかも。
「そうですね。ふたりさえよければ、ロズミエルさん用のを作ってもらえれば……」
「はいぃ。お任せくださいぃ」
「気に入ってもらえるものを作りますよ~」
ふたりも焼き物を楽しんでいるみたいで、俺の言葉に快く笑顔で返してくれた。これは、ロズミエルさんの家に行くのもそうだが、お土産のティーカップが完成するのも楽しみになってきた。
シリアス先輩「ネピュラに対しての親バカ発動してて気付いてない感じだけど……あのイルネスが『魔法具作成に革命』とかいうレベルの新技術を提案してるんだよなぁ……」




