幻中有紗⑦
いろいろと疲れたが、ひとまずメギドさんの一件は解決したので家に戻ってきた。そのあとは、俺が目覚めた心具に関して、有識者といえるアリスとイリスさんに聞くことになり、イリスさんのバーにやってきていた。
「感覚的にはどうだ? だいたい、どの位使えるか、把握できるであろう?」
「ええ、メモリーズは日に1回、15分程度しか……だいぶ少ないですよね?」
俺はメモリーズという心具に目覚めて、その使い方も分かった。そして、その心具の力によりあの時、シロさんの試練で一緒に戦った研究会のメンバーを呼び出せることも判明した。
だが、呼び出して話をしようにも、一日に一人、15分ぐらいが限界であり、ゆっくりと話せる状況ではないのが残念だ。
そんな俺の言葉を聞いて、アリスとイリスさんはどこか懐かしそうな表情を浮かべる。
「あ~カイトさん、最初はそんなもんですよ」
「うむ。我らも心具に目覚めたばかりは、日に短時間顕現させるのがやっとだった」
「そうなんですか?」
「ええ、心具の性能は、術者の魔力量とかに左右されません。心具自体に練度みたいなものがあって、それを磨いていけば、心具も成長して効果時間とかが伸びてきますよ。私がヘカトンケイルで使う場合ですが、カイトさんの心具で大量の人を、ほぼ時間制限なく召喚できるので……カイトさんも練度が上がれば、複数人を長時間呼べるようになりますよ」
「……なるほど。ちなみに練度ってどうやってあげればいいの?」
つまり俺のメモリーズは本当に目覚めたばかりでLv1の状態というわけだ。なのでその練度を上げることで、使用可能時間が伸びたり、呼び出せる人数が増えたりするわけか……。
本人の魔力量とかに左右されないというのはかなりありがたい。魔力がへっぽこの俺でも、練度を上げれば性能を引き出せるわけだ。
「基本的には繰り返し使用することだ。一日に一度、短時間でも構わないので心具を出す。我らのいた世界では、心具に目覚めた者は、そうやって鍛錬を行う。そうすることで、徐々に練度が上がり、場合によっては心具自体が成長することもある」
「おぉ、心具も成長するんですね」
「分かりやすい例を挙げるなら、究極戦型ですね。アレは心具の練度が極限に達した時に発言する一種の切り札みたいなものです」
ヘカトンケイルの究極戦型は、たしか絆を取り込みアリス自身が無限進化していくという凄まじいチート能力だったはずだ。ただその分、使用条件が厳しいとかで気軽には使えないみたいだが……。
「……そういえば、イリスさんのアポカリプスにも究極戦型があるんですか?」
「ああ、ある……だが、我の心具の究極戦型は扱いにくくてな……そもそも、ひとりでは使えんのだ」
「イリスの究極戦型は、私たちが七星魔獣っていう怪物と戦った時に覚醒したもので、いまの私たちならともかく当時はまだ弱っちかったので凄い激闘でしたね。まぁ、その辺は詳しく説明すると長くなるので別の機会にするとして、私とふたりでアポカリプスを持つことで発動できるんですよ」
「へぇ、なんかカッコいいな」
ふたりの絆で覚醒する最強形態みたいな感じで、カッコいい。まぁ、イリスさんが扱いにくいというように、発動条件はなかなか限定的だが……。
「ちなみに効果としては、ヘカトンケイルで借りた能力をアポカリプスに付与できます。例を挙げるなら、視界に映るすべての相手に同時に攻撃できるって心具があるんですが、その能力をアポカリプスに付与すれば、視界に映るすべてに同時射撃出来たりとか、そんな感じですね。複数の能力を同時に付与することも出来るので、組み合わせ次第でいろいろできますよ」
「まぁ、ふたりでアポカリプスを持っている必要があるので、扱い辛いがな……究極戦型とは大体そんなものだ。条件が厳しい代わりに絶大な力を持つといったところか……まぁ、ミヤマカイトが究極戦型に辿り着くのはまだだいぶ先だろうがな」
「ちなみにカイトさんの究極戦型はまだ発現してないので、私のヘカトンケイルでもどんなものかは分かりません」
う~ん、そういう進化した力みたいなのはカッコいいけど……まぁ、焦ることもないだろう。まずは有紗や研究会のメンバーをある程度ゆっくり話せるぐらいの時間呼び出せるようになるのが目標だ。
「……そういえば、俺の心具ってアリスたちから見て、どうなの?」
「ぶっ壊れっすね。バフ系としては最強レベルでしょうね。カイトさんの精神力が凄まじいからこそではありますが、上昇幅がえぐいですし、練度上がれば範囲も伸びますしね」
「実体が無いというのも強みになるな。心具に攻撃を受けると精神的なダメージを受けるのだが、お前の心具には実体がないので、そういったフィードバックが無い。本人には影響がないというのが残念だが、補助としては極めて強力な心具だろう」
「お~なんか、そう言われるとちょっと嬉しい」
戦闘関連に関しては、とことん才能ない感じだったので……補助とはいえ、このふたりに強力だと評価されるのは、なんだかとても嬉しかった。
……たとえば、ベルとかリンをパワーアップさせたりもできるわけで……ますます、魔物使いだな俺の能力……。
シリアス先輩「確かに、戦闘関連で手放しに快人が凄いという評価を受けているのが貴重」




