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幻中有紗⑤



 アリスが心具について説明する時に、目覚める時は唐突だと言っていたが本当にその通りだった。直感のように頭に己の心具の名前と、その能力や使い方が浮かんできた。

 俺の心具の名前はメモリーズ。絆を紡いだ相手に対し強力なバフをかける能力だが、それ以外に俺が共に在ったと認識している死者を呼び出すことができる。

 これはおそらく俺が母さんと父さんの死を長く引きずっていたこともあり、その期間も長く、故人にも影響する能力なのはそれが要因ではないかと思う。


 そして、メモリーズに覚醒した瞬間に気付いた。シロさんの試練において俺と共に戦ってくれた研究会のメンバーたち、仮初の記憶ではあっても確かに共に在った大切な人たちだ。

 消えたと思っていた彼女たちの残滓が俺の心の中に残っており、メモリーズを用いることで呼び出せるということが分かり、思わず涙を流してしまった。

 ただ、俺の練度の問題か……現時点で呼び出せるのはひとりを短時間が限界だった。


 だからこそ、俺は彼女を選んだ。あの世界で親友として誰よりも長く共に居て、もっとも強く印象に残っていた……幻中有紗を……。


 長い金髪をなびかせて俺の前に現れたサングラスをかけた女性は、間違いなく俺の記憶に残る有紗であり、目の奥がジーンと熱くなっていく気がした。


「……久しぶりですね、快人さん」

「ああ」

「正直な感想を言います……いま、死にたい気分です」

「う、うん?」


 あれ? なんか変なことを言い始めたぞ。そう思って首を傾げていると、サングラスをかけた顔が真っ赤になっているのが見えた。


「だってですよ! 私は、アレが最後だって思ったから……あんなくそ恥ずかしい台詞を言ったわけなんですよ! コンティニューがあるとは聞いてないんですけど!? もう、顔から火が出そうとかそういうレベルじゃないですこれ、私の顔が火に変わった気分ですよ!」

「……ぷっ、あはは」

「いや、笑い事ではないっすからね!!」


 なんというか、あまりにも記憶にある有紗のまんまというか、当たり前ではあるが間違いなく彼女なんだと確信して、安心からか思わず笑みがこぼれてしまった。


『……なんだ、ソイツは? シャルティアとは違うのか?』

「ああ、えっと、説明すると長くなるので、それはまたあとで……有紗、とりあえずいまは力を貸して欲しいんだけど、状況は分かるか?」

「……ええ、その辺は大丈夫です。ボコればいいんでしょ? 任せてください。見せてやりますよ、私のジャーナリズムを!」

「ジャーナリズム……関係あるのか?」


 少なくともこの場面で使う単語ではない気がするが。有紗はジャーナリストに対して並々ならぬ拘りがあるので、まぁ、それはいいだろう。

 そう思っていると、破壊衝動が立ち上がり……なんか若干先ほどまでより怒っているような表情で突っ込んできた。自分を置いておいてなにをやってるんだという抗議の意思を感じる。

 すると、有紗がすっと俺を庇うように前に立ち手をかざすと、その手にハンドガンが二丁握られていた。


「舐めないでくださいよ。いまの私は快人さんの心具、快人さんの心の強さがそのまま私の力になるわけです。先ほどの快人さんに敵わなかった貴女では、万が一にも勝ち目はありません。見せてあげましょう八十八のジャーナリスト秘技のひとつ……『ガン=カタ』を!!」


 いや、なんでジャーナリストがガン=カタするんだよという、俺の心の中のツッコミが口から出るよりも早く有紗は駆け出し、宣言通りそれは見事な二丁拳銃を用いての接近戦……ガン=カタで、破壊衝動を圧倒する。

 有紗は俺の心具なので、この空間における身体能力は現在の俺と同じ、その上で戦闘センスは俺とは全く違うので、破壊衝動は手も足も出ない様子で、体にどんどんダメージが蓄積しているのが目に見えた。


「残念ながら、そもそも貴女の心は快人さんとの戦いで半ば折れています。これで、引導を渡してあげますよ」


 そう有紗が宣言すると、二丁拳銃が消え虹色に光る弾丸とリボルバー式の銃が出現した。その輝きには見覚えがあった。

 あの精神世界の戦いに置いて、絵里奈が放ち巨竜を撃ち抜いた弾丸だ。


「……『絆の翼』」


 有紗が虹色の弾丸を装填した銃を構えて引き金を引くと、翼が広がるような軌跡を描き、輝く弾丸が破壊衝動を貫き、その体を光の粒子に変えた。

 屈服させられたかどうかは分からないが……これでひとつの決着が着いたことは確かだろう。


「……っと、うおっ」

「まだ使い慣れてないみたいですし、長時間使ってると消耗が激しいみたいですね」

「そっか……もっといろいろ話したかったけど……」

「大丈夫っすよ。私も、他の皆も快人さんの心の中にいますから、またいつでもメモリーズで呼び出してくれれば話せますよ」

「……そっか、そうだな……ありがとう。そして、おかえり、有紗」

「……はい!」


 俺の言葉を聞き、有紗は満面の笑顔を浮かべ光の粒子になって俺の体に吸い込まれていった。




シリアス先輩「なるほど、似てるけど、アリスとはまた違ったキャラなんだな」

???「ほぅ、どのあたりが……」

シリアス先輩「アリスと違って、膨大な年月拗らせたりしていないから、なんだかんだで割と性格が素直より」

???「……死にたいみたいですね」

シリアス先輩「oh……」

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― 新着の感想 ―
[一言] 邪神の心臓ちゃんは呼び出し可能かが気になります
[良い点] ガンカタするジャーナリストは強い [一言] キジも鳴かずば撃たれまいに・・・ (シリアス先輩も余計は一言なければつぶされないのに・・・)
[気になる点] メギドの破壊衝動すらオーバーキルできる精神力でメモリーズのバフを他者に乗せたら洒落にならん効果でるのでは… 惜しむらくはそんなシリアス展開もうないことだね!
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