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〇〇〇紗④



 メギドさんの破壊衝動との精神力バトルという名の殴り合いは続き……残念ながらまともに有効打が与えられないままで、時間だけが過ぎていった。

 ダメージはあまりないとはいえ、本当に手も足も出ない感じである。そう思っていると、突然破壊衝動の体に最初にあったようなリングが巻き付き、動きが止まった。


『カイト、すまねえ。もう十分だ』

「メギドさん?」


 珍しくというべきか、申し訳なさそうなメギドさんの声に首を傾げる。


『俺の事情にお前を巻き込んで悪かった。これ以上俺の事情のせいで、お前が一方的に殴られてるのを見ていたくなくてな……お前はよくやってくれた。だからこれ以上は……』

「……」


 そもそも、である。俺が今回の話を流されながらも了承したのは、破壊衝動をどうにかしたいというメギドさんの願いが真剣な物であったからだ。

 感応魔法で伝わってくるメギドさんの感情は、どこか救いを求めているようにさえ感じた。


 実際、メギドさんは過去にクロやアリスに頼んだように、この破壊衝動をどうにかしたくてたまらないのだろう。封印しておかなければ暴走してしまうような、そんなものが体の中にあり続けるのは、どんな気分なのか……少なくとも、俺は耐えられないような気がする。


「……メギドさん、馬鹿にしないでください」

『カイト?』

「メギドさんは戦いが好きで、こういうバトルもよくやってるんでしょ? その時に観客から、もう十分だとかそう言われて盛り上がると思ってるんですか!」

『……』

「そういう情けないことを言う暇があったら、応援のひとつでもしてください!」


 屈服だのなんだのはもうどうでもいいが、とりあえずメギドさんのためにも俺に出来る全力を……。


『……そう、だな。すまねぇ、馬鹿なことを言った。カイト、行け! そんな奴ぶっ飛ばしちまえ!』

「はい!」


 さて、もう小細工だなんだは無しにしよう。開き直ってありったけをぶつける!












 快人の言葉を受けて、メギドは破壊衝動に施しかけていた再封印を解いた。当然破壊衝動は快人に向かって全力で駆けて拳を振るうが……快人はその拳から目を背けたり防御するようなこともなく、顔で受け止めて反撃の拳を振るった。

 その一撃は破壊衝動の顔を捕らえ、その体を大きく弾き飛ばす。


 そう、快人はもう小手先の防御を捨てた。破壊衝動の攻撃を正面から受け止めて反撃する。それだけのシンプルな戦法に切り替えた。

 破壊衝動が拳を振るうが、快人は微動だにせず拳を受け続け、狙えると思ったタイミングで反撃を叩き込む。すると再び破壊衝動は大きく吹き飛ばされる。


 破壊衝動にも意思はある。その意思はいま、若干の困惑をしていた。先に受けた一撃より、いまの一撃の方が遥かに重かったからだ。

 気のせいだと思いつつ再び殴りかかり、数発の攻撃を繰り出した頃に違和感を感じた。


 最初は多少なりとも仰け反っていた。快人の精神が不安定になればダメージも通っていた……だが、いまはどうだ? いくら拳を叩き込んでも、快人は微動だにしない。それどころか、時折放たれる反撃の速度も威力もどんどん上がってきている。

 そう……覚悟を決めたことにより、快人の精神がどんどん加速度的に強くなっていた。

 ……もう、破壊衝動では快人の拳のスピードを目で追えなくなった。最初に比べ反撃の頻度が上がり始めた。快人を殴る己の腕が逆に痛み始めた。異常なほどのスピードで、快人の精神が強くなっている。


 破壊衝動の手が止まる。攻撃しても強力な反撃を受けてしまうだけ、まともにダメージを与えられない。どうすれば、とそんなことを考えて驚愕した。

 破壊衝動たる己が……攻めを躊躇しているという事実が信じられなかった。


 強者というならいままでも相手にした。クロムエイナにシャルティア……どちらもその技量を持って、己を圧倒し叩き伏した。それでも、破壊衝動はいつか成長して打ち破ってやると、屈服することは無かった。

 だが、いま目の前にいる存在はどうだ? 初めは多少の差はあれど、技量の差で己が上回っていた。だが、快人はいまもなお加速度的に成長し続けている。底など無いのではないか思うほど、どんどん心が強くなる。


 勝てないと、そんな考えが頭によぎり、それを振り払うように破壊衝動は快人に向かって駆け拳を振るう――前に振り下ろされた快人の拳に吹き飛ばされる。

 もはや、快人は破壊衝動の攻撃を見てから、先に拳を叩き込めるほどまでに身体能力を上げていた。両者の間には絶望的なほどの能力差が出来つつあった。


 驚愕する破壊衝動だったが、直後にビキッという音と共に、片方の角が折れた……この心比べにおいて、肉体に明確なダメージが刻まれるのは……すなわち、心が折れかけている証明でもある。

 いったいどうすればいいのだと、そう考えながら破壊衝動が快人を見たタイミングで……快人は唐突に涙を流した。


『カイト!? どうした、大丈夫か!?』

「ええ、すみません。つい、嬉しくて……」

『嬉しい?』


 不思議そうなメギドの声に、破壊衝動もまた状況がよく分からず動けない。そんな中で、快人は静かに言葉を紡ぐ。


「いや、本当に急なんだなって……あと、消えずにちゃんと俺の心の中に居続けてくれたんだって……」

『う、うん?』


 戸惑いの中で快人は涙を拭き、強い目で破壊衝動を見つめながら言葉を紡ぐ。


「その心は、踏みしめた確かな軌跡――共に笑い、共に泣き、共に積み重ねた思い出の足跡――紡いだ絆は奇跡の欠片――我が心はここに! 共に在れ! メモリーズ!」


 明確な力を持った言葉が紡がれ、快人の体が強く輝く……そして、空間に快人でもメギドでもない別の誰かの声が響いた。


「……なんというか、すっごく遅くなっちゃいましたけど……お待たせしました、快人さん。『お助けキャラ』の登場ですよ!」





シリアス先輩「異議あり!!」

???「うぉっ、どしたんすか?」

シリアス先輩「だってほら、どこの話か忘れたけど、快人がピンチで覚醒とかしないって約束があったじゃん!!」

???「なるほど、では今回の状況を整理してみましょう」


~~~


破壊衝動(なんだこの存在は、もはやこちらの攻撃もまともに通らない。どれにどんどん底無しに強くなる。破壊衝動である私が、屈服しかけている……悔しいが、これほどの相手と戦えたのなら、それもまた幸運……)


快人「うぉぉぉ、メモリーズ!」


破壊衝動(どうして、オーバーキルしにきた? 言え!)


~~~


???「という感じですが?」

シリアス先輩「……うん。なるほど、ピンチに覚醒してなかったね。ほぼ勝ち確レベルで優勢で覚醒して、オーバーキルしにいったわけだ……酷い主人公だな!?」

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― 新着の感想 ―
他に類を見ないほど最低な覚醒シーンに笑うしかない
[一言]  ピンチでもなく、何なら超優勢のところで覚醒して、オーバーキルをするタイプの主人公とか新し過ぎるだろwww
[良い点] まさかのここで!? でもようやく出てきたのは嬉しい!
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