幻〇〇〇③
メギドさんに頼まれた精神力バトルについて、詳しい説明を求めたのだが……メギドさんの答えは、体験してみればわかるというものだった。
「……えぇぇ」
「まぁ、体験してみるのが一番だしな」
「あ~カイトさん。大丈夫っすよ。心比べは好きなタイミングで離脱できますので」
「あっ、そうなんだ」
それなら、少し安心だ。決着が着くまで戻れないとかではなく、任意のタイミングで脱出できるなら、メギドさんの言う通り体験してみるというのはありかもしれない。
しかし、う~ん。精神力バトルか、自分が強いというイメージは無いんだが……メギドさんはかなり俺に期待してくれているみたいで、その感情が伝わってくる。
とりあえずは頑張ってみることにしよう……いざとなれば逃げられるんだし……。
「うしっ! じゃあ、始めるぞ」
「じゃ、カイトさん頑張ってくださいね。ちなみに、マジで聞き分けないので、無理そうならさっさと諦めるのがいいですよ」
とりあえず体験してみるということで、メギドさんが足元に複雑な魔法陣を浮かべ俺に手をかざす。するとかなり眩しい光が放たれ、俺の意識は光に吸い込まれるように沈んでいった。
気が付くと、闘技場の中に居た。観客などはおらず、ただ広いだけの闘技場。
『……カイト、聞こえるか?』
「メギドさん? これが心比べってやつなんですか?」
『ああ、テメェはいま疑似的に俺の心の中に入ってる状態だ。体なんかは問題なく動かせるだろ?』
「ええ」
『じゃ、軽く説明するぞ。心比べの空間の中では、精神力の強さがそのまま身体能力になる。当たり前だが、弱気になったりすると身体能力も低下するから気を付けろよ』
「……」
『よし、じゃあ、破壊本能の封印を限定的に解くから、頼んだぞ』
「え? いや、ちょっ……」
待って待って!? なんか予想してたのと違うんだけど……精神力バトルって……精神力を腕力に変えてぶん殴るとかそういう話なの!? それもう普通のバトルなんじゃ……。
そう思って慌てていると、前方に黒い霧が現れソレがメギドさん……真の姿である女性型のメギドさんに変わる。
見た目はほぼ一緒だが、体に変な輪っかのような拘束があり、目が真っ赤に光って唸るように歯をむき出して威嚇している……こ、こわっ……。
『じゃ、スタートだ』
「……えぇぇ」
メギドさんの声が聞こえた瞬間、目の前のメギドさん……もとい破壊衝動が俺に向かって猛然と駆けてくる。当たり前だが、喧嘩すらロクにしたことが無い俺が反応できるわけもなく、破壊衝動の拳が俺の顔に叩き込まれる。
痛っ……いた……あれ? 痛くは無いな、ちょっと衝撃があったぐらいだ。
『やっぱり、予想通りお前の能力は破壊衝動を大きく上回ってる。やっちまえ、カイト!』
「え? あ、はい!」
なるほど、精神力が身体能力になっているから、現実世界でへっぽこな俺でも破壊衝動の拳とかを受けてもほぼノーダメージなのか……よ、よかった。あんまり痛い感じのやつじゃなくて……。
そう思いつつ、反撃のために拳を振るう。現実の俺からは想像もできないほどの速度のパンチ……だが、破壊衝動はその拳をいなし、カウンター気味に俺の顔に拳を叩き込む。
ダメージはほぼ無いが、少しの衝撃があり仰け反る形になりつつ、再び反撃に拳を……今度は手を取られて、巴投げみたいに放り投げられた。
しかし地面に叩きつけられても、痛みなどは感じない。感じないのだが……。
「……えっと、これ、戦闘技術とかも高い感じですか?」
『ああ、あくまで俺の感情のひとつだからな。技術とかは俺と同じだ』
……なるほど、身体能力は俺が大きく上回っているが、破壊衝動はメギドさんと同等の格闘技術を所持していると……無理じゃない? いかに俺の身体能力が高くなってても、武術の達人であるメギドさんと同じ技量を持つ相手に、有効打とか無理では?
なんかさっきまでの話では、とりあえず勝てるのは前提でどう屈服させるか的な話だったが……そもそも勝つ段階まで行けなくないか?
あっ、そっか、いままでお願いしたのがクロにアリスと、戦闘技術が飛びぬけてる人たちだったから……じゃあ、俺では無理では?
「痛っ!?」
『カイト!? 気を緩めるな! 思考が弱まったら、能力が低下するぞ』
いまの一撃は結構痛かった。そ、そうだった。ここではあくまで精神力が重要だから……俺が勝てそうにないとか、無理そうだとか弱気になると能力が低下するのか……。
むしろ絶対勝ってやるぐらいの強気挑まなければならないわけだ……よ、よし、気合いだ!
???「まぁ、そうっすよね。いくら身体能力で上回ってても、当てる技術が無いと意味が無いですよね。となるとやっぱり、ここはタイトルのキャラがキーになるんすかね?」




