表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1312/2409

建国記念祭昼③



 エリアルさんとティルさんを見送ったのはいいのだが、すこし予定外の事態になったといっていい。


「……ここ、どのあたりでしょうね?」

「う~ん、私は世界座標って難しくてよく分かんないんだよね。チェント、ここどこ?」

「えっと、地図ですとこのあたり、西区画に近い位置で、先ほどまでの場所とは少し離れていますね」


 俺たちが出店を出していたのは南区画であり、当然先ほども南の大通りを通ってセレモニー会場に向かっていた。

 ただこの位置は、チェントさんが広げてくれた地図から考えると、距離的に言えばさっきまでいた場所よりセレモニー会場に近い。

 南ではなく西の大通りを通る形になるが、それでも結構距離は短縮できた感じだ。


「偶然ですけど、セレモニー会場が近くなってますし、むしろ都合がいいですね」

「だね。帰りは転移魔法なんだし、道筋は関係ないからね。じゃあ、こっちの通りから中央に向かう感じかな?」

「それでいいと思います。距離が短縮できて時間にも余裕ができたので、少しのんびり出店をかも見えそうですね」


 思った以上にエリアルさん、ティルさんとの一件はいい結果になったみたいで、俺たちは西の大通りに移動して歩き出す。

 先ほどまでは距離があって少し急ぎ目にセレモニー会場を目指していたが、時間的余裕ができたおかげで先ほどよりいろんな出店を見る余裕ができた。


 しかし、それにしてもさすがにセレモニー会場が近いだけあって、人の数が凄いな。いちおう流れのようなものがあり動いてはいるので、人が多すぎて動けないとかではないが……。

 そう思いつつ、通りがかる店を眺めながら歩いていると……。


「……あっ」

「……」

「……」

「……」


 見覚えのある顔……エリーゼさんと目が合い、その瞬間俺たちの間ではすさまじいスピードでアイコンタクトが交わされ、エリーゼさんは営業スマイルを浮かべたままで肩をすくめた。

 ちなみに先ほどのアイコンタクトと、エリーゼさんから伝わってきた感情のやり取りを言葉で表すなら……。


『……おいこら、人間さん。何度も、何度も、来るなって言ったはずですが?』

『誤解です。マジで偶然なんです! そもそも、俺、エリーゼさんの店の場所知りませんでしたから!?』

『……確かに教えてないです。はぁ、人間さんの奇妙な豪運を甘く見過ぎたです。むしろ場所教えて、ここには近づくなって言ったほうがよかったです……そっちはそっちで、偶然現れそうですが……』


 という感じで、最終的になんとかセーフ判定だった。しかし、本当になんか器用に感情を飛ばしてくる方である。しかも、表情はずっと明るい笑顔のままなのだから、恐ろしい。

 まぁ、とりあえず、これ以上刺激しないようにここはおとなしく。


「あっ、カイト! あそこ、白神祭で見た占い屋だよ!」

「げっ……トーレさん!?」

「なんか縁感じちゃうね! よし、ちょっと寄っていこう!」


 ここでまさかのトーレさんである。いや、別にトーレさんにも悪気があったわけでもなんでもなく、単純に白神祭の時にフォーチュンクッキー買ったし、覚えていたというだけなのだろう。

 それに対して、エリーゼさんはニコニコと可愛らしい笑顔を浮かべている……感応魔法にこれでもかってほど、抗議の感情を叩きつけつつ。

 本当になんでこの感情飛ばしながらあの顔を維持できるんだ?


「いらっしゃいませ」

「こんにちは~なにか、限定品みたいなのってあります?」

「それでしたら、この辺りはいかがでしょうか? シンフォニア王国で伝統的な花のお守りです。建国祭にちなんだ組み合わせにしてあります」

「へ~凄い綺麗だね」


 たしかに、パッと見は小さめの花のコサージュみたいな感じではあるが、シンフォニア王国の国旗をイメージしたデザインと色合いになっているので、建国祭の記念品といった雰囲気がある。

 そういうその日しか買えないとか、その日だけの特別な~というのは購買意欲を刺激するので、本当に商売上手だとそう思う。


「じゃあ、せっかくですし四人分買います。あっ、支払いは俺がまとめて」

「わーい、カイトありがと~」

「はい。お買い上げありがとうございます」


 なによりも、早く買い物を済ませてここから立ち去らないとって思いがあってのことである。だって本当にエリーゼさん、こんなに笑顔なのに……早くどっかに行けオーラが凄いんだもん。

 長居すると次に会った時に相当怒られそうなので、サクッと買い物を終えて移動することにした。代金を渡してお守りを受け取ると……。


「こちらはおまけの飾り紐です。お守りを壁にかけたりする際にお使いください」

「あ、ありがとうございます」


 綺麗な紐をおまけに付けてくれたあと、一瞬だけ今日じゃなくて、また後日遊びに来いという感じの、優し気な感情が伝わってきた……すぐにどっか行けって感情に戻ったけど……。

 というか、本当に器用というか……やけに上手く正確に感情を伝えてくる方である。




シリアス先輩「なんかやっぱりエリーゼって、快人にキツめに見えても、実は好感度はかなり高そう」

???「事実かなり高いですしね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 次回の人気投票でエリーゼさんが上位に食い込んでくる未来しか見えないなぁ…
[一言] 幻王配下の数少ないまともな人たちからは好感度が、イカれた奴らからは忠誠度が上がるカイトクンさん流石です
[良い点] さ す が の フラグ回収カイトくん! そしてやっぱり、エリーゼさんかわいい! [一言] アイコンタクトでそこまで意思疎通できるのって、本当にすごいね・・・もう、そこまでの仲になってたん…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ