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建国記念祭⑧



 出店に来た天照さんと真名さん、独特な衣装である天照さんはそこそこ注目を集めていたが、周囲の人の少なさもあって大きな騒ぎになることはなく、店の前までやってきた。


「こんにちは、先日申した通り、購入に参りました」

「こんにちは、天照さん、真名さん、普通のベビーカステラとチョコレート入りのがありますが?」

「えっと、そうですね。それでは1つ……いえ、2つずつお願いします」


 エデンさんの分と自分の分ってことかな? 途中で一瞬真名さんがチラッと天照さんを見て、それで言い直したように見えたが……。

 そう考えつつも、袋を用意してベビーカステラを詰めていく。共に問題のない流れだったはずだが、不意になにかネットリした視線のようなものを感じて視線を動かすと、真名さんがなにやら……怖い笑顔でこちらを見ていた。


 いや、真名さん自身は可愛らしい方だし、笑顔も特にどこかおかしいとか言うわけでは無いのだが、なぜか獲物に狙いを定めた蛇が後方に見えるというか……普通の笑顔のはずなのに、ドロッとしたような奇妙な感覚がある気がした。考えすぎ、だろうか?


「……はぁ、愛し――いぎっ!?」

「え?」


 真名さんが目を細め、なにかを口に仕掛けた瞬間、真名さんの頭になにかが当たり鈍い音を響かせる。


「おっと、すみません。手に持ってる案内札が当たっちゃいました。いや~失礼しました、お客さん」


 そう言って謝罪を口にするのは、ねこの着ぐるみを着たアリスだが……あれ? さっきまで普通の木の案内札だったよね? いつの間にそんな『巨大ハンマー』みたいな形状に変わったんだ?


「ま、真名さん、大丈夫ですか!?」

「は、はい。全然大丈夫です……気にしなくていいですよ」


 真名さんは軽く頭を抑えながら苦笑して立ち上がる。やはり天照さんの補佐というだけあって、見た目からは想像できないほどの力を持っているのだろう、あの巨大なハンマーが当たっておきながらロクなダメージはなさそうだ。


「……アリス、お前なにを……」

「いえ、偶然案内板が当たりました。本当に偶然です」

「そうそう、これはただの事故ですから、全然気にしなくて大丈夫です!」


 どう見ても故意に当てたようにしか見えなかったのだが、アリスだけならともかく、当てられた側の真名さんも事故だというのであれば、俺はそれ以上なにも言えない。


「……アリスと真名さんってもしかして知り合いだったり?」

「ん~まぁ、実は前にエデンさん関連でちょっと会ったことがあるんですよ。逆に天照さんの方とは会ったことは無かったですけどね」

「担当が違う感じですね。前に我……えと、宮間快人さんが海水浴に行く際に、エデン様が食材を提供することになりまして、それを届けたのが私なんですよ。それでその時に仲良くなった感じですね」

「あ~なるほど、そういえばそんなことがありましたね」


 海水浴の時にアリスがエデンさんに食材を用意してもらったと言っていたが、その時に届けたのが真名さんというわけか……エデンさんならその場で創造できそうなものだが、シロさんとの間にいろいろ細かな契約があるみたいだし、その関係かもしれない。


「ま、まぁ、なにはともあれ、怪我が無かったならよかったです」

「私の心配をしてくれるんですね!? はぁ、やっぱり可愛――」

「おっと、手が滑りました」

「――ッ!?」

「ま、真名さぁぁぁぁん!?」


 なにかを言いかけた真名さんに、アリスが振るった案内札という名の巨大ハンマーが直撃し、明らかに人が出してはいけないような音が響いた。

 相当強い一撃が入ったぞ!? 首、折れてない?


「ア、アリス、お前!?」

「仕方ないです。手が滑りました」

「いや、手が滑ったっていま明らかに……」

「手が滑ってました! 私の目から見ても手が滑ってたので、まったく問題ないです!!」

「え、えぇぇ……」


 どう見ても故意にハンマーで真名さんの頭をぶん殴ったようにしか見えなかったんだけど、アリスがとぼけるだけならともかく、真名さんも全力でアリスをフォローしているので、俺は混乱してなにも言えなくなってしまう。

 な、なんだこの奇妙な光景は……頭がおかしくなりそうだ。ま、まぁ、本人が大丈夫というなら、これ以上言わない方がいいか……。


「……えっと、じゃあ、天照さん。それぞれ2つお待たせしました」

「ありがとうございます。えと、真名にお渡しください」

「はい。真名さん、どうぞ」

「ありがとうございます! お店、頑張ってくださいね」

「え、ええ、ありがとうございます」


 よくはわからないが、これ以上深く考えても疲れるだけの気がするので、満足げに手を振って去っていく真名さんと、深々と礼をして去っていく天照さんを俺はなんとも言えない表情で見送った。





シリアス先輩「なるほど、弱く作ってあるから、物理ダメージで止めれるのか……」

???「例によってアリスちゃんがフォロー役というわけですね。やはりアリスちゃんは有能、カイトさんはアリスちゃんにご褒美をあげるべきだと思います」

シリアス先輩「自演やめろ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] さすがアリスちゃん カイちゃんにデート連れてってもらえ
[良い点] さすがアリス [一言] アリスちゃんはもっと甘やかされていいと思う いやまじで まあ、今の親友と悪友と恋人が一緒になった関係も好きなんだけど、ガッツリ甘やかされてるアリスちゃんも見てみたい…
[一言] ・・・アリスちゃんへの褒美・・・ 「月が照らす浜辺のコテー おや?誰か来たようだ・・・ ま、窓に!窓にーーーーーー!!! (その後の消息は不明となりました。)
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