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建国記念祭②



 建国記念祭を目前にして、首都全体の空気も浮足立ってきているような感じがする。特に今年は、六王全員が参加を表明していることもあって、王家もかなりの力を入れている様子で、メインとなるセレモニー会場には毎日多くの資材などが運び込まれていた。


 俺も出店の準備を完璧に終え、あとは開始を待つばかりと楽しみにしているのだが……ここで不意に、ひとつの問題が発生した。

 いや、問題とはいっても、別に俺がどうかなったり出店に影響が出たりというわけではない。原因は俺が様々な大物の知り合いに出店についての話をした際……エデンさんが「何か方法を考える」と言っていた部分だ。


 エデンさんとしては、我が子である俺や葵ちゃんや陽菜ちゃんが出店に居る以上、様子を見に期待という親心……まぁ、とりあえず親心でいいか……ともかく、そういう気持ちがある。

 しかし、エデンさんは目立つ。容姿もそうだが、あの巨大な羽も滅茶苦茶目立つし、なんならエデンさん的には動く肉塊と呼ぶ現地住民が大量にいる場所、行動の邪魔でもされたらうっかり処断しそうだと、恐ろしいことを言っていた。


 そう言うわけで、エデンさんが直接行くのは難しい、しかしなんとか行きたい……そう考えて出した結論として……。


「……それで、この世界に来ることになったんですね、『天照』さん……」

「はい……前日入りと言われ、来ることになりました」


 現在俺の目の前には十二単のような着物を身に纏った黒髪ロングの女性。平安時代とかの高貴な女性のような風貌の人で、俺のおじさんやおばさん、陽菜ちゃんの家族などにいろいろ説明をしてくれたエデンさんの補佐を行っている方である。


「なんというか、上司の命令で異世界に来ることになるとは、大変ですね」

「……そうですね。上司といえば上司……実際はもっと上ですが……ともかく、そう言ったわけで明日店に参りますので、先んじてご挨拶に伺った次第です」

「なるほど、それで隣にいる方が?」

「はい! 私は、『真名(まな)』と申しまして、同じように楽園(エデン)様に申し付けられてきました。天照様の補佐のようなものだと思っていただければ結構です……ね?」

「は、はい! 妾の補佐です!!」


 マナと名乗った、ウェーブがかった茶のロングヘアに灰色の目、白いワンピースにカーディガンを羽織った。天照さんとは違って、現代風の服装の女性が明るい笑顔で告げる。

 なんでかな? なんか、天照さんが滅茶苦茶慌ててる気がするんだけど……なんか、実際は天照さんより立場が上のような気がするんだよなぁ。


 とりあえず、簡単な挨拶だけを済ませてふたりは帰っていった。まぁ、けど、少し意外だったな……エデンさんが、直接店に来ることを諦めるなんて……。








 トリニィアにあり、人界でも神界でも魔界でもない、世界の境界。シャローヴァナルより許可を得て、エデンが待機する場として利用している場所。

 そこには現在、エデンと天照が居て、双方とも真名の前に膝をついて頭を下げていた。


「それじゃあ、最初に話した通り当日は76812号が、その楽園(エデン)を操作する」

「はっ」

「そして、天照は私と一緒に愛しい我が子の店に行く……もう少し自然に演技してね? 今日は、ちょっと固くなってたよ?」

「も、申し訳ありません! 明日は必ず!」


 真名……もとい、マキナの言葉を聞き、灰色の目になっているエデンと天照は再び深く頭を下げる。するとその直後、空間に何者かが現れる気配がして全員が身構えた。

 ここは特殊な空間でシャローヴァナルも覗くことはできないが、シャローヴァナルやクロムエイナといった存在は、来ること自体は可能である。

 そのふたりが現れたなら演技をしなければならないので、エデンがスッと立ち上がろうとしたが、マキナがそれを手で制した。

 誰がここに来るのか分かったからだ……。


「……マキナ」

「いらっしゃい、アリス。なんのよ──いだだだだだだっ!?」


 空間に現れたアリスは、笑顔を浮かべるマキナに近づき、アイアンクローをしながらその体を持ち上げた。


「待ってアリス!? この体、全然強く作ってないから、あんま強くすると壊れちゃうから!?」

「私があんだけ言っといたのに、なにしてんすか……」

「い、いや、ほら、約束通りエデンとしていくのは諦めたし……シャローヴァナルとの契約があるから本体をこっちに来させるのはできない……なら『新しい体を作って来ればOK』ってことだよね――痛い痛い!? なんで力をもっと強く!?」

「……まぁ、可能性はあるとは思っていたので、それはもういいです。ただし、明日の訪問の際にカイトさんに迷惑をかけないように、以前以上にキッチリお話しておく必要がありそうですね」

「……おかしいなぁ、話する感じじゃなくて、ボコボコにするって感じの顔してるんだよなぁ……さっきも言った通り、この体全然強く作ってないから加減してほ──いだぁぁぁぁぁ!?」


 そして、空間中にしばしマキナの悲鳴が響き渡り、そしてその後彼女はアリスに長い説教を受けることとなった。





シリアス先輩「なるほどぉ、こう来たかな……そして、マキナの言う全然強くないって、どのていど?」

???「六王並の力はありますね。マキナにしてみれば、準全能級にも届かないので弱いって認識みたいです」


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― 新着の感想 ―
[良い点] 部下に散々文句言ったくせに真名さん自身が暴走して全てご破算になりそうな気がするんだが!? [一言] 1300話おめでとうございます!
[良い点] 1300話おめでとうございます
[良い点] マキナちゃん えらい! [一言] 暴走しないことを祈るだけだ・・・
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