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出店の準備②



 エリーゼさんとの会話による思い付きではあるが、出店というのもなかなか楽しそうだ。出店や調理器具などはアリスにお金を払って作ってもらえばいいし、材料も出店もマジックボックスに纏めて入れておけるので設置も簡単だ。

 あらかじめ作り置きとかもしておけば、客が予想より多かったりしても対応できる。


「……エリーゼさん、ちなみに申し込みってどこでするんですか?」

「各地区の統括所で受け付けてるです。書類に記入して、出店の場所を決めるだけです」


 統括所というのは、日本で言うところの役所みたいなもので、葵ちゃんや陽菜ちゃんが冒険者になる際に提出した証明書類も多くは統括所で発行してもらっていた。


「まぁ、いまの時期だともう人気の場所はとれないです」

「やっぱり、場所によって人気が違うものなんですね」

「当然と言えば当然ですが、人が多く集まる場所が人気です。一番は建国記念セレモニーが行われる王城前の大広場ですね。ここはいつも抽選ですが、倍率が凄すぎて普通はとれないです。次に人気なのは、大広場に向かう大通りです。その次が東西南北の中央の通りってところです」

「ふむ、それ以外の場所にも出店できるんですか?」

「基本的には個人の所有地じゃなく国が管理している土地で、通行を著しく妨げたりしない場所なら大丈夫です」

「なるほど……あんまり、人が多くない方がいいですね。素人仕事ですし……」


 正直、人気の場所とかは仮に確保できるとしてもするつもりはない。あくまで、一種のお遊びというか、出店側の空気を楽しみたい……まぁ、なんというか文化祭みたいなノリなので、客はほどほどでいい。


「メインの通りから、少し外れれば割と閑散としてるですよ。ちょっと待つです」


 そう告げるとエリーゼさんは店の奥に移動し、王都の地図をもって戻ってきた。


「こことか、この辺りなら、スペースも取りやすいですし、あんまり人の往来も多くはないので、のびのび出来ると思うです」

「なるほど……いろいろ教えてくれて、ありがとうございます。まだ出店するって決めたわけではないですが、とりあえずいろいろ考えてみますね」

「まっ、好きにするといいです。申し込みの締め切りは開催の10日前です。他にも分からないことがあれば、聞きに来れば……まぁ、暇だったら教えるです」


 ……やっぱ、口調だけなら棘があるように思えるのだが、エリーゼさんは普通に優しい方だと思う。なにせ、最初も臨時休業して準備をするという悪いタイミングで訪ねてきた俺に対しても、『帰れ』とかそういうことは言わず、普通に迎え入れてコーヒーも出してくれた。

 というか、実際いつも悪態はつかれるが基本的に門前払いとかはされない。それをされるのは、祭とかでエリーゼさんが出店している店をたまたま見つけたパターンの時ぐらいだ。

 白神祭の時は、さっさとどっか行けオーラ凄かったし……。


「……なんか腹立つこと考えてる気がするです」

「そ、そんなことは無いんですが……まぁ、あんまり長居してお邪魔してもアレですし、俺はそろそろ帰りますね。今日はありがとうございました」

「はいはい……ああ、昨日焼いたシフォンケーキの余りがあるですから、持って帰って食えです」


 帰り際にはお土産まで持たせてくれるという。口調とは裏腹に面倒見がよくて優しい方だと思う……が、たぶんそれを言うと怒るので、お礼だけ行って店を後にした。










 エリーゼさんの店からの帰り道、俺は出店に関して割と真剣に考えていた。仮に出店するとして、当然だが俺ひとりでというのは難しいので、手伝ってくれる人は確保したい。

 できれば料理とかが得意で頼りになる感じの相手……パッと思いつくのはジークさんなのだが、ジークさんは建国記念祭となると、リリアさんに同行して城の方に行く可能性が高いので難しいかもしれない。


 う~ん、いい感じの人が誰かいないものか……。


「……悩んでるみたいだね、カイト」

「……」


 そんなことを考えていると、進行方向の少し先で腕を組んで近くの建物にもたれ掛かり、クールな雰囲気を醸し出しているトーレさんが現れた。

 いつの間に現れたのかは置いておいて……う~ん、バスケの時もそうだが、登場のタイミングは抜群だし、見た目の雰囲気も完璧なんだけど……どうも、毎回あんま戦力になる気がしないんだよなぁ……。

 俺が若干呆れた表情を浮かべると、トーレさんはフッと微笑みながらキリッとした表情で告げる。


「話は聞かせてもらった! 私が力を貸そうじゃないか!」

「なっ……」


 その言葉には驚いた。つまり、トーレさんは俺とエリーゼさんの会話をどこかで聞いていたということらしい。店の中で話していたはずなのだが、いったいどうやって……。


「そうなんですか、驚きました。いったいいつから聞いてたんですか?」


 驚きながら聞き返すと、トーレさんはフッとニヒルな笑みを浮かべて告げる。


「……いや、『一度言ってみたかっただけ』で、実際はなんの話も聞いてないから『事情はサッパリ分からない』。ついでにいうと、カイトの反応的に本当になにかありそうで、私の方がビックリしてる」

「……」


 適当に言ってただけなのかよ!? な、なんというか……安定のトーレさんという感じだ。相変わらず、ノリと勢いで行動している感じがヒシヒシ伝わってきた。





シリアス先輩「トーレのキャラが濃すぎて、コイツ登場するだけで『大事になりそうなハラハラ感』が全部消し飛んで『なるほどコメディー路線か』って感じになってしまう気がする」

???「実際その方向に進みそうな感じがしますね」

シリアス先輩「そういえば、アリス的には快人の出店はOKなの?」

???「え? 別に全然OKでしょ? そもそも、カイトさんが働く云々の問題は、カイトさんが誰かに雇われるっていう状態を許容できないのが居るのと、カイトさんが金銭目的で起業したりするとアニマさんが責任を感じたり、カイトさんと過ごす時間が減る可能性にクロさんやシャローヴァナル様が動く可能性が高いのが問題であって、今回みたいに単に祭りを楽しむ一巻という形であれば、なんの問題も無いですよ」

シリアス先輩「なるほど」

???「というか、私……ごほん、アリスちゃんもマスコットキャラとして着ぐるみ着て手伝うのもいいかもですね」

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― 新着の感想 ―
[良い点] トーレさんルートだったか
[一言] とりあえず快人さんが働くこと自体は問題なくても、客として伯爵級以上の実力を持つ死王達、エデンさん、神族を引き連れてシャローヴァナル様が来るのはほぼ確定だろうし、さらに祭りの雰囲気が好きそうな…
[良い点] トーレさんかわいい
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