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十の尾を持つ狐③



 現在俺とアイシスさんの前では、アリスがなんとも言えない微妙な表情を浮かべていた。ちなみに狐はアイシスさんが抱きかかえている。

 アイシスさんは、死の魔力の影響により魔物や動物からは全力で逃げられてきたので、自分を怖がらずに懐いている狐の様子に凄く嬉しそうだ。


「たぶん、というか、間違いなく、その子は……」

「キュゥッ!?」

「……アイシスさんとカイトさんにはデレデレなのに、私は怖がるんすね。アイシスさんを怖がらずに私を怖がるってのも、なんか新鮮な感じですね」


 アリスの言葉通り、狐は俺やアイシスさんには凄く懐いているのだが、アリスが軽く手を伸ばしただけで嫌がるような反応で、アイシスさんに縋りつくような動きをする。

 それに対してアリスが魔力を引っ込めると、今度は不思議そうに首を傾げるので、アリスの魔力を見て怯えているのだろう。

 ただ、魔力を引っ込めていても……アリスが触れようとすると嫌がる仕草をするので、俺やアイシスさんに見せる反応とは違っていた。


「……話を戻しますが、その子はミスティックシルバーでしょうね」

「ミスティックシルバー? それって、前に言ってた最強の魔物のことだよな……けど、たしかミスティックシルバーって……」

「ええ、ミスティックシルバーは魔力災害の一種、膨大な魔力の影響で暴走した魔物って話しましたね。まぁ、私も驚いているわけなんですが、特徴を考えるとそうとしか思えないんですよね」

「……そっか……ミスティックシルバー……だから……あんな滅茶苦茶な……普通に生きてくのも難しいような魔力構造をしてたんだ」


 アリスが告げた言葉を聞いて、アイシスさんは納得した様子で頷いた。そういえばさっきアイシスさんが、もっと前に体が崩壊していてもおかしくないって言ってたな。


「ええ、普通なら魔力が暴走して強烈な魔力光に包まれて暴れまわっているはずなんですが、この子は例外中の例外……類まれなセンスで、本来暴走するはずだった魔力をコントロールして抑え込んでしまった。そして、本来なら暴走状態の魔物の魔力構造を組み替えるなんて不可能ですが、この子の持つ天性のセンス、魔力操作に関しては魔界一と言っていいアイシスさんの技量、極めて特殊な適応力をもつカイトさんの魔力……それらが奇跡的に噛み合ったことで、安定したのがいまの状態でしょうね」

「……凄い発見……だよね?」

「凄いなんてもんじゃないですよ。そもそも、十尾のミスティックシルバーってだけで、過去に前例がないですし、それが自壊せずに安定してしまうなんていままでの研究を覆す事態です。しかも、この子……死の魔力をまったく恐れていない。おそらくアイシスさんの魔力かカイトさんの魔力を体内に取り込んだことで、なんらかの変化を起こしたのでしょうが……割と、私も頭抱えたくなるぐらいです」


 どうも、本当に異例みたいで珍しくアリスがマジで悩むような表情を浮かべていた。


「検証しようにもミスティックシルバーは希少過ぎますし、基本的にすぐ自壊するので調査も難しい上、根本的に大人しくしてくれないので魔力構造をいじるのも無理……お手上げっすね。まぁ、その辺は追々考えるとして、その子の成長経過とかは見守りたいところですが……アイシスさん、その子、どうするんすか?」

「……えっと……どうしよう?」

「親とかは、居ないのかな?」

「居たかもしれませんが、その子がミスティックシルバーに変質した時点で逃げるかショック死してるでしょうし、仮に生きてたとしてもその子はもう完全に別種と言っていい状態ですから、子と認識はしないでしょう。まぁ、元種族によっては魔力から生まれて親自体いない可能性もありますね」


 アリスの言葉を聞いて、アイシスさんは一度頷いて狐の目を真っ直ぐに見ながら口を開いた。


「……どうしたい?」

「キゥ……」


 ここまでの様子を見るに、この狐はかなり賢く俺たちの言葉もある程度理解しているような感じだった。実際にアイシスさんの言葉を聞いた狐は、アイシスさんにしがみつくような動きを見せた。

 感応魔法から伝わってくる感情でも、アイシスさんから離れたくないという気持ちが伝わってきた。


「……じゃあ……私のところに……来る?」

「キュッ!」

「嬉しそうに尻尾を振ってますね」

「……うん……凄く可愛い」


 アイシスさんも狐のことをかなり気に入ってるみたいで、嬉しそうに狐の頭を撫でていた。その様子を見ていて、俺はふとあることを思い付いて口を開く。


「アイシスさん……その子に、名前を付けてあげたらどうですか?」

「……名前……う~ん」


 アイシスさんは数秒考えるように目を閉じたあと、ゆっくり目を開けて狐に告げる。


「……『ウルペクラ』……で……どうかな?」

「キュッ!」

「その子も気に入ったみたいですね。呼ぶときは、ウルって略したりしてもいいかもしれませんね」

「キュキュッ!」

「賛成するみたいに頷いてる……本当に頭のいい子ですね」

「……うん……これからよろしくね……ウル」

「キュッ!」


 こうして、アイシスさんの元に新しい家族……前例のない十本の尾を持つミスティックシルバーのウルペクラが加わることとなった。





???「シリアス先輩~終わって、そろそろほのぼのに移行しそうっすよ」

シリアス先輩「イチャラブ終わって、ほのぼのか……まぁ、それなら……」

???「いえ、シリアス展開終わってほのぼのです」

シリアス先輩「……ぱーどぅん?」

???「シリアス展開が終わって、これからほのぼのになりそうです」

シリアス先輩「………‥……え?」

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― 新着の感想 ―
[良い点] シリアス先輩の反応が想像通り
[一言] アイシスさんもカイト君も居ない時に、スピカと仲良くなってそう ウル「なんかあの花から魔力を感じるなー」 スピカ「なんか新しい子が来たけど、もふもふして、かわいいなぁ」 みたいに
[一言] シリアス先輩…ぷぷっ…ww出番なのにいないだなんて…ぷぷっww
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