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教主の誘い②



 オリビアさんの提案でお茶をいただくことになり、教主の間と呼ばれているオリビアさんの部屋に移動する。

 中はほぼ変わっていなかったが、豪華な椅子の横にワインとか置けそうな小さいテーブルが追加されている。完全にひとり用のテーブル……うん、アリスから買っておいてよかった。


「オリビアさん……俺だけ座って茶を飲むというのも、俺としては居心地が悪いので……」

「え? し、しかし、椅子はひとつ……あっ」


 俺の言葉を聞いて戸惑っていたオリビアさんだったが、すぐになにかに気付いたのか表情を青ざめさせる。

 そんなオリビアさんの前で、アリスから購入したテーブルと椅子を取り出す。


「とりあえず、この椅子とテーブルは差し上げますので、これを使いま……えっと、オリビアさん? なにをしているのでしょうか?」


 俺が言い切るよりも早く、オリビアさんは流れるような動きで地面に両膝を着けて頭を下げた。土下座である。あまりにもスッと淀みない動きでやるもんだから、反応が遅れてしまった。


「わ、私の考えが及ばないばかりにミミ、ミヤマカイト様に金銭を――っ!?」

「はい、起立」

「あ、あの? ミ、ミヤマカイト様!?」


 とりあえず、長くなりそうな始まりだったので、オリビアさんの肩を掴んで強引に立ち上がらせた。


「そのくだりを長々とやってると、本当に時間がかかりそうなので……いいですか? 不敬でもないですし、俺は迷惑もかけられてません。不快にも感じてないですし、もちろん怒ってもないです。なので、謝罪は必要ないです」

「あ、い、いえ、しかし……」

「そして、この椅子とテーブルは、今日光永くんたちの結婚式を取り仕切ってくれたお礼としてのプレゼントなので、なにも問題は無いです。いいですね? はい、返事」

「か、かしこまりました!」

「それじゃあ、お茶楽しみに待ってますね」

「は、はい!」


 う~ん……やっぱり、オリビアさん相手だと多少強引に話を進める方がいいのかもしれない。まぁ、今回に関しては、テーブルと椅子をあげると言えば間違いなくこうなるだろうと思っていたので、移動中に対応を考えておけたのも大きい。

 とりあえず、オリビアさんは戸惑いつつも流される形でお茶の準備に移動したので、俺は室内を見てよさそうな位置にテーブルと椅子を設置して、椅子に座って待つことにした。


「……ミヤマカイト様、何種類かご用意しているのですが……どれがよろしいでしょうか?」

「へぇ、いろいろ……うん? ほうじ茶、玉露……抹茶? 日本茶を用意してくれたんですか?」

「はい。いつかミヤマカイト様にお出しする時のため、ミズハラカオリさんよりある程度は教わり、その後は書物などを取り寄せて勉強しました。煎茶、玉露、抹茶、玉緑茶、茎茶に芽茶、玄米茶、番茶……その他、一通りは覚え、各地より取り寄せましたので、ミヤマカイト様の好みのものをご用意できると思います」


 ……な、なんて真面目な……俺をもてなすために、異世界の日本茶をそこまで勉強してるとは……というか、当たり前のように語ってるけど、俺が知らないお茶も口にしていたりするので、たぶんもうすでにオリビアさんの方が詳しそうな気がする。

 あと、もしかして抹茶も点てられるのだろうか? ……出来そうな気がする。他はともかく、俺をもてなすための用意に手を抜いたりしない方だろうし、その辺もバッチリ勉強している気がする。


「……ほうじ茶で、お願いします」

「かしこまりました。少々お待ちを……」


 茎茶とか芽茶とかは、よく分からなかったので、ここはとりあえず馴染みあるお茶にしておく。というか、この世界って結構いろいろな日本茶があるんだな……紅茶を飲む機会が多かったけど、日本茶も恋しいし、緑茶とかも買っておきたいな。

 ノインさんとかに聞いたら、いい店を教えてくれそうな気がする。絶対その辺も拘りが強いだろうし……。


 そんなことを考えていると、奥からオリビアさんが紅茶用のカートを押して出てきた。急須に湯のみ、茶托まで……凄い本格的である。

 ただ、うん……銀髪ロングで碧眼で、豪華な司祭服っぽい服装の……まさに聖女みたいな見た目のオリビアさんが、急須使ってお茶入れてるのは……結構違和感凄いな。


「お待たせいたしました。ほうじ茶は100度が適温となっており、熱めですのでお気をつけください」

「ありがとうございます。いい香りですね。あっ、オリビアさんもそっちの椅子に座ってください」

「かしこまりました。茶菓子を用意してから席に付かせていただきます」


 茶菓子……なんだろう? 煎餅かな和菓子かな? 個人的には甘めの和菓子が欲しいところだが……。


「どうぞ」

「……」


 ……クッキー出てきた。いや、別に合わないことは無いんだろうが、和菓子を期待していただけに少し残ね――はっ!?


「……あ、ああ、あの、なな、なにか粗相が……」

「まったくそんなことないです! いや、丁度クッキーが食べたかったんですよ!! 望んだ茶菓子が出てきたので、ビックリしました!」

「そ、そうでしたか……よかった」


 あ、あっぶねぇ……よく人に言われることではあるが、俺は顔に出やすいみたいなので、たぶん無意識のうちに残念がってる感じの顔になってたんだろう。オリビアさんがいまにも泣き出しそうな顔になってた。

 しかし、すぐに気付けたおかげで、なんとかフォローできた。まぁ、実際前にあってからまだそんなに日が空いてるわけじゃないし、あれから勉強したとして、茶菓子まで勉強が間に合わなかったんだろう。

 むしろ、日本茶についてこの短期間で、温度とかまで勉強しているのが凄い。


 あ、いや、そういえば和菓子はいくつかマジックボックスに入ってたし……あとで出すのもいいかもしれないな。





シリアス先輩「ちなみに茎茶はその名の通り茎のみの茶で、爽やかな香りと甘みが特徴だ。地域によっては棒茶って呼ばれることもある。芽茶は芽の先の細い部分を選別した茶で、基本的に一番茶や二番茶の芽をから選別するため、高級な茶の旨味が多い。ただかなり味が濃く出るので、好みが分かれるお茶だね!」

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― 新着の感想 ―
[一言] 相手によって察する能力が段違いなカイト君、まあ相手が相手なパターンだが
[一言] 碁石茶、バタバタ茶、阿波晩茶
[良い点] 甘さじゃなくても詳しいシリアス先輩
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