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結婚式参加⑦



 シロさんの説得は中々に難航し、結婚式開始の時間となって式場に移動する間も続いていた。


(私が行けば、それはそれで箔が付くのでは?)


 シロさんが着たらもはや箔とかそういう話じゃなくて、ただの大事件になっちゃうんですよ。しかも、シロさんが来るとなったらクロノアさんたちも来るでしょ? 大騒ぎじゃないですか……。

 光永くんとカトレアさんの大切な式なんですから、滅茶苦茶にしないで上げてください。


(ふむ……分かりました。快人さんがそこまで言うのであれば、式場に行くのは諦めます)


 しかし、根気強く説得を続けたかいもあって、シロさんは最終的に納得してくれた。シロさんは嘘はつかないので、諦めたと言ったのならそれを後で覆したりはしない。

 式の開始にギリギリではあったが……なんとかなってよかった。


 ホッと胸を撫で下ろしつつ、席に座って式の開始を待っていると、ほどなくして式が始まった。


 中央左右に位置する扉が開かれ、白いタキシードの光永くんと、純白のウェディングドレスを着たカトレアさんが、それぞれの扉から入場してくる。

 ふたりはゆっくりと道を歩き、式場の中央で合流し、光永くんが差し出した手にカトレアさんが手を重ね。二人手を繋いで中央の道を歩き始める。


 そしてふたりが祭壇の前に辿り着くと、オリビアさんが静かに世界を作り出したシロさんへの感謝の言葉を紡ぎ出す。

 これは定型文で、必ず式の最初に進行が告げるのだが……かなり長く、十分ほど丁寧にシロさんへの感謝を述べていた。

 それが終わると、一息空けていよいよ式の本番である誓いの言葉だ。


「……今日のよき日、ミツナガセイギ、カトレア・リア・シンフォニアのふたりは夫婦として結ばれます。神界の神々、そして神域に座す世界の神、シャローヴァナル様に代わり、私が誓いの言葉を聞き届けます」


 静かな声で前置きをしたあと、オリビアさんは光永くんに視線を向ける。


「……ミツナガセイギ」

「はい!」

「貴方はカトレア・リア・シンフォニアを妻に向かえ、この先にいかなる困難が待ち受けようとも、彼女を守り、愛し、共に幸せへ至ることを誓いますか?」

「……誓います!」


 光永くんがしっかりと宣言したのを聞き、オリビアさんは一度頷いてからカトレアさんに視線を向ける。


「……カトレア・リア・シンフォニア」

「はい」

「貴女はミツナガセイギを生涯唯一の夫とし、進む道に苦難を伴うとしても、彼を支え、愛し、共に未来へと歩き続けることを誓いますか?」

「誓います」


 カトレアさんも堂々とした様子で誓いの言葉を告げると、オリビアさんは一度頷き祭壇に置かれていた本に手をかざす。

 すると空中に光る文字で、光永くんとカトレアさんの名前が浮かび、その名が重なり合うように本へと吸い込まれていった。


「いま、愛の誓いは成りました。ミツナガセイギ、カトレア・リア・シンフォニア……世界を見守る創造神シャローヴァナル様と、ここに並ぶ者たちを証人とし、朽ちることなき愛を示しなさい」

「「はい」」


 その言葉を合図に、光永くんとカトレアさんは向かい合って、誓いの口づけを行い、それに合わせて会場は拍手の音に包まれた。

 少しして拍手が止むと、オリビアさんは祭壇の前から少し横にずれ、奥に位置する巨大な鐘を差し示す。


「……それでは、両者とも、世界の神たる創造神シャローヴァナルへの婚姻の報告として、共に愛の鐘を鳴らしてください」

「「はい」」


 光永くんとカトレアさんは、再び出を繋いで祭壇の奥に進み、巨大な鐘をふたりで鳴らす。大きく綺麗な鐘の音が式場に響き渡ってなり続ける。

 その音が鳴りやんでから、オリビアさんは式を締めくくる言葉を告げる。


「よい鐘の音でした。きっと、創造神シャローヴァナル様にも音色が届いたことでしょう」


 その言葉のあとで、オリビアさんか係から受け取った美しいブーケをカトレアさんに手渡し、それを受け取ったカトレアさんが光永くんと一緒に中央の道に移動し、起立した皆の拍手を受けながら外へ出ればひとまず式は終了となる。


(……ちゃんと鐘の音が聞こえたと言った方がいいですか?)


 言わないでください。マジで、騒ぎになりますから……。


 ともかくこれで式は終了ではあるが、最後に締めくくりとして式場の外に移動してのブーケトスがある。

 係の人の誘導に従って、外に出て教会の入り口に立つふたりの近くに移動する。足元に線が引いてあって、ブーケトスに参加する人は線の中に入り、参加しない人は線の外で待つ形だ。

 葵ちゃんや陽菜ちゃんは参加、リリアさんたち……というか、爵位が高い貴族は基本的に不参加か、従者に代理参加させる。


 ……代理参加させてとったブーケに意味があるのかは分からないが、まぁ、単なるイベントの一種だし、そこまで問題は無いかな。

 そんなことを考えつつ、教会の入り口に視線を向けると、幸せそうな笑顔を浮かべたカトレアさんがブーケを大きく弧を描くように投げ……『投げたブーケが、突如空中に開いた裂け目に吸い込まれた』。


(現地に行かなければ問題が無いのですよね?)


 ……やりやがった……シロさん、やりやがった……確かに、行くのを諦めるとは言っていたが、ブーケ自体を諦めたとは言っていなかった。


 ……これ……どうやって収拾付ければいいんだ?





【カトレアのブーケトス】


【突如生まれた空間の裂け目がブーケを吸い込んだ】


【創造神の仕業だ】


【会場に戸惑いと沈黙が流れる】


【快人の胃に大ダメージ】


シリアス先輩「シロって、胃クラッシャーである快人に対して胃痛を与えられる数少ないキャラなんだよな……やはり最強キャラか……」

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― 新着の感想 ―
[一言] タスケテクローと思ったけど事情きいたら争奪戦しそう
[気になる点] なんか、この出来事をキッカケに 結婚式での花嫁のブーケが明後日の方向に行ってしまい 参列者の方にうまく届かないケースを 【女神様のいたずら】 と呼んで、新郎新婦両名を祝福した女神様が、…
[気になる点] コメントにあった、 『カトレアはシャローヴァナルにブーケをトスした者』というのが、すごく洒落てて好き。 姿を現さなくても、『ブーケ頂きました』の弁明が、 何にも勝る箔になる。
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