結婚式参加④
正義も交えて同行者が誰かを話し合っていると、ノックの音と共に声が聞こえてきた。
「ミ、ミヤマカイト様をお連れしました」
「ご苦労様。入っていただいて大丈夫ですよ」
係の者の声にカトレアが答えるが、その際の声を聞いたルナマリアがリリアに小声で話しかけた。
「……明らかに緊張した声でしたね」
「これは、居ますね。確実に、案内するものが恐縮するような誰かが……」
大物を連れてきたという予感はほぼ確信に変わり、大司祭であるグロリアも含めた全員の視線が扉に集中する。そんな中でゆっくりと扉が開かれ、快人が入ってきた。
「失礼します。遅くなってすみません」
「失礼いたします」
そして快人に続いて入室してきた人物を見て、全員の表情は驚愕に染まり、中でもグロリアは今にも目が飛び出しそうなほど驚いていた。
入ってきたのは、大司祭であるグロリアが来ている服よりも遥かに荘厳で神秘的な服を身に纏った女性……。
「きょ、きょきょ……教主様!?」
そう、快人が連れてきたのは教主オリビアであり、まさか己の上司といっても過言では無いような存在のオリビアが現れるとは思っておらず、青ざめた表情を浮かべていた。
そして同じく青ざめた表情を浮かべながら、リリアとルナマリアは小声で言葉を交わす。
「……お嬢様、教会で行う結婚式に……総本山のトップ連れてきましたよ?」
「本当に、あの人は……僅かでも油断した私が、愚かでした……お腹……痛い」
シャローヴァナル及び神族を信仰するこの世界では神教と呼ばれている宗教。その総本山と言えば、友好都市ヒカリにある中央大聖堂であり、トップこそ教主オリビアである。
というよりは、そもそもオリビアが友好都市の外に出てきていることが異常事態である。
「教主様、な、なぜ、ここに……」
「口を閉じなさい。いまより、ミヤマカイト様が発言されようとしています。ミヤマカイト様の言葉を遮ることは、即断頭台に送られてもおかしくないほどの不敬ですよ」
「……いや、そんな不敬は無いです」
慌てて尋ねてきたグロリアに厳しく告げるオリビアを見て、快人は若干呆れたような表情でツッコミを入れたあと正義とカトレアの方を向く。
「光永くん、カトレアさん、今日はおめでとうございます。急なお願いで申し訳なかったんですが、同行者としてオリビアさんを連れてきました」
「お、驚きました。ま、まさか教主様とは……お姿をお見かけしたことはありますが……」
「えっと、なんか結婚式に興味があったらしく、一度見て見たいってことらしいです。ですよね?」
「ええ、私もミヤマカイト様の指導を賜り、現在様々なことを勉強中の身です。私の属する組織が中心となって行う婚姻の儀……知識としては知っていますが、一度実際に見てみたいと考え無理を言って参加させていただきました。急な連絡と来訪となったことを、謝罪します」
「い、いえ!? どうか、お気になさらず!? お会いできて光栄です!」
さすがにこれほどの大物が出てくるとは思わなかったのか、カトレアも非情に恐縮した様子でオリビアと挨拶を交わす。
そして、続けて正義とも軽く挨拶をしたあとで、オリビアはグロリアに視線を向けた。
「……たしか、シンフォニア王都聖堂の大司祭でしたね? 今回の式は、貴女が?」
「は、はい! グロリアと申します。恐れ多くも、今回の式の進行を任されております!」
背筋を伸ばし緊張した様子で答えるグロリア……彼女にとっては、オリビアは数年に一度会えるかどうかというほど立場が上の存在であり、ガチガチに緊張していた。
グロリアの言葉を聞いて一度頷いたあと、オリビアは快人の方に視線を向けた。
「……ミヤマカイト様。今回婚姻を結ぶふたりは、ミヤマカイト様にとって重要な人物なのでしょうか?」
「え? ええ、光永くんは同郷で後輩ですし、カトレアさんともそれほど多くは話してないですが、誕生日とかにもお祝いしてもらいましたね」
「なるほど……」
快人の言葉を聞いて、オリビアは少し考えるような表情で顎に手を当て、少ししてカトレアに視線を向けつつ告げた。
「……私が行いましょうか?」
「え? えっと……」
「ミヤマカイト様にとって重要な存在であるのなら、私……ひいては神教においても重要な存在です。そちらさえよろしければ、婚姻と祝福の儀を私が行おうかと思うのですが、いかがでしょうか?」
「きょ、教主様自ら!?」
「ええ、手順は一通り頭に入っています。実際の動作など細かな部分は打ち合わせが必要でしょうが、その辺りは大司祭に教われば問題ないかと……いかがですか?」
「そ、そそ、それはもちろん大変な栄誉ですが……よろしいのでしょうか?」
ハッキリ言ってオリビアの申し出は、カトレアにとって飛びあがりたいほどに素晴らしい提案だった。教主に祝福を行ってもらうなど、前代未聞であり、これ以上ないほどの箔となる。
「ええ、そちらさえ問題ないのであれば……大司祭も、かまいませんね?」
「もちろんです!」
「では、細かい進行と手順について、このあと別室で打ち合わせ行いましょう。知識として記憶しているのみなので、貴女の指導に期待しています」
「光栄の極みです!!」
オリビアの期待しているという言葉に、グロリアは感極まった表情を浮かべたあと、ハッとした表情で快人の方に向き……快人に対して祈りの姿勢で、祈りをささげた。
もちろん、捧げられた快人の方は、なんとも言えない微妙な表情を浮かべていた。
シリアス先輩「やっぱり、オリビアだったか……」
???「ボディブロー要員 (グロリア)が登場したのが大ヒントでしたね」
シリアス先輩「複数のキャラの胃に同時に痛みを与えるボディブローの名手……」




