結婚式参加②
一時快人と分かれたリリアたちは、一足先に正義とカトレアの元へ向かっていた。係りの者に案内されてたどり着いたのは、まずはカトレアのいる部屋であり、数度のノックのあとでリリアたちは中に通された。
「リリアお姉さま!」
「久しぶりですね、カティ。今日はおめでとうございます」
リリアの姿を見て嬉しそうに近づいてきたカトレアと軽く挨拶をしたあと、続けてルナマリアたちも順に挨拶をする。
挨拶が終わると、ふとリリアは室内にもうひとり、使用人ではないものが居ることに気付いて軽く一礼する。
「これは、グロリア大司祭、ご無沙汰しております」
「お久しぶりです、リリアンヌ王女……いえ、いまはリリア公爵でしたね」
「大司祭がいらっしゃるということは……」
「はい。今回の結婚式の進行を任されています」
上品な司祭服に身を包んだ女性……グロリアと話すリリア、それを少し離れた場所で見ながら葵はルナマリアに問いかけた。
「ルナさん、あの方は?」
「シンフォニア王国首都大聖堂の大司祭……いわばトップですね。さすが王女の結婚式ともなれば、教会の方も大物が出てくるようです」
ルナマリアの説明を聞いて、葵と陽菜が納得したように頷くと、カトレアが軽く周囲を見渡しながら首を傾げ、グロリアとの話を終えたリリアに声をかける。
「……あの、リリアお姉さま? ミヤマ様は、いらっしゃってないのでしょうか?」
「ああ、カイトさんは、同行者を迎えに行きましたよ。転移魔法での移動なのですぐに来るとは思いますが……」
「あっ、そうなのですね。ところで、まだ私は伺ってないのですが、同行者はどなたなのでしょうか?」
「ごめんなさい、私たちもさっき聞いたばかりで誰かまでは……」
「そうですか……叶うなら、六王様や最高神様に来ていただきたいのですが……」
カトレアの呟き、六王や最高神の来訪を望むかのような言葉……その気持ちは、リリアにもよく理解できていた。
というのも、リリアもかつてアルベルト公爵家を立ち上げたばかりの頃は、コネクション作りや箔付けに苦戦していた。
快人の影響によって求めていたより遥かにすさまじい縁を得てしまったが、同じ貴族としてカトレアの気持ちは分かる。
「カティの気持ちは分かります。新しい貴族家となると、やはりコネや箔といったものも必要ですからね」
「はい。特にセイギは異世界人なので、こちらでの交友はまだ少ないですからね……出来れば、この式で頼れる筋のひとつやふたつは得ておきたいものです」
「私も以前苦労したので気持ちは分かるのですが……今回に限っては、あまりカティの希望通りにはならないかもしれません」
「あ~……分かってはいましたが、ミヤマ様と私たちの共通の知り合いが少なすぎますね。いちおう幻王様などは、ミヤマ様が居る場でお目にかかっているのですが……」
「……アリス様はまぁ……来ていると言えば来ているんですが……姿を現すことはないでしょうね」
残念そうな表情を浮かべつつも、カトレアもある程度予想していた様子だった。ちなみに、アリスは普段快人の護衛をしているので、快人が居るならその場にいるのは間違いないのだが……性格的に考えても、結婚式に参列することはない……少なくとも幻王としての姿で参列することはあり得ない。
「しかし、そうなると同行者とは?」
「……おそらくですが、カイトさんは最近過去の勇者役、移住者の方々と知り合っていますので、そういった方々であれば可能性が……」
「……リリアお姉さま?」
「カティ、ちょっと待ってください」
言葉を途中で止めたリリアは、少し青ざめた顔でルナマリアの元に近づき、小声で話しかけた。
「……ルナ、完全に失念していたのですが……ノイン様という可能性は?」
「あり得ますね……しかし、想像したくありませんね」
「初代勇者様なんか来たら、大パニックですよ! 生存している事実自体、限られた方しか知らないのですから……」
「ふたりとも……エデン様という可能性は?」
ビックネームは来ないだろうと思っていたところに、可能性があるビックネーム……それこそ場合によっては、六王や最高神が来るより大事になりそうな者の存在を思い出して焦るリリアとルナマリアの元に、ジークが近づいて声をかける。
「……ありえますか? しかし、あのお方は自身の世界以外の者は、ほぼ虫以下のようにしか思ってないような方ですが……」
「ミツナガ様は、我が子に該当するのであり得ないというわけではないと思いますが……来たら地獄絵図ですよ」
そしてもうひとり思い浮かんだ存在……とてつもなくヤバい神。ノインに比べれば、こちらが来る可能性は低い。
エデンが肉塊と呼ぶような有象無象が大量にいる場所にわざわざ足を運ぶ可能性は低い……しかし、我が子を溺愛するエデンであれば、正義の晴れ姿を見るために来るという可能性も捨てきれなかった。
「……あくまで噂ですが、六王祭であのお方に地獄を見せられた貴族は多いようで、それなりの数の貴族のトラウマになってますからね」
「私やルナは貴族の噂に関してはよく知らないのですが……そんなに凄かったんですか?」
「ええ、なんでもカイトさんに害をなした場合どういった目に合うか……『実際に体験させられた』者がそこそこいるみたいです」
「……そうですよね、あの方シャローヴァナル様に匹敵する神ですもんね。起こりえる未来を先に体験させるとか、そんなこと簡単にできますし、性格的に躊躇なくやりますよね……お嬢様、大変です。まったく安心できませんよ」
「……誰を連れてくるか、ちゃんと聞いておくべきでした」
少しまでの穏やかな表情はどこへやら、リリアは痛むお腹に手を当てつつ、青ざめた表情を浮かべて天を仰いだ。
シリアス先輩「そうか、周囲に与える衝撃的な話で言えば、初代勇者・九条光は、六王や最高神を凌ぐほどのレベルか……なにせ、生きていること自体が大スクープだし……」




