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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
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何もかも滅茶苦茶すぎる

 セーディッチ魔法具商会、会長……セイ・リベルスター。名前だけは知っていたが、直接会った事は無かった方で、気にはなっていた。
 リリアさんの屋敷を訪れたセイさんは、白い顎鬚が特徴的な初老の方で、優しそうな顔立ちと強い光を宿した瞳が経験豊富な老人と言う印象を受けた。

「初めましてミヤマ殿、お噂はかねがね……こうして直接お会いできて光栄ですよ」
「あ、いえ、こちらこそお会いできて嬉しいです。よろしくお願いします」
「冥王様、セーディッチ魔法具商会会長……そして『死霊の大賢者』とは、物凄いお客様方ですね。お嬢様?」
「ひ、ひゃい!」
「……せめてもう少し耐えて下さい」

 どうもクロやセイさんだけでなく、ゼクスさんも人界ではかなり有名な高位魔族らしい。
 なんでも、魔法学校の基盤を作った方で、大賢者と呼ばれているとか……空座の守護者に死霊の大賢者、それに初代勇者……クロの身内ってとんでもない方ばっかりだな。

「……クロもこんなんだけど、冥王だし」
「カイトくん、せめて心の中だけにしとこうよ。全部声に出てるからね」

 呟く俺の言葉に反応するクロの胸元には、昨日俺が贈ったネックレスが付けられており……正直照れくさくて、まともに顔が見れない。

 ともあれ来訪したクロ達を応接室に案内し、ゼクスさんとセイさんもリリアさんへ挨拶をして、いよいよ本題へ……って、あれ? なんか、とても重大な事を忘れている様な気がする。
 今回の訪問は、リリアさんへの挨拶もあるけど、俺が提案した電卓の権利関係についての話もある筈だが……俺、それ、リリアさんに言ったっけ?

「それでは、リリア殿。こちらをご覧ください」
「……これは? 魔法具ですか?」
「ええ、ミヤマ殿が発案し、我々が形にしたものです」
「……は?」

 ゼクスさんの説明を受け、リリアさんは時が止まった様に硬直する……あっ、しまった。やっぱ言ってなかったか……
 そしてリリアさんがギギっと音がしそうな感じに首をこちらに向け、地の底から這い出る様な声で呟く。

「……カイトさん?」
「は、はい!?」
「……どういう事ですか?」
「あ、いえ、その……以前クロにお願いして、俺達の世界にあった道具を作れないかと……」

 またお前の仕業かとでも言いたげなリリアさんの表情に怯えつつ言葉を返すと、リリアさんはしばらく沈黙し……大きく溜息を吐く。

「本当にカイトさんは、いつもいつも……はぁ……失礼しました。ゼクス様。それで、その魔法具と言うのは?」
「こちらです。計算を行える魔法具となっております」
「計算を!? 魔法具で!?」

 やはりこの世界の方達にとって、魔法は魔法、数学は数学で別の物と言う考えが強いみたいで、リリアさんはゼクスさんの言葉に驚いた様な表情を浮かべていた。
 そしてゼクスさんはピンポン玉位の魔法具を取り出す……って、ちっさっ!? アレが、電卓になるの?

 予想より小型な事に俺が戸惑っていると、リリアさんは緊張した様子でその魔法具に触れる。
 すると魔法具が微かに光を放ち、空中に数字と計算式が浮かび上がる。
 すごっ!? 空中に数字が浮かんで、それをタッチする形式とは……これ、完全に俺達の世界の電卓越えてない? あ、いや、関数計算とかは出来ないのかもしれないけど……改めて魔法って凄いな。

 リリアさんはしばらくその魔法具を操作し、驚愕した表情を浮かべたままでクロ達の方を向く。

「……素晴らしい魔法具ですね。商会は勿論、貴族や王宮もこぞって欲しがるかと……」
「ええ、そしてその魔法具ですが、術式を組んだのは当商会ですが……発案者はミヤマ殿です。そして、ミヤマ殿はクロムエイナ様が懇意にしている御方……当然、当商会としても半端な扱いをするつもりはありません」

 リリアさんの言葉を受け、セイさんが本題らしき部分を口にする。

「そして当商会としては、純利益の半分をミヤマ殿が得る権利を持つと考えております」
「成程、お話しは分かりました。つまり、今後カイトさんには定期的に大金が入る。その管理や窓口を当家にと言う事……」
「違います」
「……え?」

 どうやらリリアさんは商会との取引になる為、俺にアルベルト公爵家の名前を貸せば良いと考えたのか、しっかりした口調でそれを了承すると伝えようとしたが、その言葉をセイさんが途中で遮った。

「ミヤマ殿は、この魔法具において発生する利益を、アルベルト公爵家に譲渡したいと申しています」
「……は? え、えと……す、すみません。ちょっと聞き間違えたみたいで……もう一度お願いします」
「この魔法具によって発生する純利益の半分を、ミヤマ殿はアルベルト公爵家へ譲渡したいそうです」
「……は?」

 今度こそリリアさんは完全に固まった。
 しばらくそのまま時が止まった様に沈黙が流れた後、リリアさんはハッとした表情で身を乗り出す。

「駄目です! それは、あくまでカイトさんが得るべき利益です! それを私が貰う等出来ません!」
「いえ、しかし、ミヤマ殿の意向では……」
「駄目です! そんな事は絶対に受け入れられま――「リリアちゃん」――ッ!?」

 考えればこうなるのは当然かもしれないが、ドが付く程真面目なリリアさんは、利権の譲渡と言う事に納得出来ないみたいで、必死の形相で否定の言葉を投げかけていたが、そこへ沈黙していたクロが口を開く。

「……クロムエイナ様?」
「リリアちゃんの言い分は分かるよ。何もしてないのに、カイトくんのお陰で利益を得るのは、納得できないんだよね?」
「……はい」
「でもさ、カイトくんは現時点でお金を必要としていない。いや、むしろ今でさえ白金貨100枚以上持ってるんだよ? これ以上手にしても、困るだけなんじゃないかな?」
「そ、それは……」

 静かに告げるクロの言葉に、リリアさんは少し言い淀む。

「それにカイトくんは一年経てば……元の世界に帰るんだよ? カイトくんの事を想うなら、むしろそう言う足枷になる様な面倒事は、引き受けてあげた方が良いんじゃないかな?」
「……」
「勿論、さっき言ったみたいにリリアちゃんの気持ちも分かるよ。だから、こうしない? カイトくんが元の世界に戻るまでの間はカイトくんが権利を持つ、そしてカイトくんが帰った後はリリアちゃんに権利を移す。どうかな?」
「……た、確かに……それなら……」

 流石はクロと言うべきか、良い妥協案を提示してくれて、リリアさんも考える様な表情を浮かべた後で頷く。
 それで話は終わりかと思ったが、クロは今度は俺の方を向き口を開く。

「でも、カイトくん的には、今以上お金はいらないんだよね?」
「ああ、正直、今でさえ使い切れそうにないし……」
「うん。だから、こうしよっか……カイトくんがこの世界に居る間の権利は、ボクが買い取る事にするよ」
「買い取る?」
「うん。って言っても、お金でじゃないよ。カイトくん転移魔法の魔法具欲しがってたみたいだから、権利をこっちに貰う代わりに……ボクがカイトくんに転移魔法の魔法具を作ってあげる」
「ッ!?」

 クロの提案は確かにありがたいものだった。
 現在俺は日本円にして10億円以上の金を所持しており、とても使い切る事は出来ないだろうし、更に増えたとしても困るだけだった。

 転移魔法の魔法具は欲しかったし、丁度買おうかと思っていた所だった。
 ただ俺に魔法具の知識は皆無なので、クロに相談して良い物をと考えていたが……クロが作ってくれるなら、ありがたい。

「勿論、権利の代わりにあげる訳だから……生半可な物は作らない。世界最高峰の性能にするよ」
「な、なんか凄そうだ……あっ、そう言えば、すっかり忘れてたけど、クロに見てもらいた物が……」
「うん?」
「シロさんから、前に魔水晶を貰ったんだけど……」
「シロから?」

 魔法具の話をしていたからか、ふと以前シロさんに貰った魔水晶の事を思い出した。
 結局なんだかんだ慌ただしくて、意識の外に置いていたが……よくよく考えてみれば、創造神であるシロさんがくれた魔水晶がまともな訳が無い。
 なので一度クロに見てもらおうと思っていた。

 俺がマジックボックスから取り出した白い魔水晶を受け取り、クロはそれを色々な角度から見た後……呆れた様な表情を浮かべた。

「……シロ、何てもの造ってるのさ……」
「えっと、やっぱりそれ、普通の魔水晶じゃないの?」
「……うん。普通の魔水晶は、空気中の魔力を吸収して蓄えるんだよ。ソレがどれだけ早いかとどれだけの容量を貯めておけるかが、魔水晶の純度なんだけど……これ、そう言う概念が無いよ」
「……どういう事?」

 何だろう、凄く嫌な予感がする。
 あの天然女神……一体どんなとんでもない物を送りつけて来たんだ?

「この魔水晶……『内部で魔力造り出してる』し『容量も高位魔族の全魔力ぐらい』あるんだけど……」
「……は?」
「流石シロ、この世界に存在しない……っていうか、常識の範疇超えた物簡単に作っちゃうとは……」
「……」

 シロさん本当に何してんの!? この世界の常識を越えた物創造しちゃったの!? ほ、本当にとんでもないというか……滅茶苦茶な方だ。

「う~ん。そうだね。これで魔法具作ろっか? この魔水晶で作れば、それこそ人界から魔界とかでも転移出来るし、再使用も数分で出来るよ」
「……そ、それは物凄く魅力的な……お願いして良い?」
「うん、任せといて」

 明らかに持て余してしまいそうな代物だったが、あの天然女神にツッコミ入れた所で、天然カウンターが来るだけだ。
 なのでクロに頼んで、転移魔法の魔法具にしてもらう事にした。
 魔界にも行ける様になれば、アイシスさんの所とかにも遊びに行きやすくなるし、移動手段が欲しいと思っていたのは事実だ。

「……カイトさんの行動範囲が広がる? ……目眩が……」

 穏やかに笑うクロにつられ、俺も笑顔を浮かべていると……何やらリリアさんが遠い目で呟いているのが見えた気がした。

 拝啓、母さん、父さん――クロ達が訪れ、電卓の権利関係でちょっと一悶着あったよ。それから、シロさんが以前くれた魔水晶の詳細が分かった。やっぱりあの方――何もかも滅茶苦茶すぎる。
















クロ「正直大体の事は建前で! カイトくんに手作りのプレゼントしたかった!!」

次回……竜王登場!

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