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閑話・同郷の縁 後編



 他愛のない会話をしつつ料理を勧め、香織は完成した定食を茜たちの前に出す。


「お待たせ!」

「お~美味そうやな」

「結構味には自信あるよ……あ~でも、ソースだけはちょっともうひとつって感じの味だから、本場出身の茜さんを満足させられる味ではないかも?」


 香織の言葉を聞いて、茜はテーブルの上に置いてあるソースらしきものが入った瓶に手を伸ばし、指先に一滴たらしてから一舐めした。


「……ふむ、悪うはないけど、ちょい味がぼやけてるな」

「そうなんだよね。けど、私が知ってるやつの中じゃ一番マシな味なんだけどね」

「なるほどな、ちょまってな」


 そう告げると茜はマジックボックスを取り出し、その中からソースらしき瓶を何本も取り出してテーブルに置く。


「それって、全部ソースなの?」

「そやで、料理ごとに合うソースってのは違うからな……さてこのコロッケは……うん。なるほど、このコロッケやったら、このソースやな!」


 なにもつけてない状態でコロッケを一口食べた茜は、それだけでどのソースが合うか分かった様子で一本のソースを手に取る。


「香織も味見してみるか?」

「じゃあ、一口……うん! 美味しい! 少しフルーティな感じのソースなんだね。口当たりがよくて美味しいね」

「せやろ、ちなみにこのソースはアルクレシア帝国の東で生産されてるソースやで」

「アルクレシア帝国かぁ、遠いなぁ。さすがに、仕入れるのは難しそうだね」


 アルクレシア帝国の東となると、友好都市からはかなり遠い。遠方からの仕入れとなれば、当然その文高くなるし、金銭的な面を考えても仕入れるのは難しそうだった。


「それやったら、ウチが仲介して仕入れたるで?」

「え? それは助かるけど……大丈夫なの?」

「ウチは転移魔法が得意でな、あちこち飛び回っとるから大した手間やない。同郷のよしみで、仲介の手数料も安うしとくし、他にも仕入れたいものがあれば相談に乗るで?」

「ありがたい。最近私の店も結構有名になっちゃって、味のクオリティももう少し上げたいって思ってたから、すっごく助かるよ」

「ほな、あとで詳しゅう打合せしようか……それにしても、有名に? なんや、雑誌で紹介でもされたか?」


 移動商会である三雲商会を通じでソースを買い付けることを提案したあと、茜は香織の言葉に首を傾げる。というのも、同郷である己にとっては懐かしくいい雰囲気の店だが……この世界ではあまり馴染みない料理も多いので、物珍しさはあっても有名になるのは難しい気がしたからだ。


「いや、そういうわけじゃないんだけど……口コミ、かなぁ?」

「ふむ……そういや、ここの席に予約席って札があるな。予約客がおるぐらい繁盛してんのか……その割には、店内は静かやけど……」

「あ~その予約客が原因で有名なんだよね。今日は夜に来る日だから、もうすぐ来店すると思うけどね」

「うん? 有名人ってことか?」

「……教主オリビア様」

「はっ? ちょ、ちょい待ち、教主様ってあれやろ? 都市代表やろ? いやいや、あの人勇者祭以外で大聖堂から外になんて出んやろ!?」


 茜も当然ながらオリビアのことは知っている。勇者祭以外で大聖堂の外に出ないという話も含めて……。


「……快人くんがね、連れてきたんだよ。それで、それ以後常連になってる」

「また快人か、アイツホンマどないなっとんねん」

「私も胃が痛い思いなんだけどね。ともかくそれで、オリビア様の贔屓の店ってことでちょっと有名にね」

「さよか、そりゃまた、香織もいろいろ苦労してるんやな」

「この苦しみを分かってくれる人と出会えて、すごく嬉しいよ」


 茜も快人に驚かされた経験があるので、香織の気持ちはよく分かった。不思議でもなんでもなく、両者は互いの苦労を分かり合い意気投合する。

 ある意味では快人のおかげでもあり、ある意味では快人のせいでもあるが、ふたりの絆が強固になった瞬間だった。


「おかげで繁盛してるけど、結構忙しくてね。私も六王祭とか行ってみたいなぁ~」

「快人に頼めばなんとかなるんちゃう?」

「……本当にね。なんか、大抵の問題は快人くんに頼んだら解決しそうだから怖いよね。けど、まぁ、私も先輩としてのちっぽけなプライドがあるからね。年下の後輩にそうそう泣きつくつもりはないよ」


 そう言って少し勇ましさを感じる表情でグッと拳を握った香織だったが、少ししてなにかを思いついたのか考えるような表情を浮かべた。


「……でもなぁ、若返りだけはちょっと揺れるなぁ……最近ちょっと肌のハリがなぁ……いや、まだ全然大丈夫なはずなんだけど、それでも年齢の影響は感じるように……」

「香織……先達としてアドバイスしとくわ。気を付けぇ、30超えてから油断してると、肌事情はマジでとんでもなく加速度的に悪化するで……」

「やめて! 怖い怖い!!」


 茜の言葉に戦慄するような表情を浮かべつつ、香織は若干真剣に……本当に若返りだけでも快人に頼んでどうにかならないかと、葛藤していた。





シリアス先輩「うん? 今回は中編生えなかったな」

???「砂糖回じゃねぇっすからね」

シリアス先輩「地味に今後も砂糖回は中編生やすみたいな言い方はやめろ……」

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― 新着の感想 ―
[良い点] カイちゃんの同郷組ハーレムを早く見たいね
[一言] 香織さんの若返り手段…… 香織さんがカイトさんに相談した場合にカイトさんはソレができそうな方々のうち誰にお願いするんだろう……まずはアリスにどうするべきか聞くパターンかねぇ 教主オリビア様っ…
[一言] こんな、日常回もよき
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