フィーア先生とのひと時 閑話
今回はフィーア先生のオススメのお店に連れて行ってもらった。非常に落ち着いた上品な雰囲気のレストランで、いい雰囲気の中で食事を楽しめた。
「美味しかったね」
「ええ、味もいいですし値段も手頃でいい店でしたね。ごちそうさまです」
「ふふ、さぁ、次はWANAGEだよ!」
「WANAGEってどこかに会場があるんですか?」
WANAGEでテンションが上がっていらっしゃる。いや、まぁ、たしかに先入観とか抜きにすれば、かなり迫力のある戦いなので……正直見る分にはかなり楽しい。
「うん。ちょっとだけ歩くけど、東区画に差し掛かる当たりのところにあるよ。ほかにも、王都には二ヶ所会場があるね」
「え? 計三ヶ所もあるんですか?」
「WANAGEは人気のスポーツだからね。それに三ヶ所ってのは、あくまで公式戦が行える公認会場ね。WANAGEを遊ぶだけなら、会場はもっとあるよ」
「結構競技人口多いんですね。かなりの身体能力が必要なスポーツなので、そこまで多くないのかと思ってました」
「あ~たしかに、公式戦とかに出るならそれなりの能力が必要なんだけど、普通に遊ぶだけならそこまでじゃないよ。凄い身体能力なのは基本的にプロのナゲリストだね」
「……なるほど」
アマチュア同士の戦いとかだと、そこまで派手な感じにはならないってことか……。
そんな風に会話をしながら移動すると、かなり大きめな建物が見えてきた。さすがに野球ドームとかってほど大きいわけではないが、それでも周りの建物と比べると明らかに巨大だ。
チケットブースト当日券を購入して入場する。客席にはかなりの人が居て賑わっているが、それでも超満員というほどではない。
「思ったよりは余裕を持って席に座れそうですね」
「今日は、対戦カードがいまいちなんだよね。今夜の出場選手で高位ランカーなのはベビーカステラ仮面だけで、他はちょっと……言い方は悪いけど、パッとしない選手が多くてね。勿論いい選手も多いんだけど、やっぱりランカーと比べるとね……今日の客は、殆どがベビーカステラ仮面のファンだと思うよ」
「高位ランカー同士の戦いはもっと人気ってことですね」
「うん。特に1位のナイトメアと2位のベビーカステラ仮面の対戦があると、チケットは飛ぶように売れるから、よっぽど運が良くないと買えないね」
う~ん、どうやら本当に凄い人気みたいだなWANAGE……。
まだ若干受け入れることに抵抗がある部分もあるが、とりあえずは納得して試合を見ていく。フィーア先生はパッとしないカードが多いという話だが、あまりWANAGEを見たことが無い俺にとっては十分すごい戦いの連続で、見ていると自然に体に力が入った。
そのまま何戦か行われたあと、会場に人が増え始め、先ほどまではまばらに見えた空席が埋まっていく。
『さぁ、いよいよ本日のメインとなる対戦……世界ランキング2位、ベビーカステラ仮面の登場だ!』
アナウンスに導かれるように会場を見ると、そこには名前通りベビーカステラの仮面を被ったクロが居た。
うん、なんというか……思った以上にまんまクロである。仮面というか、祭のお面みたいなの顔に付けてるだけだ。
「ベビーカステラ仮面は、すごく堅実な戦いをするんだよ。派手な技は滅多に使わないんだけど、ひとつひとつの動作が洗礼されていて、基本の技だけで大抵の相手を倒しちゃうんだよ」
「へ、へぇ……」
「相手が高位ランカーとかだと、派手で強い技も使ってくれるんだけど……今日は見れそうにないね」
フィーア先生が残念そうに呟いたタイミングで、会場のクロ……もといベビーカステラ仮面がチラリとこちらを見た。
かと思うとWANAGEの輪を左手に六つ、右手に七つ持つのが見え、直後にフィーア先生が驚いた表情で身を乗り出した。
「……あの構えは!? まさか、ジ・エンド!?」
「え? な、なんですかそれ?」
「ベビーカステラ仮面が過去に数度だけ使った必殺技……十五個中十三個のリングを一投で放つ絶技……ほぼ一撃必殺のような、超難易度のシュートだよ!」
「そ、そうなんですか……」
とりあえずなんか凄い技ということは分かった。あとたぶん、クロが俺たちを見つけて、サービスで派手な技を使ってくれようとしてくれているのも……。
そして、試合開始と同時にクロが両腕を振ると、投げられた十三個のリングが空中を凄まじく複雑な軌道で飛び回り、相手の防御を容易く抜けて、全てがポールを捕らえた。
『き、決まった~! 防御も反撃も許さず、ベビーカステラ仮面が一投必殺のジ・エンドで勝負を決めた!!』
瞬間、会場は大歓声に包まれた。いや、実際凄かったし、リングの軌道が空中に浮かぶ模様のように美しく、一瞬ながら派手さもあり目を奪われた。
そして、ベビーカステラ仮面は再びチラリとこちらを見て、軽く手を振ってから退場していった。
なんだかんだでWANAGEを楽しみ、会場の外に出るとそれなりに遅い時間になっていた。
「凄かったね。ベビーカステラ仮面の必殺技も見えたし、大興奮だよ」
「たしかに、見ごたえがあって面白かったですね」
フィーア先生と手を繋いで歩きながら、WANAGEの感想を楽しく話す。しばらくそのまま会話をしながら歩き、道行く人が少なくなってきたタイミングで、フィーア先生が口を開く。
「ねね、ミヤマくん。お酒飲まない?」
「お酒ですか? どこかバーにでも行きます?」
「う~ん、それでもいいんだけど、私の家で飲もうよ。貰いもののお酒とか結構あるんだけど、私そこまで飲む方じゃなくて余り気味なんだよね」
「なるほど、俺のマジックボックスにもいくつか酒が入ってますし、それもいいですね」
そういえば、香織さんの店で買った酒とかも入れたままなので、この機会に飲むのもいいかもしれない。
そんな風に考えていると、フィーア先生が再び俺の耳元に口を寄せ、囁くように告げた。
「……明日、診療所定休日なんだよ。だから、ゆっくり飲めるね」
そう言って微笑むフィーア先生はどこか妖艶な感じで、その言葉に込められた意味を考えて、妙にドキドキと心臓が五月蠅くなるのを感じた。
シリアス先輩「な、なにぃぃぃ!? か、閑話? 前、中、閑、後……だとぉ!? 新しいパターンを……そして、フィーアが明らかに決めに来てる感じがするんだけどぉぉ、これ甘くなるやつですよねぇぇぇぇ!」




