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フィーア先生とのひと時 中編



 しばし俺の腕に抱き着いて甘えていたフィーア先生だが、診療時間が近づくと名残惜しそうに手を離しつつ口を開いた。


「ねね、ミヤマくん、今日って時間あるかな?」

「え? ええ、大丈夫ですけど?」

「じゃあさ、診察が終わったとで、デートしたいな」

「ふむ……じゃあ、どこかに夕食でも食べに行きますか?」


 診察時間が終わったあとということなら、夕方……準備して出かけていたら丁度夕食時である。俺は一度家に帰って、夕食がいらないことを伝えてからまた診療所に来ればいいので、問題ない。


「いいね。今回は、私の奢りだからね」

「あはは、そうでしたね」


 俺とフィーア先生は過去に二度食事の代金をどちらが支払うかで戦っている。それはそれで楽しくもあるのだが、毎回それでは互いに疲れてしまうので交互に驕るという風にルールを決めた。

 前回は俺が出したので、今回はフィーア先生というわけだ。


「食事の後は、WANAGE見に行こうよ!」

「……あ~そういえば、なんか言ってましたね。ナイトゲームがあるとか」

「うん。今日はベビーカステラ仮面の試合があるし、見ごたえ抜群だよ!」

「そ、それは、楽しそうですね」


 クロだよなぁ、たぶんというか間違いなくクロだよな。はしゃぐフィーア先生を見て、なんとももどかしい気持ちになる。

 ベビーカステラ仮面などという頭悪いネーミングで、普通はすぐにクロだと分かりそうなものだが……実際はそうはならないのだ。

 その原因は認識阻害魔法にある。六王であるクロの認識阻害魔法はもちろん超一級品で、普通の相手ではベビーカステラ仮面について違和感を抱くことはできない。

 対して俺にはシロさんの祝福があるので、認識阻害魔法を無効化する。正体を隠して出場しているクロのことを思えば、勝手に明かすわけにもいかないのでなんともモヤモヤした気持ちになってしまう。









 一度家に戻って時間を潰したあと、茜色に染まる街並みを眺めながら再び診療所にやってきた。

 どうやら診察が長引いたり急患が入ったりということも無かったみたいで、フィーア先生が出迎えてくれた。


「いらっしゃい、ちょっと服だけ着替えちゃうから中に入って待ってて」

「分かりました」


 診察所の中に入って、フィーア先生の着替えを待ちつつ思考を巡らせる。食事はともかくとして、WANAGEってどこでやってるんだ?

 最低限音速で動けなければまともに戦えないとまで言われる超エキサイティングバトルスポーツなわけだし、専用の会場でなければ難しいだろう。

 そんなことを考えていると、奥の部屋からフィーア先生の声が聞こえてきた。


「ねね、ミヤマくん。薄い水色と白色と黒色だったら、どれがいいと思う?」

「えっと……薄い水色、ですかね?」

「了解!」


 白や黒も似合うとは思うのだが、薄い水色の服を着たフィーア先生は見たことが無いので、ちょっと興味があってそちらを選択した。


「ごめん、お待たせ」

「ああ、いえ、全然……うん?」

「どうしたの?」

「ああ、いえ、薄い水色がどこにも入ってない服だったので……」


 奥の部屋から出てきたフィーア先生は、白いシャツに黒のロングスカートというシンプルな格好だった。それは問題ないし、どことなく清楚で大人っぽい感じの服はよく似合っていると思うのだが……薄い水色の服ではなかった。

 そのことに首を傾げていると、フィーア先生が納得した様子でポンと手を叩く。


「ああ、ごめん、紛らわしかったね。服の色のことじゃないんだよ」

「あっ、そうなんですね。アクセサリーとかですか?」

「ううん、下着の色についてだね」

「…………………はい?」


 あ~いま、なんて言ったかよく聞こえなかったなぁ。下着とかなんとか言った気がするけど、たぶん聞き間違えだろう。

 うん、間違いないな、聞き間違えだ。さぁ、くだらない話をしていないで食事に……。


「前に必要かなって思って、可愛い下着を新しく買ってね。どの色がいいかなぁ~って……見たい?」

「なっ!? しょ、食事に行きましょう! あんまりもたもたしてると、店が混んじゃいますよ」

「可愛い反応だなぁ……ふふふ、うん。じゃあ、出発しようか」


 か、からかわれた感じだろうか? 年上の余裕というか、大人の色気というか……手玉に取られてしまっている感が強い。

 フィーア先生コミュ力も高いし、恋愛関連にも積極的だし……俺が想像しているよりずっと、恋愛強者と呼べる存在なのかもしれない。


 ほんの短いやり取りで変に意識させられてしまったことを感じつつ診療所の外に出ようとすると、フィーア先生はサッと俺の手を握り、同時に少し背伸びして耳元で囁くように告げた。


「……さっきの話の続きは、またあとで……ね?」


 不味いなこれ……勝てる気しないぞ? この前のアリスとかも、こんな気持ちだったのかもしれない。





シリアス先輩「ぐあぁぁぁ、な、なんだコイツ……ヤバいぞ……明らかに、ナイトデートからのフィニッシュを決めに来てるじゃねぇか!?」

???「ともかく、フィーアさんって、一度やると決めたらイノシシのように一直線かつ行動的な方なので、恋人の中でも飛びぬけて積極的なんですよね……次点で積極的なのはシャローヴァナル様ですが、あの人は恋愛に関して手探り気味なので、また少し違う感じですね」

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― 新着の感想 ―
[一言] エッチじゃん
[良い点] 中編が生えた!
[一言] この調子だとゴールイン出来るのはいつなのか
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