同郷との邂逅⑦
茜さんとの話は、いつしか同じ地球出身の人の話に移行していった。
「ほぅ、友好都市にも移住者がおるんやな。あんまり、友好都市に行くことがのうて、知らんかったわ」
「水原香織さんって方ですね。あと、香織さんの話ではハイドラ王国に大蔵重信さんって方も居るらしいです」
「ふむふむ、意外と会うことないもんやな。ちゅうか、ウチは初めておうた同郷が快人やしな」
いちおう他にもノインさんが居るのだが、ノインさんの正体に関してはあんまり気軽に話すべきものではないので、除外しておく。
そしてノインさんを除外すると、この世界にいる同郷は、俺、母さん、父さん、葵ちゃん、陽菜ちゃん、光永くん、香織さん、茜さん、大蔵さんで計九人である。
「機会があれば、同郷で集まれたりしたら楽しそうですけど……」
「せやな。そん時は、ウチがたこ焼き作るから、たこパしようや」
「……それ会長がやりたいだけでは?」
なんでも茜さんは、エデンさんにお願いしてたこ焼き用のプレートを貰ったとのことだ。俺もたこ焼きはかなり好きなので、楽しそうではある。
「そういや、快人」
「はい?」
「自分、だいぶ尾ひれついた噂が出回っとるで? ウチも、快人のことだけは噂で知っとったしな」
「え? そうなんですか……確かに、たびたび変な噂が流れてたりするんですよね」
これは事実そうである。実際六王祭とかでも、俺がとんでも無い化け物のように語られていたし、リグフォレシアで作られている小説なんかはその最たる例だろう。
有名人ばかりが知り合いなので、ある程度仕方ないとは思っているが、同郷の人にまで伝わっているのは気恥ずかしさが強い。
「まぁ、クロム様の恋人ってだけで凄い話やし、いろいろ根も葉もない噂が流れるのも、ある意味必然やろうな……例えば、死王様と恋人やとか」
「あっ、それは事実です」
「……え? そ、そうなん? そもそも死王様と会話なんてできるんか?」
「感応魔法って魔法が使えまして、そのおかげのような感じですね」
「そっか~驚いたな、まさか事実やとは思わへんかったわ」
心底驚いたような表情を浮かべつつも、茜さんはとりあえず納得してくれたみたいで、しきりに頷いていた。
「あとは、創造神様の祝福を受けたとか」
「それも事実ですね」
「なんでや!? なにがどうなって、そうなるねん! えっと、他にもあるで……戦王様に勝ったとか」
「二回ほど勝ちました」
「……なに、お前そんなごっつい化け物なん?」
「いや、戦闘で勝ったわけじゃないんですけどね」
飲み比べと、三本勝負である。あと、三本勝負は芸術の変な勝ちが無ければ負けてた気もするが……アレはもうガンロックドラゴンのご神体みたいなになったらしいので、凄いガンロックドラゴンの像を作って勝ったと無理やり納得しておくことにした。
「……六王様や最高神様と全員知り合いちゅうんは?」
「それも事実です」
「まずどうやって会うねん。エルフ族の英雄と呼ばれとるとか……」
「それに関しては誤解も多いんですが、英雄って呼ばれてるのはマジです」
「……嘘やろお前……」
俺の返答を聞くたび茜さんの顔色は悪くなっており、頭痛を堪えるようにこめかみに手を当てていた。
「え? 全部事実? あかん、頭いとうなってきたわ。ウチも正直移住者の中ではそこそこ成功しとる方やと思うてた。だってそやろ、大商会とは言わへんけど中堅ぐらいレベルの商会の会長やし、金も並の貴族より持ってるで……けど、全然レベルが違うというか……快人、お前、この世界何年やっけ?」
「勇者祭の年を入れて2年行くか行かないか、ぐらいですね」
「なんでや! お前アレやろ、人生何週か繰り返してるやろ!! あかん、ホンマに常識外過ぎる……ふこう考えれば考えるほど、ヤバい感じや。話聞いただけで胃もたれするちゅうか、胃が痛くなりそうな気分やわ」
そう言われてしまうと反論の余地はない。実際、たしかに短い期間でアレコレ起こり過ぎだと思う。アリス曰く俺はかなりのトラブル体質というか、巻き込まれ体質らしい。
まぁ、そもそもの発端から巻き込まれて召喚されたわけだし……。
「あ~やめやめ! こういうのは、あんまり考えすぎんに限るわ。話変えよ……ちゅうか、ウチの方が聞いてばっかりやったし、快人の方はウチに聞きたいこととかあるか?」
「ふむ……茜さんの商会って移動商会とは聞きましたけど、どんなものを取り扱っているんですか?」
「いろいろやけど、流行りもんとかが多いな。特に値段の変動がしやすいもんは、取り扱いが難しいけど、上手くいけばええ利益が出るでな……例えば最近やと……」
茜さんの商会は移動商会という名にふさわしく、本当にあちこちで商売をしているらしく、珍しい品やいろいろな地域の話を面白おかしく話してくれ、俺はしばし時間を忘れて茜さんの話に聞き入っていた。
シリアス先輩「一区切りついた感じかな? 茜との出会いはこれでひと段落……」
???「なんか、甘いもん食べたいっすね」
シリアス先輩「おい馬鹿、やめろ!!」




