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同郷との邂逅①



 三雲商会の本部。今回は話を持ち掛けたのがアニマ側ということもあって、アニマが茜の元に足を運ぶ形を取った。

 簡素ながら綺麗に整えられた応接室で、茜とアニマは向かい合った。最初は軽い雑談から入り、徐々に本題……取引についての話になった。


「……といった商品になります」

「……は、えっと……すみません、ちょっと整理する時間をください」

「構いませんよ」


 少し青ざめた表情で告げた茜は、アニマに許可を取ってからソファーから立ち上がり、少し離れた場所で秘書でもあるフラウと相談する。


「……フラウ、どうや? 分かるか、アレ」

「も、申し訳ありません。さすがに、竜王様の鱗の真贋までは……」

「せやな、ウチもまったく分からん。あかんぞ、コレ……取引の条件云々の前に、物が本物かどうか分からへん」

「最高品質のアクセサリーであることは間違いないとは思います。本当に元が鱗だとするなら、まるで宝石の如く美しく形などを整えているのは見事というほかないですし、デザインも素晴らしいです」


 フラウは鑑定眼にも優れており、様々な場面で茜に頼りにされているが……さすがに今回はお手上げといった感じで、珍しく明確に戸惑った表情を浮かべていた。

 それは茜も同様であり、心中は冷静とは言い難くなかなか考えが纏まらないでいた。


「偽物っていうリスクはある。けど本物やったら、とんでもない話やぞ……どんな売り方しても飛ぶように売れる。条件次第やけど、場合によってはとんでもない利益や」

「ですが、竜王様の鱗など、まず手に入るようなものではありませんよ? しかもそれを、アクセサリーに加工するなど、常識外れという他ありません」

「……悩むな、ちょお、探り入れてみるか」


 考えはまとまっているとは言えないが、それでもこれ以上アニマを待たせるのも悪いと判断したのか、茜はフラウの元を離れてソファーに座りなおす。


「失礼しました……それで、アニマさんが持ってきてくださった商品。素晴らしいものだというのは、一目見れば理解できるのですが……残念ながら、我々にはソレが本当に竜王様の鱗を用いた品かどうかの判断が尽きません。疑うようで恐縮ではあるのですが……なにか、価値を証明できるようなものは有りますか?」

「……品質調査や鑑定書の発行を行う機関があるのはご存知でしょうか?」

「え、ええ、もちろん知ってますが……さすがに、竜王様の鱗の鑑定書なんて発行できるとは思えないのですが……」


 アニマが口にした機関は、幻王配下によって作られたもので……依頼された品の品質を調査し、質を示す星の数を付けた鑑定書を発行してくれるもので、それなりに高価ではあるが確かな信頼と実績があり、商人にとってはかなり利用する機会の多い機関だ。

 当然茜もその機関については知っているし、取引の際の品質確認に何度も利用したこともあるが……いくらその機関でも、竜王の鱗などという希少過ぎる品を鑑定など不可能ではないかとそう思った。

 しかし、そんな茜の考えをあざ笑うかのように、アニマはマジックボックスから封筒を取り出し、そこから一枚の紙をテーブルに置く。


「ッ!?!?」

「こちらが、鑑定書です」

「……アンタ……いったい……なにもんや……」


 思わず敬語を忘れ、茜は戦慄した表情で呟いた。


「……も、もう一度、失礼します」


 そして、すぐに断りを入れて、席を離れフラウの元に向かう。フラウも茜と同様に戦慄したような表情を浮かべている。


「……あかんぞこれ、ヤバすぎやろ」

「……ほ、星が十の鑑定書……じ、実在したんですか……ぎ、偽造という可能性は?」

「絶対あらへん! アレは、星が十個付いた鑑定書は『幻王様本人』しか扱えへんものや。偽造なんかしたら、幻王配下全てが敵に回るようなシロモンやぞ。仮に偽造やったら……ここに持ってくる前に始末されてるわ」

「つまり、本物と……本当に何者ですか? 幻王様に伝手があるってことですよね?」

「分からん。もしかして、ご主人様ってのは幻王様のことなんか? それとも他の六王様? いや、でも、それやったらうちに取引を持ってくる理由があらへん。自分ところの陣営で売ろうとするやろ……なんやこれ、怖いわ」


 状況があまりにも想像とはかけ離れた事態になっており、茜は頭を悩ませたが……取引自体は、素晴らしい内容であり、条件なども悪くはない。

 いや、むしろ若干疑ってしまうほど三雲商会にとっていい条件であり、受けない理由がないほどだ。


「……お、お話は分かりました。しかし、うちにとっても重要な案件となりうると思いますので、返答には数日猶予をいただきたいのですが……」

「ええ、構いませんよ。話がまとまりましたら、こちらにご連絡ください」


 考える時間が欲しいという茜に対し、アニマは快く応じて手紙の宛先となる住所を書いた紙を差し出す。そして、それを茜が受け取ったのを確認してから、再び口を開いた。


「……さて、取引に関する話は以上としまして、少々私的な話をさせていただいてもよろしいですか?」

「え? ええ、構いませんよ。なんでしょうか?」

「……私の主が、貴女にぜひ会いたいと仰られています。可能であれば、ご主人様の家に招待させていただきたいのですが……いかがでしょう?」

「「ッ!?」」


 その言葉に、茜とフラウは思わず息をのんだ。





シリアス先輩「茜とフラウにしてみれば、マジで得体のしれない黒幕から招待を受けたような感じだよなコレ……」

???「ええ、まぁ、本人は『あっ、この商会ってアリスが言ってた元勇者役の異世界人がやってる商会じゃないか、もし可能なら会ってみたいなぁ』程度の緩い感じでアニマさんに伝言を頼んだんですけどね」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 三雲メンバーだけ劇画のイメージ。 え、えらいことや…
[良い点] やったねリリアさん、お仲間ができたよ! [一言] カイト君と茜さんが出逢う時のリアクションが楽しみです。 大丈夫、恋人達が六王だとか創造神だとか最高神だとかぶっ飛んでるだけで、カイト君はま…
[良い点] やはりこの商会はきましたね! どんな出会いになるのか楽しみです ・・・初手土下座は無しでおねがいします('ω') [一言] 本人「あ、そっか。会ってみたいなぁ」 恋人「わかりました!伝え…
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