親友兼恋人 前編
公爵級の認定も無事終わり……いや、別にトラブルとかがあるわけでもないので、無事に終わるのは必然なのだが……アリスも最初から俺を連れて行くのは精神安定のためと言っていたし、実質的に俺の役割はおんぶの場面で終了していたといってもいいだろう。
まぁ、それはそれとして……。
「まだ結構時間あるし、どこか行くか? この辺の街とか知らないけど……」
「いいっすね。そこまでたっぷり時間があるってわけでもないですよ」
「うん。だから、どっかで軽く遊んで時間潰して、いい頃合いにでも晩飯食べて帰ろう」
「ご馳走様です――あいたっ!?」
「なんで、完全に奢られる前提なんだよ……いや、最終的にそうなるとしても、その感じはなんか腹立つから、次はピコハン出そう」
「恐ろしい脅迫は止めて欲しいんすけど!? アレ、マジで痛いんすからね」
奢ってもらう気満々のアリスに軽く拳骨を落としつつ、軽くくだらないやり取りをしてから最寄りの街に移動する。
そこそこ大きめの街であり、いろんな店がありそうな感じの場所だった。魔界の南部はマグナウェルさんが治めている関係上、魔物が多いみたいだけど、こういう大き目の街もあるんだな。
「でも、カイトさん。この街、カジノねぇっすよ?」
「いや、なんでカジノに行く前提なんだよ。もっと普通の……なんか軽く遊べるようなとこってない?」
「う~ん……この先に大き目の芝生の広場があるので、そこでなんかしますか。バトミントンとかなら一式ありますよ」
「いいな、そこに行こう」
バトミントンはいつ以来だっけ、結構懐かしいな。それに、広場であればいろいろ体を動かして遊べそうだ。あんまり外で遊ぶような品はマジックボックスに入れてなかった気がするが……まぁ、探せばなにかあるだろう。
ソレに最初はバトミントンをすればいいし、案外それで時間が経つかもしれない。
「……せっかくですし軽く勝負します?」
「あのなぁ、俺がお前に身体能力で敵うわけないだろ」
「ええ、もちろんそれは分かってますので、ここは『リミットカイトさん制』を採用します!」
「……う、うん?」
「前に海水浴でビーチバレーした時と同じですよ。私はカイトさんの身体能力を超える動きはしません。そして、動体視力とかの差があるので、カイトさんの方は身体強化ありってルールです」
「あ~なるほど、たしかにあのルールなら多少は勝負になるか……」
そもそもそのルールの一番最初は、メギドさんと六王祭で勝負した時だったかな? ともかく、たしかにアリスの言う通りそのルールなら、割といい感じになるのは過去のビーチバレーなどが証明している。
「まぁ、ビーチバレーの時と違って、カイトさんの身体能力を越えたかどうかを判定する人がいないのですけど、別になにか賭けて勝負するわけでもないですし、その辺は緩めにいきましょう」
「だな……というか、仮に多少俺の身体能力をオーバーしたとしても、俺が見ても分からないし、その辺はだいたいでいいだろ」
広場に移動すると、そこは本当にかなり広く遊ぶには丁度良さそうな感じだった。というわけで、さっそくバトミントンをすることになり、それぞれラケットをもって距離を取る。
「最初は軽くラリーしましょう。カイトさんは久しぶりって話ですし」
「そうだな、そうしてもらえるとありがたい」
「それじゃ、行きますよ~ほいっ」
「おっ、よっと……」
「結構綺麗に打ててるじゃないっすか……どんどん行きますよ~」
「了解」
アリスが遅めの速度で山なりの球を打ってくれて、俺がそれを打ち返すような形でラリーが続いていく、以前魔界でテニスのゲームに挑戦した時はさんざんだったが、バトミントンは結構いい感じに当てられるし、コントロールも悪くないと思う。
まぁ、いまはまだゆるいラリーなので、勝負になると分からないが……。
「カイトさん、スマッシュ」
「え? こ、こうか!」
「いいっすね。結構速度出てましたよ。私も、カイトさんの身体能力だとギリギリ届くかどうかでしたし、いい勝負になりそうですね」
「いや、なんでお前は、そんなラケットの先端に当てて綺麗に返せるんだ?」
「手首のスナップが重要なんすよ」
なんだろう、やっぱアリスとこうやって遊ぶのは楽しい。
「ほいっ、隙あり」
「あっ、ちょっ、高っ!?」
「ふふふ、スピードの速いショットだけじゃないってことですよ。本番では注意ですね」
「というか、ふと思ったんだけど……コートとかないけど、勝負ってどうするんだ?」
「単純に打ち返せなかったほうの失点でいいんじゃないっすか? ガチバトルじゃないですしね」
「それもそうか、よっし、もう何回か打ったら勝負しよう!」
アリス自身が付き合いがいいというか……なんというか、親友兼恋人ってのがしっくりくる相手というか……結構こうやって同じ土俵で勝負とか持ち掛けてきたりするから、楽しいんだよなぁ。
そんなことを考えつつ、しばしアリスと時間を忘れてバトミントンを楽しんだ。
シリアス先輩「???のやつ!? 呪詛はいた上に、自分で回収だと……いや、だが、爽やかな感じだ。甘くはな……な……っ……前……編? う、うわあぁぁぁぁ……」




