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公爵級とメイド級④

【お待たせしました。書籍版十三巻の電子書籍版が遅れながら発売開始されています】



 フュンフさんと話したあと、ようやく背中から降りたアリスの転移魔法で次の場所に向かった。辿り着いたのは、始めてくる街だった。

 かなり大きめの街で、ユグフレシスほどとまではいかないが、クロの居城の近辺にある街ぐらいの大きさはあるように思えた。


「……初めて見る街だけど、ここは?」

「ここは、クロさんが持つ土地にある街のひとつですね。クロさんの土地は広大ですから、いくつもの街がありますよ。それで、その複数の街にはそれぞれ代表がいますが、それを取りまとめているのがツヴァイさんです」

「ああ、それでここにツヴァイさんが居るってわけか……」

「あちこちに拠点は有りますが、ここにメインとしている仕事場がありますね」


 簡単に説明を受けながら、街の中心近くにあるひときわ大きな建物に辿り着く。入り口の警備をしていると思わしき人物にアリスが一言二言話すと、すぐに室内に案内された。

 そうして辿り着いた場所は、ツヴァイさんの執務室と思わしき場所だった。室内に入ると、大きなテーブルの上に置かれた大量の書類を黙々と整理しているツヴァイさんの姿が見えた。

 室内には大きめなソファーや綺麗なテーブルもあり、執務室としてだけではなく、応接室としても使われていることが理解できた。

 ツヴァイさんは俺たちが入室してきたのを見ると、手を止めてスッと立ち上がり綺麗なお辞儀をする。


「ミヤマ様、シャルティア様、ようこそいらっしゃいました。しっかりとしたおもてなしの準備もできておらず心苦しいのですが……」

「こんにちは、ツヴァイさん。突然すみません」

「おもてなしとか、別に気にしなくても大丈夫っすよ……とりあえずなんかお菓子お願いします」

「直ちに」

「おいこら、アリス……」


 気にするなと言いつつちゃっかり菓子を要求するアリスに呆れながら、ツヴァイさんに促されて大きなソファーにアリスと並んで座る。

 ツヴァイさんはテーブルの上に高級そうなクッキーを置いたあとで、部屋の中に備え付けられていた道具を使って、手早くお茶を淹れてくれた……紅茶、三杯目である。いい加減お腹がタプタプしてきそうな気がする。


「それで、本日はどのようなご用件でしょうか?」

「ああ、いや、大したことじゃないっすよ。爵位級の制度を一部見直すことにしまして、ツヴァイさんを公爵級高位魔族に認定しにきました」

「……一部の見直し、なるほど……公爵級の基準値の引き下げ、アインをさらにひとつ上の階級にといったところでしょうか? そして各陣営から一定数、公爵級にという形ですかね?」

「さすが、いい読みをしていますね。その通りです」

「……アインがよく納得してくれましたね?」

「……新しい階級はメイド級です」

「心中お察しいたします」


 アリスの告げた言葉と表情ですべて理解したのか、ツヴァイさんはなんとも言えない表情を浮かべていた。


「ところでツヴァイさん?」

「なんでしょうか?」

「今日は急な来訪で申し訳ありませんでした。バタバタしたでしょ? いや~、もっと前に通達でも出しとくべきでしたね~」

「……えっと、シャルティア様? その、私の過去の経験上、シャルティア様がそのような表情をされている時は……なんでしょう、えっと……悪い予感しかしないのですが」


 なにやら意地の悪い笑みを浮かべたアリスに、ツヴァイさんはなんとなく焦ったような表情を浮かべる。ツヴァイさんは相変わらず魔力を外に漏らしていないので、感応魔法で感情は読み取れないが……嫌な予感を覚えているというのは間違いなさそうである。


「いえ、なんか突然きて、室内に入った時も仕事中って感じだったわりには……ずいぶん身だしなみが整っているなぁ~と思っただけですよ」

「……シャルティア様……何をおっしゃりたいかはよく分かりました。どうか、どうかっ、ご慈悲を……」

「おや? この匂い、新作の香水まで付けてますね。カイトさんが来たって聞いて、私たちがここに来るまでの間に相当急いで準備したんでしょうねぇ~。それなのに、入室した時には私たちが気にしないようにと、いままで普通に仕事していました的な空気を出して、なんともいじらしいじゃないですか」

「……べ、別に、そのような、ことは……ミヤマ様がいらっしゃるからと言って、慌てて身だしなみを整えたとか、そそ、そんなことはなくてですね。新作の香水をつけたのもたまたまで……」


 ツヴァイさんはリリアさんと同じく嘘が付けないタイプのようで、明らかに目が泳ぎまくってるし、表情も普段のクールな感じとは一変して焦っている感じが全開なので、あまりにも分かりやすかった。


「入室した時に手に持ってた書類……『上下逆でしたよ』」

「……………………物凄く気合入れて準備しました。クッキーとかも屋敷にあるもので一番いいものを用意して待ってました」

「うんうん、素直でよろしい」


 真っ赤になった顔を両手で隠し、俯きながらアリスの指摘を全面的に認めるツヴァイさん……やっぱり、最初の時の印象とは違い、ツヴァイさんってかなり可愛らしい方かもしれない。

 あと、以前にアリスが言っていた、いじられキャラというのも、なんとなく理解できた気がする。





シリアス先輩「基本的に真面目だから、アリスにとってはからかいがいのある相手ってことか……」


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― 新着の感想 ―
[良い点] カイトといちゃついてる時はいじられる側なのにw [一言] >「入室した時に手に持ってた書類……『上下逆でしたよ』」 何故だがシィィィィザァァァァって叫びたくなる
[良い点] ツヴァイさんにも同情されそうな「メイド級」誕生理由 そして、いじられるツヴァイさんがかわいいです(*´▽`*) [一言] ツヴァイさん 最初はなんか仕事は優秀だけど感情伝えるのが下手な美…
[良い点] シリアス先輩の後頭部に剣鉄也さんもびっくりなグレートて巨大なブーメランが刺さってるのが見えた
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