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公爵級とメイド級③



 アリスを背負って移動した先には、クロの居城の正面門の前……この場所に来るということは、すなわち公爵級に上がるのは……。


「というわけで、フュンフさんを公爵級高位魔族に認定します」

「……えっと、いろいろと言いたいことはあるんですが、最初にひとつ……なんでシャルティア様、カイトにおんぶされてるんですか?」

「なんか、夢とか希望がチャージされるらしいですよ」

「……そっか、カイトの背中には夢や希望が詰まってるんだね」


 公爵級になった驚きよりも、おんぶされた状態でそれを告げるアリスに戸惑った様子のフュンフさんを見て、俺も思わず苦笑する。

 着いたら降りるかと思ったら、めっちゃ普通にそのまま認定しやがった。とりあえず、しばらく降りる気はなさそうである。


「……けど、シャルティア様。私でいいんですか?」

「ええ、フィーアさんと悩みましたけど、フィーアさんはいま実質的にはクロさん陣営でも、ほぼ独立しているような状態ですしね。ゼクスさんよりはフュンフさんの方が総合力で上ですから、クロさんのところからはツヴァイさんとフュンフさんを公爵級に上げることにしました」


 たしかにフィーア先生はちょっと特殊なポジションだ。実際はクロの家族の一員であり、クロの陣営に所属していると言ってもいいのだろうが……基本的にはシンフォニア王国で医者をしていて、時々クロの居城……すなわち実家に帰っているという感じの立場なので、独立していると言えば独立している気もする。


「……『ロゼ』は? 場合によっては、私よりずっと強いですけど」

「あの子は特殊過ぎるでしょう。状況によって能力にムラがあり過ぎますからね」

「……ロゼ?」


 フュンフさんが口にした名前は、初めて聞く名前だった。俺もクロの家族とはそれなりに付き合いがあって、いろいろな方と知り合う機会があったが、そのロゼという人は知らない。

 公爵級云々の話題で出てくるぐらいだから、相当強いのだろうが……。


「ああ、カイトは会ったことが無かったよね。ロゼは基本的に禁忌の地の近くを管理してるから、普段は居城にいないしね」

「ほら、前にカイトさんにも話したじゃないですか、私たちがお遊びで作ったダンジョンがあるって……そこと、ついでに禁忌の地を管理しているのがロゼさんです」

「ふむ……公爵級の話に出てくるぐらいだから、相当強い人なの?」


 アリスが口にしたダンジョンというのは、以前白神祭で聞いた六王剣が置いてあるダンジョンのことだろう。場所までは聞いていなかったが、口振りからして禁忌の地の近くにあるみたいだ。

 そしてそこを管理しているのがロゼさん……いわゆるダンジョンマスターといった感じかな?


「ロゼさんは特殊で……『戦う相手の能力や魔力をコピーする』っていう力を持っていまして、コピーできる能力には限度があって、完全コピーできるのはせいぜい伯爵級中位ぐらいまでですが、一度コピーすれば最大3つまでコピーした姿を記録しておけるので、状況によって姿と戦法を変える感じですね」

「……なるほど、だから戦闘力にムラが……うん? でも、その説明だと、強さは最大でも伯爵級中位レベルなんじゃない?」


 相手の能力をコピーするという性質上、戦闘力にムラがあるというのは分かるのだが、話を聞く限りでは公爵級の候補に挙がるようなレベルではない気がする。

 もちろん、伯爵級中位レベルの姿を最大三つまで切り替えながら戦えるとあれば、相当強いのだろうが……それでも、よくて伯爵級上位といったところじゃないかと思う。


「そうなんですけど、ロゼさんには切り札がありまして……さっきダンジョンを管理しているって話をしましたよね。ロゼさんはかなり特殊で複雑な条件を整えることで、ダンジョンに置いてある昔の私たち六王の劣化コピーである特殊ゴーレムを呼び出すことができるんですよ」

「六王様たちのゴーレムは、六王幹部でも歯が立たないレベルに強いから、そこまで含めるならロゼは伯爵級で一番強いって言ってもいいかもしれないんだけど……」

「前にも言った通り、劣化とはいえ私たちの能力を再現したゴーレムを運用するには、滅茶苦茶複雑かつ多数の結界でガチガチに固めないと無理なんすよ。なのでよっぽど状況が噛み合わないと、その切り札を使うことはできないわけで……それも含めて、戦闘力のムラが大きすぎるんですよ」


 要するに、相手が六王幹部級であっても圧倒できるような切り札を持ってはいるものの、あまり現実時とは言えないレベルで難しい条件を満たさないと使えないので、実際にはほぼ使用できないって感じかな?


「基本的にほぼ使用できないので、総合的に見て伯爵級中位レベルですので、今回は対象から外しました。というわけで、フュンフさんが公爵級です」

「あはは、ありがとうございます。私はあんまり爵位級に拘りはなかったですけど、結構凄いことですよね……フィーに自慢しちゃおっかなぁ~」


 アリスの言葉にどこか楽し気に笑いつつ、フュンフさんは公爵級高位魔族の認定を受け入れた。新たな公爵級の誕生、ある意味ではいま魔界の歴史が動いた瞬間といえる。

 ただまぁ、認定された本人も認定したアリスも、あまり大事という雰囲気ではないのだが……





【ロゼ】(数字の0⇒ゼロ⇒ひっくり返してロゼ)

六王ダンジョンと禁忌の地を管理する存在で、禁忌の地で六王とかが喧嘩したり訓練をした際に、壊れた大地の修復とかも行っている。

相手の能力や魔力をコピーするという能力があり、姿はまさに変幻自在。基本的に六王ダンジョンに居るため、世間的にはあまり知られていない。

六王ゴーレムを召喚できるという切り札を持つが……無茶苦茶複雑な条件を満たさなければ使用できないので、実戦ではほぼ使えないレベル。


クロムエイナが拾って育て、クロムエイナの魔力を付けて変質して特殊な進化を経た『スライム』であり、通常時の全長は20cmほどという、クロの家族の中でも最小サイズ。

基本的に喋ることはできず、表情で感情を表現する。人懐っこく気に入った相手の頭の上でポンポンと跳ねたりする。

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― 新着の感想 ―
[一言] 六王祭4日目でフィーアの次がラズリアってなってたのにここではラズよりゼクスが上で、それよりフュンフが上ってなってるのは設定が変わったからなのかな
[良い点] 毎日楽しみに読ませて頂いております。ありがとうございます。ほとんど悪い人間が出てこず、争いもない世界でこれだけ物語が書けるというのは本当にスゴいです。ディスる感想を書いてくるのもいると思い…
[気になる点] ふと以前は誤字で伯爵級の上として「侯爵」を「公爵」としていると思っていたけれどいがったようだ。 この作品独自の設定を忘れていたようでお恥ずかしい。 それにしてもなぜ侯爵を飛ばしたんだ…
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