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王家の影



 その日、俺はシンフォニア王国首都にある王城に来ていた。目的は、オーキッドに会うことだ。

 オーキッドとはそれなりに親しくしているつもりで、俺としても貴重な年の近い同性ということもあって手紙のやり取りなんかもそれなりにしている。

 家を建てる際なんかも、国に関するアレコレは最初にオーキッドに聞いたし、こうしてたまに王城に来てお茶をしたり他愛のない雑談をしたりする機会もそれなりにある。


 今回も互いの都合が合ったので、ネピュラの作った紅茶を少し自慢したいという気持ちもありこうして遊びに来ていた。

 そのまますぐにオーキッドの居る場所へ向かってもいいのだが、早めに来たのでライズさんにも挨拶をしておこうと思って都合が大丈夫か伺ってみると、すぐに執務室の方に案内された。


 ノックしてから執務室に入ると、机で仕事をしているライズさんともうひとり……赤い髪の美丈夫といえる男性が見えた。

 短く切りそろえられた髪に、かなりガッチリとした体形……40代ぐらいの渋さとカッコよさを感じる方で、なんとなく将軍とかそんな雰囲気があった。


「こんにちは、ライズさん」

「やあ、ミヤマくん。よく来てくれたね……なんというか、いつも仕事中で申し訳ない」

「ああ、いえ、こっちこそ急にすみません」


 苦笑しつつも快く出迎えてくれたライズさんと言葉を交わすと、赤髪の男性が俺の方を見てなにやら穏やかな笑みを浮かべて口を開いた。


「おぉ、ミヤマ殿。お久しぶりですね」

「え? えっと……」


 なんか以前にも会ったような感じで話しかけられたが、どうしよう、全く心当たりがない。なんだろう、アマリエさんの誕生日パーティとか、その辺りで会ったのだろうか?

 いや、でも、アリスが上手く調整してくれたおかげであまり貴族と話はしていなかった気がするんだが……。


「おいおい、『アルフレッド』……『その姿』では、ミヤマくんも分からないだろう」

「おっと、そうでしたな。陛下、ミヤマ殿には明かしても?」

「ああ、問題ない」


 そう思っていると、ライズさんが苦笑しながらなにやら意味深なことを言い、アルフレッドと呼ばれた男性も苦笑を浮かべた。

 そして、ライズさんに一言確認を取ったあとで、アルフレッドさんは指輪らしきものを取り出して指にはめた。


「……どうでしょう、これでしたら?」

「え? えぇぇ!? た、たしか、神殿の前で会った……ドゥーカス伯爵!?」

「覚えていただけていたようで、光栄です」


 アルフレッドさんは指輪をはめた瞬間、ぶよっとした贅肉だらけで、ガマガエルのように見える一度見たら忘れないであろう姿に変わった。

 その姿は、この世界に来てすぐ神殿で祝福を受けた際に遭遇したドゥーカス伯爵だった。え? これ、どうなってるの?


 俺が混乱していると、それを察したらしいライズさんが軽く説明を入れてくる。


「彼は、アルフレッドは……言ってみれば、王家の影といえる存在でね。代々王家に仕えて、汚れ仕事などを引き受けてくれる……言ってみれば特殊部隊のような存在なんだ」

「本名をアルフレッド・ドゥネルと申しまして、現在は子爵の地位もいただいていますが……陛下の側近となるために与えられた仮のもので、生来の貴族というわけではありません。ドゥーカス伯爵は、ワシが仕事の上で利用する顔のひとつといったところですよ」


 な、なんか、少し複雑そうな話だし……あとたぶんこれ、割と国家の機密的な話だよね? 俺のことを信頼して話してくれたんだろうし、他には漏らさないように注意しよう。


「国という巨大な組織を動かしていく中では、どうしても綺麗な方法ばかりというわけにはいきません。そういった仕事を受け持つのがワシですね。ドゥーカス伯爵というのも、一種の敵対心のコントロールのようなものでして、ああいった場合に応じて嫌悪を集中させたり、あえて王家に不満を口にしたり、王家の傷となりうる事態にはそれを被る……まぁ、言ってみれば、いつでも切れるトカゲの尻尾という感じですね」

「いわゆるヘイトコントロールや情報操作、謀略などがアルフレッドの仕事だ。私が幼い頃から仕えてくれており、表向きの立場は私の補佐……私にとっては、一番信頼できる部下といったところだ」

「ははは、まぁ、ミヤマ殿のよく知る幻王様から見れば児戯に等しいレベルですが、王家の影としていろいろやらせていただいています」

「……な、なるほど」


 かなり特殊な立場の人みたいだ。イメージとしては特殊部隊の隊長とか、隠密みたいな感じっぽい。クリスさんも謀略は得意とか言ってたし、やっぱり王家ともなるとその手の事柄にも手札が無いと厳しいのだろう。


「ちなみに、好事家という役回りのドゥーカス伯爵を演じているわりには、アルフレッド自身は酷く初心で愛妻家だよ。なにせ、妻である女性に一目惚れしてから、最初に話しかけるまで1年もかかったほどだ」

「陛下!」

「おっと……」


 アルフレットさんはライズさんにとって、本当に信頼している相手みたいで、なんとなくアルフレッドさんと話している時のライズさんは、ルナさんやジークさんと話している時のリリアさんに似ている気がした。





シリアス先輩「これ、前々からたびたび話には出てたやつだ。ネームドキャラは全員根は善人という法則から予想されてたり、Twitterとかで零してたりしたけど、ついに出て来たかって感じだ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] おぉ…「最初の気持ち悪いキャラクター」に対して「ネームドキャラはいいやつの法則(+それにともなう読者の声)」と「ドゥーカス伯爵にはライズが指示をした」という設定を追加していたので、後から伏…
[一言] 最初の嫌がらせキャラと思ってたら陛下が持ってったから存在を忘れてた
[一言] とうとうドゥーカス伯爵回収!!! なんとなく誘導の人かと思ってたけど、変装だったとは…
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